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学び?それとも禁忌!?学校飼育のモルモットのホスティングとは

千葉 綾
千葉 綾 シェリー編集部

学校での動物の飼育は、様々な問題を抱え縮小しつつあります。そんな中、愛知県獣医師会は動物に関する学びが失われていくことへの懸念から、モルモットを学校に貸し出す「モルモットのホスティング」事業に取り組んでいます。

このモルモットのホスティングとは具体的にどのようなものなのでしょうか。この記事では、モルモットのホスティングの効果と問題点について考察していきたいと思います。

学校飼育動物の変化

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近年、学校で飼育されている動物は大きく変化しています。2021年の調査によると、2003~2012年と2017~2018年の期間を比較した結果、屋内・外で何らかの動物を飼育している学校の割合は、93.4%から85.8%に減少しました。

これだけ見ると大きな変化がないように思われますが、実際に飼育されている動物の種類には著しい変化が見られます。

かつて多くの学校で飼われていた「鳥類・哺乳類」は、86.4%から49.1%に大幅に減少し、一方で「魚・両生類・昆虫」の飼育は13.6%から50.9%と、大きく数を増やしています。

参考資料:学校教育における動物の役割と現状
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2021/01/92-9-12.pdf

飼育動物の変化の背景にあるのは、主に「鳥インフルエンザ」と「教員への負担」です。

2003年に発生した鳥インフルエンザの流行時、野鳥から学校飼育の鳥類へウイルスが感染するリスクが懸念されました。そして、それが子供たちにうつる恐れから、2003年以降は学校での鳥類の飼育は急激に減少しました。また、アレルギーを持つ子供が増えたことも、鳥類・哺乳類の減少の一因となっています。

教職員の過重労働は、今も続く社会的な問題であり、その解決策が見えないのが状況です。そのため、比較的手間がかからない魚・両生類・昆虫の飼育が増加していると考えられています。

モルモットのホスティングとは

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もちろん、魚や両生類、昆虫の飼育からも、生物の生態や命の尊さを学ぶことは可能です。しかし、より人間に近い動物との関わりが、子供たちにとってかけがえのない経験になるのも事実です。

また、うさぎ小屋や鳥小屋のように屋外飼育している場合、学校が熱心に指導していない限り、動物と触れ合う機会は飼育委員や元々動物が好きな子供に限定されてしまいます。

そんな中、子供たちと動物のふれあいの機会がなくなっていくことを懸念した、愛知県獣医師会が始めた事業が「モルモットのホスティング」です。

モルモットのホスティング事業詳細

  1. モルモット一匹を一定期間学校に貸し出す。基本的には1学期間を1単位とし、1年間で終了する。なお希望のある場合は1ヶ月間を最低貸与期間とする。貸与する動物は動物病院で一定期間飼育され健康が確認されたモルモットとする。
  2. 長期休暇中は獣医師が預かることもできる。土日や祝日による連休は学校で飼育する。
  3. アレルギーの児童等、飼育の継続に問題が生じた場合は速やかにモルモットを引き取る。
  4. 動物が病気になった場合は獣医師が無償で治療をする。
  5. 1年間終了し学校が希望する場合はモルモットの無償譲渡も可能とする。この場合のその後の取り扱いは一般の学校飼育動物と同様とする。
  6. 貸与前に一定期間の飼育が可能かどうか学校と詳細に打ち合わせをする。
  7. 導入時、獣医師による飼い方教室等を実施する
  8. 導入前、終了後に児童、教職員へのアンケート調査をお願いする。
  9. 学校内、児童の自宅へのホームステイ中いかなる原因で死亡してもその責任は問わない。
  10. もし飼育途中にモルモットが死亡した場合は獣医師が子供達に死亡について説明をする。
  11. 児童が、モルモットに噛まれるなどのケガをしても獣医師会は責任を取りません。

引用元:モルモットのホスティングについて|公益社団法人愛知県獣医師会
https://aichi-vet.or.jp/business-details/school/hosting-business.html

ホスティングは学び?禁忌?

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学校における動物飼育は、生命の尊さ、愛情、思いやりなど情操教育を目的としています。学校で飼われている動物に愛着を持ち、病気や死に直面することで悲しみを感じ、命に対する深い理解を育むことは、ホスティングよりも通常の「継続飼育」によって強く育まれます。そのため、動物を飼育途中で返却できるホスティングに対しては批判の声もあると言われています。

獣医師会も、子供たちに動物に対する責任を最後まで持たせないホスティングに対して、大きな葛藤を抱えながら活動しています。しかし、多くの学校が動物の飼育や管理をする余裕がなく、飼育数も減少傾向にある現状を考慮すると、学校の負担を極力減らすことを重視したホスティングが、唯一の現実的な方法なのだそうです。

最後に

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2020年度からモデルケースとしてスタートした「モルモットのホスティング」は、当初は2023年度で終了予定でした。しかし、学校現場での好評を受けて、今後も継続されることが決定しました。

子供たちの学び、教職員の負担、そして動物たちが幸せに生きるために、何が最善なのかについて真剣に考える必要性を感じます。未来の世代に動物を慈しむ心を伝えるために、私たちには何ができるのでしょうか。

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