はじめて犬を家にお迎えして、その後すぐに直面するのが、しつけの問題です。インターネット上を探せば、たくさんの情報が見つかりますが、「叱ったほうが良い」と書いてあったり、「叱ってはいけない」と書いてあったり、一体どれが正しいのか迷ってしまいますよね。
この記事では相反する2つのしつけ法とおすすめの方法、海外のしつけ事情を解説します。
この記事の目次
2つのしつけ法とその流れ

「犬は言葉が通じないんだから、悪いことをしたら体で覚えさせないといけない」とは、昔から言われてきました。現在でも、そのような考え方をお持ちの方が一定数いらっしゃいます。
その背景には、日本では1990年代頃まではこの考え方が主流であったという歴史があります。その後、欧米で広まった「褒めて育てるしつけ(陽性強化法)」が日本にも普及し始め、現在では「犬にやさしいトレーニング」も広く知られるようになってきました。
1. 厳しくしつける
「強制訓練」と呼ばれる方法です。「強制」という言葉の通り、犬に一定の負荷をかけながらトレーニングを行い、指示に従わせます。
ここでは、「散歩中の引っ張り」を例にします。
- 犬がリードを引っ張ったら、リードショックを与える
- 引っ張りをやめたらリードを緩める
- これを繰り返すことで、引っ張ると不快なことが起きる、やめると不快がなくなる、と学習させる
望ましくない行動に対して嫌悪刺激(罰)を与え、やめたら刺激を取り除くことで行動をコントロールする方法です。かつては広く犬のトレーニングに用いられてきました。
2. 優しくしつける
「陽性強化法(モチベーショントレーニング)」とも呼ばれる方法です。犬に負荷をかけず、望ましい行動を引き出して強化していきます。
同様に、「散歩中の引っ張り」を例にします。
- 犬が引っ張ったら立ち止まる
- 犬が横に並んで歩いたら、すかさず褒めたり、ご褒美のおやつをあげる
- これを繰り返すことで、飼い主の横を歩くと良いことがある、と学習させる
望ましい行動が現れた時に褒めることで、その行動を定着させていく方法です。強制や体罰を用いないため、犬への負担が少なく、飼い主との信頼関係を築きやすいという特徴があります。
動物園やイルカショーでも同様の原理が用いられています。
どちらの方法が良いのか

現代の動物行動学では、優しくしつける「陽性強化法」が主流となっています。
罰や強制を用いるしつけは、犬にストレスや恐怖を与えるだけでなく、攻撃性が増したり、飼い主との信頼関係を損なったりするリスクがあることが、科学的な研究で示されています。そのため、多くの獣医師やプロのトレーナーも陽性強化法を推奨しています。
もちろん、すべての犬に万能な方法があるわけではありません。犬の性格や状況によってしつけの進め方は異なりますが、基本的なアプローチとしては陽性強化法をベースに取り組んでみることをおすすめします。
罰を使ったしつけのリスク
特に専門知識のない飼い主が罰を使ったしつけを行うことはおすすめできません。罰を与えるタイミングや強さのコントロールは難しく、少しでもずれると犬は何に対して罰を受けたのか理解できず、混乱するだけになってしまいます。
また、罰が強すぎると恐怖や攻撃性につながったり、飼い主に対して恐怖心を持つようになり信頼関係が壊れることもあります。さらに、期待した効果が出ない場合に、罰の強さをエスカレートさせてしまいがちな点も見逃せません。
万が一、罰を使ったしつけによって深刻な問題行動が生じた場合、その改善には長い時間と労力を要することが多く、専門家への相談が必要になることも少なくありません。
一方、陽性強化法はタイミングがずれても「おやつをもらえなかった」で済みます。ストレスや恐怖を与えることなく、飼い主との信頼関係を築きながらしつけを進められる点が大きなメリットです。
海外のしつけ事情
陽性強化法が主流となっている背景には、世界的な動物福祉への意識の高まりがあります。海外の事情を見てみましょう。
近年、罰を用いた訓練器具を規制する動きが世界的に広がっています。特に多くのヨーロッパの国々では、電気ショック首輪やプロング首輪が動物福祉法のもとで禁止されており、オーストラリアの一部州でも同様の規制が導入されています。
日本ではまだこうした法整備は進んでいませんが、世界的な流れとして陽性強化法が標準となりつつあり、多くの獣医師や動物行動の専門家も陽性強化法をすすめています。
犬のしつけ法の選び方まとめ

今回は2つのトレーニング方法の違いやおすすめの方法をご紹介しました。この2つの考え方の違いを理解しておくことで、インターネット上の情報に惑わされにくくなります。
筆者自身も以前は、インターネットの情報に振り回され、一貫性のないしつけをしてしまっていました。方針が定まらないまま、さまざまな方法を試すことは、犬にとっても混乱を招く原因になります。
インターネットで調べる時はもちろん、実際にトレーニングをお願いする場合も、そのトレーナーさんがどういった訓練方法を得意としているのかを念頭に置きながら調べてみてくださいね。







































