犬に関する支出はここ10年でどう変わってきているのでしょうか?ペット保険のアニコム損害保険株式会社が同社の契約者に対し毎年行っている調査結果をもとに、2014年から2023年の10年間の推移を分析しました。
現在、犬を飼っている人も、これから飼いたいと思っている人も、何にどのくらいお金が掛かるのか、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
調査方法と項目
アニコム損保では、契約者を対象に、1年間でペット1頭にかかった費用について、毎年インターネットでアンケート調査を実施しています。調査項目は以下の15項目です。
- ケガや病気の治療費
- フード・おやつ
- サプリメント(2017年~)
- しつけ・トレーニング料
- シャンプー・カット・トリミング料
- ペット保険料
- ワクチン・健康診断等の予防費
- ペットホテル・ペットシッター
- 日用品
- 洋服
- ドッグランなど遊べる施設
- 首輪・リード
- 防災用品
- 交通費(2017年~)
- 光熱費(飼育に伴う追加分、2017年~)
「サプリメント」、「交通費」、「光熱費」は2017年の調査から項目に追加されています。
ケガや病気の治療費は6万円前後
ペットの医療も人間並みに進歩し、がんなど高額な医療費がかかる病気も増加しています。近年、ペットの健康志向が高まっていることから、愛犬家にとって「ケガや病気の治療費」は気になるところでしょう。2023年の調査では、この項目が2番目に高額な支出となりました。
10年前の2014年には80,912円でしたが、翌年には57,822円と大幅に減少し、2023年には56,134円でした。年によって変動はあるものの、6万円前後の支出が続いている傾向が見られます。
ただし、費用は犬の年齢によっても大きく異なります。例えば、1歳の年間診療費の中央値は21,910円、5歳で34,548円となっており、6万円を超えるのはシニア期に入る8歳頃で63,035円です。その後は年齢とともにさらに増加していきます(出典[PDF])。
また、ケガや病気の治療費は小型犬よりも大型犬の方が高くなる傾向があります。年によって波がある「ケガや病気の治療費」ですが、年間6万円の支出となると家計にはかなり響く項目だと言えそうです。
保険料や病気予防のための支出は増加傾向
ペットの健康志向は、保険料や病気予防に関する支出にも反映されています。「ペット保険料」は2014年の38,052円から2019年には50,155円まで急上昇しました。その後は徐々に減少しているものの、2023年には43,763円となっています。
「ワクチン・健康診断等の予防費」は長らく2万円台を維持していましたが、2017年に3万円台を突破し、2023年には33,648円に達しています。これに前章の「ケガや病気の治療費」を加えると、ペットの健康関連の年間支出はおよそ12万円から15万円に上ることがわかります。
フードやおやつの支出は約33%増加
2023年調査で最も高額だったのは、犬の食費にあたる「フード・おやつ」でした。
2014年の支出は47,983円でしたが、その後増加傾向が続き、2020年には6万円台に達しました。以降は6万5千円前後で推移し、2023年には64,294円となっています。この10年間で支出は約33%増加し、月額換算では約5,300円の出費です。
近年、ヒューマングレード製品やグルテンフリー、オーガニックなど、犬の健康のためにドッグフードにこだわる人が増えているため、この傾向が支出の増加に影響していると考えられます。
食事と同様に、犬が口にするものとして、2017年から「サプリメント」が調査項目に加えられました。年によって変動はありますが、支出額は概ね1万円から1万5千円の範囲で推移しています。
サプリメントはフードのような必需品ではないため、全く費用をかけない人もいるでしょう。逆にこれ以上の金額をかけて、愛犬にサプリメントを与えている健康志向の飼い主も増えていると考えられます。
美容や手入れに関する支出はほぼ横ばい
かつては一般的でなかった犬のトリミングも、現代ではすっかり定着しています。2014年以降、「シャンプー・カット・トリミング料」は4万5千円前後で推移しており、大きな変動は見られません。
同様に、犬の洋服代も約1万3千円で大きな変動は見られません。その背景には、過去10年間の人気犬種ランキングに大きな変化がないことが一因と考えられます。
愛犬と記念日を祝う飼い主も増加
近年、誕生日やクリスマスなどの記念日を愛犬と一緒にお祝いする人が増えています。2023年の調査では、犬の飼い主の約8割が誕生日を祝うと回答しました。
誕生日のプレゼントにかける費用の平均は4,013円で、ケーキやおやつ、おもちゃを贈ってお祝いするほか、記念写真を撮ったり、旅行に出かけたりするケースもあるそうです。
また、4割の飼い主が愛犬と一緒にクリスマスを祝い、その際にかける費用は平均2,362円という結果でした。
年間支出の平均は「約35万円」
すべての調査項目を合計した年間支出の推移を見ていきましょう。
「サプリメント」「交通費」「光熱費」が追加された2017年は、支出が44万円と高額になっていますが、それ以外の年は30万~35万円の範囲に収まっており、年間支出の平均は約35万円です。
健康関連の支出は増加傾向にある一方、「しつけ・トレーニング料」や「ペットホテル・ペットシッター」など、支出が大幅に減少している項目(注)もあり、支出の合計は10年前と比べて大きな変化は見られません。
注の補足
「しつけ・トレーニング料」や「ペットホテル・ペットシッター」に関しては、2017年と2018年で大幅な数値の変動が見られます。調査方法や項目の分類が変更された可能性があり、実際に支出額が大きく減少したかどうかははっきりしていません。このため、10年前の数値と比較すると大きな変化があるように見えます。
支出の内訳
2023年の年間支出の内訳は、以下の通りです。
項目 | 金額 |
---|---|
ケガや病気の治療費 | 56,134 |
フード・おやつ | 64,294 |
サプリメント | 10,783 |
しつけ・トレーニング料 | 6,343 |
シャンプー・カット・トリミング料 | 48,200 |
ペット保険料 | 43,763 |
ワクチン・健康診断等の予防費 | 33,648 |
ペットホテル・ペットシッター | 4,446 |
日用品 | 13,431 |
洋服 | 12,590 |
ドッグランなど遊べる施設 | 2,631 |
首輪・リード | 6,245 |
防災用品 | 1,008 |
交通費 | 18,602 |
光熱費(飼育に伴う追加分) | 16,505 |
合計 | 338,623 |
生涯飼育にかかる支出は330万円から500万円以上に
この調査を元に、生涯飼育にいくらかかるかを算出していきましょう。
犬の寿命は10年から15年程度と言われていますので、2023年の年間支出をもとに単純計算すると犬1頭の生涯の飼育には3,386,230円から5,079,345円という金額が掛かることが、この調査結果からわかります。
ただし、これらの数値はあくまでアニコムの契約者を対象にした調査の「平均値」であり、実際にかかる費用は、犬のサイズ、病気の頻度、嗜好品への関心度合いなどによって個体差があります。
また、統計を取る方法によって調査項目なども違ってきます。一般社団法人ペットフード協会の統計を元にしたデータはこちらの記事をご覧ください。
最後に
このように、支出額だけを見ても「かわいい」とか「癒やしのため」という理由で犬を飼うべきではないことがわかります。
もちろん、お金の問題だけではなく、命ある動物を飼う以上さまざまな責任が伴いますが、経済面においても終生飼育の覚悟や準備が必要であることを実感させられる調査結果だったのではないでしょうか。
また、調査結果からは健康関連の支出が増加していることもわかります。愛犬との生活をより充実させるためには、最低限の支出に加え、健康管理への支出も念頭に置いておくことが大切かもしれませんね。
出典
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2014/news_0150202.html
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2015/news_0160314.html
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2016/news_0170322.html
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2017/news_0180315.html
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2018/news_0190315.html
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2019/news_0200331.html
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2020/news_0210323.html
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news-release/2022/20230303/
- https://www.anicom-sompo.co.jp/news-release/2023/20240307/