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コラム

【2019年改正動物愛護法】犬猫の繁殖防止措置は、努力義務から義務に

Risa シェリー編集部

2019年6月に行われた参院本会議にて、議員立法の改正動物愛護法が全会一致で可決、成立しました。

改正の内容として、犬猫の販売を認める時期を、これまでの生後7週超えから生後8週超えに改定することや、犬猫へのマイクロチップの装着・登録の義務化、ペットの虐待に対する厳罰化などが主な柱として盛り込まれています。

本記事では、改正法によって義務化された犬猫の繁殖防止措置について見ていきます。

何が改正された?


これまでの法律では、犬猫の繁殖防止措置について次のように定められていました。

動物の愛護及び管理に関する法律(1973年)

第三十七条
犬又はねこの所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。
(出典:環境省「犬猫の不妊去勢の義務化について」 )

1973年の法律では、繁殖防止措置をするよう「努めなければならない」と、努力義務として提示されています。

家庭動物等の飼養及び保管に関する基準(2002年)

4 繁殖制限
所有者は、その飼養及び保管する家庭動物等が繁殖し、飼養数が増加しても、適切な飼養環境及び終生飼養の確保又は適切な譲渡が自らの責任において可能である場合を除き、原則としてその家庭動物等について去勢手術、不妊手術、雌雄の分別飼育等その繁殖を制限するための措置を講じること。
(出典:同上)

2002年には「原則として〜講じること」と示され、1973年の時点より強化された感じがしますが、3年後の2005年に内閣府が行った世論調査によると、実際に手術をしたと答えた飼い主は、猫で約65%、犬で約25%にとどまっています。

動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律案要綱(2019年)

三 犬及び猫の繁殖制限の義務化
犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖して適正飼養が困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖防止のため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならないこと。 
(出典:衆議院「衆法 第198回国会14動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律案」)

2002年に「原則として〜講じること」とあった表記は、このたびの2019年の法律案要綱では「講じなければならない」という言い回しに変更されています。このことにより、今回の改正法では、正式に繁殖防止措置が「義務」であることが明記されました。

なぜ繁殖防止が重要なの?

犬猫の殺処分を減らすため

これまで「努力義務」だった繁殖防止措置が「義務」に厳格化された背景には、犬猫の殺処分問題があります。

中でも多頭飼育崩壊は大きな問題です。飼い主が多くの犬や猫を飼育しており、その管理が行き届かなかった場合、犬同士、猫同士が繁殖活動を行ってしまいます。結果、子犬や子猫が増えてしまい、飼い主がどうにもできなくなってしまうという事象です。もし、この時に保護された犬や猫の里親が見つからなければ、最悪の場合は殺処分されてしまいます。

避妊・去勢手術の重要性の広まりや民間の動物愛護団体の保護活動の広まりによって、殺処分される犬猫の数はここ数年で大幅な減少を見せましたが、それでもまだゼロには達していません。

安易な気持ちで繁殖をさせるのを防ぐことで、飼い主のいない子犬・子猫の数をできるだけ抑えよう、というのが今回の法改正の狙いです。

病気の予防

避妊・去勢手術をすることで、予防できる病気や、罹患率が下がる病気があります。

例えば、オスの場合は睾丸腫瘍、肛門周囲腺癌などの予防、メスの場合は子宮蓄膿症、卵巣嚢腫、乳がん発生率の低下などが期待できます。繁殖の予定がないのであれば、防げる病気は未然に防いであげることは、飼い主にとっても犬猫にとっても重要なことです。

問題行動の防止

手術をしなければ、メスの場合は生理に、オスの場合はマーキングをしたり攻撃的になったりすることがあります。もちろんこれは自然に起こる現象ではありますが、繁殖の予定がないのに発情だけしてしまうのは、動物にとっても大きなストレスになりうるでしょう。

犬の発情期に関して詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

犬の発情について知ろう。あらわれる特徴や注意することとは

野良犬・野良猫の手術も

各地の動物愛護団体、NPO法人等は、病気になっても簡単に病院に行くことができない野良猫や野良犬の避妊・去勢手術にも積極的に乗り出しています。もちろん、野良猫や野良犬の爆発的な繁殖を防ぐ狙いもあります。

手術の費用と時期は?

手術にかかる費用は、去勢手術で約15000円〜25000円、不妊手術で約20000円〜30000円が目安です。
時期は生後6ヶ月前後がだいたいの目安とされていますが、犬種によっても異なるので早めに獣医さんに相談しましょう。

また、手術費用に関してですが、市区町村によっては助成金が出ている場合もあるので、事前にチェックしてみてください。東京23区にお住まいの方は、助成金についてまとめていますので、ぜひこちらの記事もご参照ください。

あなたの町の助成金はいくら?【東京23区内の猫の去勢・不妊手術の助成金(2019年8月現在)】

改正法は2020年6月までに施行予定


みなさんの中には倫理上、繁殖予防措置をとることに罪悪感を感じる方もいらっしゃることでしょう。しかし、繁殖の予定がないのに発情してしまうことは犬猫の大きなストレスとなりますし、何より飼育しきれるかもわからないのに、むやみに命を増やしてしまうのは何とも無責任なことです。

いま一度繁殖の予定の有無についてや、本当に子犬や子猫を飼育できるのかをよく考え、2019年6月より1年以内に施行される改正法の基準を満たすための準備を始めましょう。

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