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ねこ健康

【獣医師監修】幼児のいるご家庭は注意!猫回虫症を正しく予防しよう

相澤 啓介 獣医師

猫回虫は、猫に認められる寄生虫の中で最も一般的なもののひとつです。特に、子猫を飼ったことがある方は聞いたことがあるかもしれません。

では、猫回虫が具体的にどんな病害を引き起こすのか、ご存知ですか?他の猫にはどのように感染するのか、ヒトには感染するのかなど、猫回虫という名前は知っていてもその詳細は意外と知らない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、今さら聞けない猫回虫症について、獣医師が詳しく解説していきます。

猫回虫とは

猫回虫はネコ科動物に寄生する、4~18cm程の白く細長い寄生虫です。

成虫は小腸に寄生することから、糞便中に寄生虫の姿を見かけることもあるかもしれません。
虫卵を摂取することでヒトにも感染し、トキソカラ症を引き起こすため、猫回虫は人獣共に重要な寄生虫です

猫回虫症の症状

少数寄生例では症状が見られないことが多くあります。
しかし、子猫の場合や多数寄生例では、以下の症状が強く見られます。

  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 発育不良
  • 被毛粗剛
  • 下痢
  • 呼吸困難

ヒトのトキソカラ症

トキソカラ症(内臓幼虫移行症)は、犬回虫や猫回虫の幼虫がヒトに寄生することによって引き起こされる感染症です。
これらの寄生虫卵が含まれる動物の糞便によって汚染された土(砂場など)が、主に幼児の口に入ることで感染します。

症状としては、発熱、咳、肝臓の腫大、視覚障害、てんかん発作などが見られます。
アメリカの研究データでは、ヒトの場合は眼症状が見られる患者の割合が高く、約20%が失明していたそうです。

回虫の幼虫に対する直接的な治療法はないため、感染しないよう予防することが重要です。

猫回虫の感染経路と生活環

症状の中で「咳」があることに疑問を持った方もいるかもしれません。
小腸に寄生するのに呼吸器症状を呈することは確かに不思議ですが、これは猫回虫の生活環に関係しています。

気管型移行

猫回虫が猫の体の中でどのような動きをするのか、順番に見ていきましょう。

①口から虫卵が入り、虫卵は小腸で孵化します。
②孵化した幼虫は小腸壁に侵入し、血流に乗るか、あるいは直接的に肝臓へと到達します。
③さらに幼虫は血流に乗り、心臓、肺へと達します。
肺に到達した幼虫は、今度は気管を登って咽頭、食道に入り込みます
⑤胃、小腸と戻ってきた幼虫は、ここでようやく成虫となります。

このように、猫回虫は成虫となるために一度肺を経由しており、そこで呼吸器症状が現れます。

経乳感染

また、猫回虫の幼虫は、母猫の母乳からも子猫に感染します。感染した幼虫は子猫の体内で気管型移行をし、成虫へと成長します。

母猫の小腸内に猫回虫の成虫がいなかったとしても、生まれた子猫が猫回虫に感染しているということもあります。

猫回虫症の診断

雌の猫回虫は猫の小腸内で卵をたくさん産むため、一般糞便検査によって顕微鏡で虫卵を検出することが可能です。
動物病院に便を持っていくだけで検査は可能なので、気になるのであれば一度検査を行うことをオススメします。

しかし、感染後間もなく、幼虫や未成熟な虫体しか存在しない場合には診断は困難です。
生後間もない子猫では、母猫からの感染があるものと仮定し、先行して駆虫を行う試験的駆虫を行うこともあります。

猫回虫症の治療

猫では、駆虫薬の投与によって治療を行います。

駆虫薬の投与後、小腸内の成虫は駆虫されますが、体内の他の部位に分布している幼虫までは駆虫できません。よって駆虫薬は、3~4週間の間を空けて複数回投与することが望ましいとされています。

猫回虫症は、完全に治療が終わるまでに時間がかかる疾患です。

対症療法

猫回虫症は、基本的に猫では無症状ですが、重度の感染では種々の症状を呈します。
その際には、輸液や抗菌薬などの対症療法を行います。

猫回虫症の予防

猫回虫症は、駆虫薬の定期的な投与によって予防が可能です。

猫の場合は経口薬よりも、首の後ろに滴下するスポットタイプのものが使いやすいでしょう。
ノミやマダニといった外部寄生虫の予防に加えて、猫回虫にも効果があるものがあるので、一度獣医さんに確認してみるといいかもしれません。

あくまでも定期駆虫

猫回虫の予防に使用される薬は、猫回虫を体内に侵入させないようにする薬ではありません。

これらの薬剤は、体内に侵入してしまった猫回虫を定期的に体外に排出し、感染の成立を抑える目的で使用されます。
毎月定期的に使用しないと効果が現れないので注意が必要です。

多頭飼育の場合

猫回虫の寄生が確認された場合は、他の猫もしっかり検査し、駆虫が完了するまでは部屋を隔離するとよいでしょう。
また新しい猫を迎え入れる際にも、糞便検査で猫回虫の陰性が確認できるまでは先住猫との接触は控えましょう。

まとめ

猫回虫は猫だけでなく、一緒に暮らす飼い主にも感染することのある寄生虫です。

しかも厄介なことに、猫よりもヒトの方が重度の症状が出やすいという特徴があります。
安心して愛猫と生活するためにも、一度糞便検査によって猫回虫の感染がないことを確認し、定期駆虫を徹底しましょう。

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