2007年に超高齢社会に突入したと言われる日本。高齢者の方がペットを飼うことには、様々なリスクが伴います。
高齢者の方が今は健康だとしても、10年後も健康でいられるのか?それとも、歩くのが少し大変になっているのか?残念ながらそれはわかりません。ペットは生き物ですから、高齢者の方と言えど、一度飼い始めたら責任を持って最後までお世話をする必要があります。
現在、ペットを飼っている人も、これからペットを飼おうとしている人も、周りにペットを飼っている高齢者がいる人も、いざという時に備え、どんなリスクがあって何をするべきなのかを学んでおきましょう。
この記事の目次
高齢者がペットを飼うメリット
はじめに、高齢の方がペットを飼うことによって得られるメリットを見ていきましょう。
心の癒しになる
高齢者に限りませんが、ペットと触れ合うことで心が癒され幸せな気分になれることは、様々な研究により証明されています。
特に、子供が巣立ちしてしまった高齢の飼い主にとって、ペットは自分の子供のように愛おしく、寂しさを紛らわしてくれる存在と言えるのではないでしょうか。
体の健康を保てる
ペットがいることで、「長生きしよう」「元気でいよう」と健康を意識し、食事や運動に気を使っている高齢の飼い主も多いことでしょう。
さらに、お散歩が必要な犬を飼っていれば、外出する機会も自然と増えますよね。
地域の人との交流が広がる
散歩に出かけると、通りかかった地域の人たちや「犬仲間」とおしゃべりをする機会が増えることもあります。
仕事を引退したり、子育てが終わったり、配偶者が亡くなったりして、他の人と関わる機会が減ってしまいがちな高齢者にとって、こうした地域の人との関わりは心や体の安定に非常に大切な役割を果たします。
高齢者がペットを飼うリスク
高齢の方がペットを飼うことで多くのメリットを享受できる反面、考えなければならないリスクもあります。
体の衰えでペットのお世話が十分にできなくなるリスク
自身の体の衰えにより歩行困難になったりすると、お散歩に連れて行けなくなったり、ご飯やトイレのお世話も苦労することになります。
特に、犬も高齢になれば、自由に歩けなくなり介護が必要になることもあり、通常よりさらに力仕事が必要になります。小型犬であっても大変なお世話。中型犬や大型犬にもなると、高齢の方でなくても大変だということは想像に難くないでしょう。
認知症でペットのお世話が十分にできなくなるリスク
万一、認知症になってしまうと、ペットにご飯をあげ忘れたり、お世話を放棄してしまうリスクがあります。
特に一人暮らしの場合、他に気づいてくれる人がおらず、意図せずペットの「ネグレクト」をしてしまう可能性があるので要注意です。
入院や死亡でペットのお世話ができなくなるリスク
もちろん突然の入院や死亡のリスクは高齢者以外にもありますが、高齢の方はそのリスクが高いので、特に気をつける必要があります。
当然、ペットは病院に入れませんから、飼い主が入院してしまうとお世話をできなくなってしまいます。さらに、お世話をしてくれる人が突然亡くなってしまうと、ペットはひとり取り残されてしまいます。
ペットのために今できること
それでは、高齢で飼い主をされている方はどうすれば良いのでしょうか?いざと言う時に備えておくことも必要ですし、今、愛するペットに悲しい思いをさせずに済むよう、工夫をする必要もあります。
お世話を引き継いでくれる人を決めておく
自分が入院したり死亡した場合、ペットのお世話を引き継いでくれる人を前もって決めておきましょう。まず考えられるのは、ご自身の家族や親戚でしょう。次に信頼できる友人。最後が保護団体。もちろん、事前に説明をし、同意を得ておく必要があります。
それを決めた上で、どのようなことを伝えておくべきかについては次章で詳しく説明します。
民間サービスを利用する
体力の衰退で、お散歩、ブラッシング、シャンプーなどのお世話が難しい場合は、ペットシッターやペットサロンなど、民間のサービスを利用しましょう。
今では、アプリから簡単にペットシッターを探せるサービスもありますので、スマホが使えるならぜひ利用してみてください。スマホの操作がわからない方も、この機会に家族や友人に教えてもらいながらチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
ペットと一緒に老人ホームに入居する
現在では、ペットと一緒に入居できる老人ホームも出てきています。
その場合、入居者さんのお世話だけでなく、ペットのお世話もしてくれる場合がほとんどです。体力や認知力が低下して、お世話が困難な場合はこうした老人ホームを探してペットと一緒に入居するのも1つの手です。
お世話を引き継いでくれる人に伝えておくべきこと
様々なサービスを利用したとしても、自分が亡くなった時を考えると、お世話を引き継いでくれる人は必ず探しておくべきです。その引き継ぎの中で伝えておくべきことはたくさんあります。
食物アレルギーの有無
ペットに食物アレルギーがある場合、お世話を引き継ぐ人がそれを知らなければ、アレルギーの食べ物を与えてしまう可能性があります。
命に関わってくることなので、必ず前もって伝えておくようにしましょう。
これまでの注射歴
犬の場合は、自治体への畜犬登録と予防接種が義務付けられています。飼い主や住所が変わった場合は畜犬登録の手続きを再度しなければいけないため、どこの自治体にいつ届出を出したかを伝えておきましょう。
また、これまでの予防注射の摂取履歴がわかるよう、領収書や愛犬手帳など、何らかの形で保存しておきましょう。
金銭的な交渉もしておこう
ペットを飼うのはお世話をする手間だけでなく、金銭的な負担もそれなりにかかります。ペットのお世話を引き継いでもらう前に、金銭的な交渉をしておくことも重要です。
金銭的な交渉をする際は、「ペットとお金を一緒に引き継ぐこと」、「書面に残すこと」の2つがポイントです。ペットとお金を一緒に引き継げば、「お金だけを使われてペットのお世話をしてもらえないのでは…?」という心配を防げますし、引き継ぐ側としても、お世話にかかるお金をしっかり払ってもらえることは安心でしょう。
ペットのお世話とお金をセットで引き継ぐには、次のような方法があります。
負担付遺贈
ペットのお世話を引き受けることを条件にお金を託す、という遺言。自筆ではなく、公証人が作成する「公正証書遺言」にすることが大切。
負担付死因贈与
ペットとお金をセットで贈与するという契約。遺言は一方的だが、これは双方で結ぶ契約なので簡単に破棄ができない。
ペットの信託
残したお金がペットのためにちゃんと使われているかを第三者が監督する。飼い主が亡くなったときだけでなく、入院したときや認知症になったときにも対応できる。
無料の弁護士相談を受けられる市区町村も多くあります。そういう相談を活用し、相談しておくと安心です。お住まいの役所に問い合わせてみても良いでしょう。
まとめ
今回は、高齢の方がペットを飼う上で知っておきたいリスクと、飼い主が元気なうちにやっておきたいことを解説しました。
これからペットを飼おうと考えている高齢の方は、リスクを承知の上で、本当に責任を持ってペットのお世話をしたり、お世話を引き継いだりできるのかをしっかり考えてから飼うようにしましょう。
今ペットを飼っている高齢の方や、そのお身内の方は、飼い主さんが入院したり亡くなったときの手順を決めておきましょう。
高齢者がペットを飼う際は、様々なリスクがあることを理解し、ペットがお世話を放棄されたり、ひとりぼっちになったりしないよう、飼い主やその周りの人がよく考えて話し合うことが大切です。