皆さんはペットショップで子犬や子猫が売られているのを見て、ただ「可愛い」と思えるでしょうか。
確かに動物好きな人にとっては、犬や猫はとても可愛い存在ですが、「可愛い」の裏側には残酷な真実があるのも事実です。
今回は、人間が作り出したペットブームと、それに翻弄され、悲惨な運命を辿る動物たちがいることを、ご紹介していきます。
この記事の目次
シベリアンハスキーの悲劇

「ペットブームが来る度に、危機感を覚える」と、ある動物保護団体関係者は言います。その理由はブームで飼育頭数が増えることにより、捨てられる動物も増えるためです。
1990年前後、日本は空前のシベリアンハスキーブームでした。しかし、シベリアンハスキーは元来ソリ犬で非常に体力があるため、かなりの運動量が必要です。また、独立心が強い性質から、初心者にはしつけが難しいとも言われていました。
運動不足のストレスや不十分なしつけにより、問題行動を起こす犬が増えていったことは想像に難くありません。
犬種の特徴を知らずに飼った人が飼育放棄し、当時の保健所には数多くのシベリアンハスキーがいたとも言われています。
ペット産業が危惧する猫ブーム

日本ペットフード協会の「全国犬猫飼育実態調査」によると、猫の飼育頭数は2013年ごろから緩やかに増加し、2014年以降は犬の飼育頭数を上回っています。
しかし、一部では、猫の飼育頭数が犬を上回ったことで、ペット産業への影響を懸念する声もあるようです。その理由は、「猫は犬に比べて収益性が低い」からだと言われています。
実際に、同協会の2023年の調査によると、犬の飼い主が1ヶ月にかける費用は平均で16,156円。それに対して、猫の飼い主が1ヶ月にかける費用は平均10,171円となっています。
また、ペットの入手先も犬の場合は「ペットショップ」が1位で52.9%に対し、猫の場合は「野良猫を拾った」が1位。「ペットショップ」での購入は3位で 15.9%になります。
このような点から、猫ブームはペット産業が潤わない構造になっていると考えられているのです。
高齢者をターゲットに情報発信

犬の需要拡大を期待する一部の業界では、高齢者に向けて「犬を飼うことで健康寿命が伸びる」といった情報が発信されることもあるようです。確かに、犬を飼うことが高齢者の心身の健康に与える影響は大きいでしょう。
しかし、飼い主の高齢化による犬の飼育放棄という問題も一緒に考えられているのでしょうか。実際に、犬猫の保護理由として一部の動物保護活動家からは、「飼い主の高齢化により飼育が難しくなるケースが目立つ」という声があります。
売れ残ったペットたちはどこへ

環境省が動物取扱業者を対象に実施したアンケートによれば、ペットの売れ残り率が犬は4.0%、猫は7.1%と報告されています。回答事業者の中では、売れ残った犬・猫の引き取り先として「生産業者(ブリーダー等)」や「動物業者(小売業者等)」への譲渡・販売が多く、全体の5割を占めています。
ただし、これはあくまで任意回答のアンケート結果であり、業界全体の実態を正確に反映した数値ではありません。また、行き場のない犬・猫が業者間で転用・転売され、最終的な行き先が把握しきれないという問題も指摘されています。
「引取り屋」という闇のビジネス

「引取り屋」とはペットショップやブリーダーなどから金銭を受け取って、売れ残った動物たちの飼育をしていく業者です。実態としては劣悪な環境で、病気になってもケアされることもなく、生涯を終えるまで狭いゲージの中で動物たちは過ごします。
ペットショップのように犬猫を販売する場合は「第一種動物取扱業(販売)」、ペットホテルのように金銭をもらって預かる場合は「第一種動物取扱業(保管)」の登録が必要です。
2020年6月の法改正により、引取り屋のように動物を譲り受けることを業として行う場合も「第一種動物取扱業(譲渡)」の登録が必要になりました。しかし、無登録で営業したり、届け出内容を偽ったりする事例もあり、実態が把握しきれず行政が介入しづらいケースが指摘されています。
繁殖業者による犬の大量遺棄が問題に

2012年9月5日に公布された改正動物愛護管理法(2013年9月施行)では、自治体が業者から犬猫の引き取りを求められても、「相当の事由」がなければ拒否できると明文化されました。
しかし、その後の2014年~15年には、繁殖業者による犬の大量遺棄が報道されるなど、深刻な事例が確認されています。中には「自治体に引き取りを拒否されたら捨てればよい」と考える業者もいるとされ、不要になった犬を安楽死させたり庭に埋めたりするケースも報告されています。事件として表面化したものは、氷山の一角だと指摘されています。
最後に

動物を愛する人にとって、今回は辛い内容の記事だったかもしれません。ただ、こういった現実に対して私達が出来ることは、まず「知ること」なのではないでしょうか。
近年、ペットショップ側も「老犬ホームで終生飼育する」、「売れ残った動物の里親探しをする」、「大きくなった犬に基本的なトレーニングをし、販売する」など、売れ残った動物のために対策を取っている会社もあります。
そういった会社が出てきた理由には、人々がペット産業を知り、問題点を指摘し、動物愛護の世論を作ってきたことが、大きく貢献しているのではないでしょうか。




































