【獣医師監修】ノミの放置で人にも?ノミ予防で愛犬も飼い主も健康に

2024.07.30
【獣医師監修】ノミの放置で人にも?ノミ予防で愛犬も飼い主も健康に

犬の体表に寄生する外部寄生虫の代表格である「ノミ」。その体は小さく、被毛に隠れてしまうため、パッと見て寄生しているかを判断するのは困難です。

以前に比べ、ノミの寄生による動物病院の来院は少なくなっているように感じますが、その分、ノミの寄生予防も疎かになっているようにも思います。愛犬だけでなく、同居している家族の健康を守るためにも、今一度ノミ予防に関して考えてみるきっかけになれば幸いです。

この記事の目次

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ノミとは

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「ノミ」という名称は、ノミが動物の血を飲む、「血飲み」に由来するという説があるように、ノミの成虫は雌雄ともに吸血性で、多種の動物に寄生します。

その種類は世界で2,000以上と言われ、日本では76種が報告されています。その中でヒトやペットに深く関わるのは、ネコノミ、イヌノミ、ヒトノミなどです。

「ネコノミ」という名前であっても、猫だけでなく犬やヒトに寄生することもあり、実際に日本では犬に寄生するノミの大多数がこの「ネコノミ」です。

ノミの生活環

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ノミは蝶などと同じように、幼虫と成虫の形態が大きく変わる完全変態する昆虫です。

虫卵→幼虫

雌の成虫は寄生動物の体毛上で産卵しますが、虫卵には粘着性はないため、床や寝床などに落下します。
落下した虫卵は数日~3週間程で孵化し、幼虫は動物の垢やノミ成虫の糞を食べて成長していきます。

幼虫→サナギ→成虫

脱皮を繰り返した幼虫はやがてサナギとなり、羽化の条件が整うまで7日~1年も生き続けます。
羽化した成虫は動物の体表に飛び移り、再び産卵を繰り返します。

産卵数は1日に平均で13個、生涯で数百個と言われています。一般家庭の温度や湿度の条件下では、このライフサイクルは3〜5週間で完了します。

ノミによる病害

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直接的な病害

ノミによる直接的な病害は、刺咬による痒みや発赤といった物理的刺激による皮膚炎、ノミ抗原によるアレルギー性皮膚炎などです。ノミアレルギー性皮膚炎は、尾根部、尾部、大腿部、鼠径部に好発し、痒みを伴う皮疹が現れます。

犬では皮疹の他に、脱毛や、二次性の毛包炎(毛根を包んでいる毛穴の奥の「毛包」に起こる炎症)、脂漏症(皮膚の新陳代謝が速くなり過ぎてしまい、皮脂腺の分泌や皮膚の角化が異常に進んだ状態)がよく認められます。

また、激しい痒みのために、ノミ寄生部位をよく咬む、引っ掻くなどの行動が見られ、精神不安定、体重減少、被毛不良が起こり、重度寄生では貧血が見られます。
アトピー性皮膚炎の犬では、ノミアレルギー性皮膚炎の罹患率が高い傾向があります。

ノミによって媒介される疾患

刺咬による病害の他に、ノミは種々の感染症を媒介することを忘れてはいけません。

  • 瓜実条虫(ウリザネジョウチュウ)症
    ヒトと犬の両方に感染する可能性のある「人獣共通感染症」です。特に、小児や子犬で激しい下痢を示すことがあります。
  • ペスト
    ノミが媒介する感染症の代表です。
    かつてヨーロッパを中心に猛威を奮い、現在でも世界で年間3,000人程度の患者が報告されています。日本では1926年以降、発生も輸入例も報告はありません。
  • 発疹熱
    リケッチアという、細菌とウイルスの中間の性質をもつ微生物によって発生します。
    その名の通り、40℃に及ぶ発熱と体幹の発疹が見られます。日本では1950年代以降、4例のみの報告に留まっています。

この中でも日本国内において注意すべきは、ノミによる瓜実条虫症の媒介です。瓜実条虫は犬にもヒトにも感染するので、徹底的にノミの駆除をしていくべきです。

ノミの診断

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ノミを直接検出する診断方法

被毛内に寄生するノミ成虫を検出します。
ノミがよく寄生する部位は背中、下腹部、脇、内股ですので、そこを重点的にノミ取りブラシ(目の細かいブラシ)で探っていきます。

しかし、被毛が黒や褐色の場合や長毛種では見つけづらい場合は、皮膚表面に付着しているノミ糞を見つける方法もあります。
ただのゴミとノミ糞の区別は、湿らせたティッシュや脱脂綿に乗せてしばらく放置すると、ノミ糞なら血が溶血して赤く染まることでわかります。

ノミアレルギーの診断方法

直接ノミを見つけることが診断の基本ですが、ノミの寄生数が少数でもアレルギー反応は起こり、その場合はノミの検出が困難です。
ノミが見当たらない場合には、血液によるアレルギー検査が診断の助けになることがあります。

また、他の皮膚疾患との鑑別が非常にしにくいことから、種々の皮膚病治療薬の反応を見ながら診断を進めることもあります。

ノミの治療

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ノミを直接退治する治療方法

犬の体表に寄生したノミには、殺虫作用のある薬物の投与によって治療を行います。
薬剤の剤形には、スプレー式、滴下式、経口薬などがあり、愛犬の性格や好みによって使い分けます。

また、同時に、昆虫の発育調整薬によって、環境中のノミ卵や幼虫をコントロールします。これを犬に投与することによって、成虫が生んだ卵や、そこから孵化した幼虫の発達を阻害します。

環境中のノミの生活サイクルを断裂することによって、新たなノミの感染を抑えていきます。

ノミアレルギー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎に用いられるものと同じ薬剤を使用します。一般的にはステロイドを用いますが、副作用に注意を払うことが必要です。
もちろん、ノミの駆除も同時に行っていきます。

ノミの予防

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家庭内の環境はノミの発育にとって非常に快適です。
服や靴に付着したノミ卵などが家庭内に持ち込まれると、ノミは爆発的に増加してしまいます。

やはりノミの予防には薬剤を用いることが確実です。1ヵ月に1度の投与によって、体表に寄生しているノミの駆除が可能です。
また、薬剤によっては昆虫の発育調整薬が入っているものもあり、1度の投与でノミの成虫だけでなく、卵、幼虫、蛹まで駆除できます。

かかりつけの獣医師さんとよく相談して、確実にノミの予防をしてあげましょう。

まとめ

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ノミによる病害は、直接命に関わることは多くありません。しかし、痒みは生活する上で大きなストレスです。痒みが原因で食事や睡眠も満足に摂れないとなると、その苦しみは容易に想像できるでしょう。

愛犬や家族が少しでも快適な生活を送れるよう、ノミが寄生しないように予防していきましょう。

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