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いぬ健康

【獣医師監修】犬の尿の色でわかる疾患とは?日々のチェック方法

相澤 啓介 獣医師

犬を飼っているみなさんは、愛犬の尿の観察をしているでしょうか?

犬は言葉が話せない分、尿は健康をチェックする上で大切なバロメーターとなります。尿の見た目に異常が見られる場合、身体に異変が起きている可能性があります。

今回は、尿の見た目に異常が見られたときに考えられる疾患について、獣医師が詳しく解説していきます。

尿の外観異常?

通常、尿の色は淡黄色から琥珀色と表現されます。この通常の尿の色に、赤色や茶色が混ざることを「尿の外観異常」と言います

では、尿に通常とは異なる色が混ざっている場合、どのような原因が考えられるのでしょうか?色ごとに見ていきましょう。

考えられる理由
濃黄色 濃縮尿、ビタミン剤の投与
黄色 正常尿
淡黄色 腎疾患、尿崩症、利尿薬の投与
乳白色 乳び尿、尿路感染症
淡赤色 血尿
赤色 血尿、食物や薬剤の色素
褐色 ヘモグロビン尿(溶血)など
橙色 ビリルビン尿(黄疸)、薬剤の色素
緑褐色 胆汁色素、緑膿菌性尿路感染症など
混濁 尿中異物、膿尿、腎疾患による蛋白尿、閉塞性黄疸など

尿の色の濃さが変わることも尿の外観異常に含まれますが、それはまた別の機会に紹介します。

ここからは、日常生活でもよく遭遇する、「赤色尿」および「褐色尿」を中心にみていきましょう。

動物病院で聞かれること

尿色の異常を理由に動物病院を受診した場合、問診で聞かれるかもしれないことを紹介します。あらかじめ把握しておくことで診断の補助になるかもしれません。

  • いつから:毒物、腫瘍などの予測
  • 排尿:回数、一度に排尿する量、排尿する時に痛みがありそうか
  • 既往歴:服用している薬剤など

尿の外観異常によって考えられる疾患

尿に異常が現れるのは、ほとんどが泌尿器に異常があるときです。
しかし、泌尿器以外にも尿の見た目に異常が現れるものもあります。

また、尿の異常は放っておいても改善することはほとんどなく、むしろ悪化することの方が多いです。

膀胱炎(尿路感染症)

犬の膀胱炎は、多くが細菌感染によるものです。症状は血尿の他に、頻尿や排尿痛が見られることが多いです。
また、尿石症による膀胱炎の発生も多く見られます。

診断は尿検査によって、尿中の炎症細胞や膀胱炎の原因となる細菌や結晶などを検出します。
放置すると腎臓にまで感染が及び、急性腎不全を引き起こすため、早期に適切な治療が必要です。

尿路結石

腎臓や膀胱内に結石が形成される疾患です。結石による刺激によって各臓器で炎症が起こります。また、尿管や尿道に結石が詰まると、急性腎不全が引き起こされるため注意が必要です。

犬種や性別によってできやすい結石の種類などが変わってきます。

犬糸状虫症

犬糸状虫は、肺動脈と右心室に寄生します。
血管が狭くなることで、血流に乱れが生じ、赤血球が破壊されます。このときに生じた血色素が尿中に出現することで、尿が赤く見えます。

犬糸状虫は蚊によって媒介される寄生虫で、国内にも常在しています。定期的な駆虫薬の投与によってしっかり予防したい疾患です。

タマネギ中毒

犬にタマネギを食べさせてはいけないことは有名ですが、それはタマネギに含まれる成分が赤血球を破壊するためです。同時に貧血も起こるため、万が一食べてしまった場合は早期に対処する必要があります。

タマネギに対する解毒薬は存在しないため、催吐や輸液、場合によっては輸血によって対応します。

腫瘍性疾患

腎臓や膀胱、尿道に腫瘍性病変がある場合、そこからの出血によって血液が尿中に混入することがあります。
中高齢犬の場合には、尿検査だけでなく超音波検査や血液検査も同時に行うことがあります。

胆管閉塞

胆嚢は胆汁を溜める袋で、胆管を通じて十二指腸と繋がっています。
炎症や胆石によって胆管が閉塞すると、胆汁中に含まれる「ビリルビン」が逆流し、組織の黄染(黄疸)が起こります。すると尿中にもビリルビンが現れ、橙色に見えます。

肝臓疾患

胆嚢疾患と同様に、肝不全によって黄疸が見られる場合、尿は橙色になることがあります。
血尿だと思っていたらそうではなく、肝臓の病気の可能性もあります。

生殖器疾患

雄の場合は前立腺、雌の場合は子宮や膣の病気によって、尿中に血液や膿などが混入することがあります。
特に避妊や去勢を行っていない場合には生殖器疾患の発生は多く、前立腺膿瘍や子宮蓄膿症は命に関わります。

尿の外観異常が見られたら

屋内で排尿する子はペットシーツの色を観察し、異常にすぐに気付くことができます。

一方で、散歩中など屋外でのみ排尿をする子は、排尿する様子をよく確認しましょう。排尿姿勢を取るのになかなか排尿しない、痛そうな声をあげるなどの異常に気付くことがあります。

尿の持参

尿を検査することで、腎臓や膀胱、その他の臓器の状態を知ることができます。
特に頻尿が見られる場合、動物病院で採尿しようにも膀胱内に尿が残っていないことも多いため、異常が見られた尿はできるだけ持参するとよいでしょう。

いつ尿の異常が見られてもいいように、動物病院で採尿キットをもらっておくと安心です。

室内犬の採尿は、ペットシーツを裏返しておき、溜まった尿に採尿キットの先端を浸すと簡単です。
また、時間が経った尿にはストラバイト結晶が出現してしまうので、採尿から検査までは時間をかけないようにしましょう。

場合によっては動物病院で採尿を

膀胱炎が疑われる場合には、動物病院で直接採尿することもあります。これは膀胱に針を刺す穿刺(せんし)採尿、またはカテーテルによる採尿が行われます。

これによって細菌の混入をさせず、無菌的に尿を採取できるメリットがあります。

持参した尿で検査をして細菌が見られた場合は、本当に細菌感染が起きているのか、環境中の細菌が混入しただけなのかを確認するためにも、動物病院で再度採尿することが必要になります。

まとめ

尿の異常は、普段から観察することで気付きやすくなります。尿の異常に表れた病気のサインに早く気づいてあげられれば、より早く病気に対処することができます。

日頃から愛犬の健康状態を把握し、異常が見られたときにはあわてず、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。

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