【獣医師が教えるワクチン接種必須の感染症】ケンネルコフ

2024.07.30
【獣医師が教えるワクチン接種必須の感染症】ケンネルコフ

ケンネルコフという犬の疾患を聞いたことがありますか?名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。

「ただの風邪でしょ」と思う方もいるかもしれませんが、実際にはどのような症状で、どのような予防が有効なのでしょうか。

本記事では、今さら聞けないケンネルコフについて現役で働く獣医師が詳しく解説していきます。

この記事の目次

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ケンネルコフって何?

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ケンネルコフとはいわゆる「犬の風邪」で、ウイルス(犬アデノウイルス2型、犬パラインフルエンザウイルス、犬ヘルペスウイルス、レオウイルス)、細菌(気管支敗血症菌など)、マイコプラズマの単独ないし混合感染によって引き起こされます。

このうち、犬アデノウイルス2型および犬パラインフルエンザウイルスはケンネルコフの最大の危険因子であり、それぞれ定期的なワクチン接種によって予防が可能です。

犬アデノウイルス2型感染症

犬伝染性喉頭気管炎とも呼ばれ、その伝染力の高さから犬のコアウイルス病に指定されています。
各製薬会社によって異なりますが、一般的には4種以上の混合ワクチンで予防が可能です。

犬パラインフルエンザウイルス感染症

こちらはコアウイルス病には指定されていませんが、犬アデノウイルス2型と同時に予防することが望ましいです。
5種以上の混合ワクチンで予防が可能です。

ケンネルコフの症状

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ケンネル(犬の、犬舎の)、コフ(咳)の名の通り、呼吸器症状を呈します。

具体的には繰り返す咳を主症状とし、痰が絡むこともあります。痰が絡む場合には、痰を吐きだそうとする動作をします。

重度になると運動不耐性、チアノーゼ、失神を起こすこともあります。また、肺炎にまで進行すると、発熱、元気消失、食欲不振などの全身症状が認められます。

症状の経過

通常、原因となる微生物の単独感染では軽症に留まることが多く、7〜10日程で回復します。

しかし、複数の病原微生物による混合感染が起こると症状は重症化し、時には死亡することもあります。

病原微生物の感染経路

感染経路は、感染している他の犬からのくしゃみ、鼻汁、咳による飛沫感染です。

生後6週~6ヵ月程度の子犬での発症が目立ち、最も多いケースはブリーダーやペットショップでの集団感染です。

感染している子犬が新居で発症する場合が多く見られます。また、新しい近況に対するストレスが発症に関わっている可能性も考えられます。

ケンネルコフの診断

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ケンネルコフの診断は主に問診と画像検査によって行われます。

問診

感染症の場合、問診によって他の感染犬との接触を聴取します。

  • いつから咳などの症状が始まったのか
  • 数日~2週間以内に、トリミングサロン、ドッグラン、ペットホテルなどの犬が多数集まる場所に行ったか
  • 多頭飼育の場合、咳などの症状を呈している、または咳があったがすぐに治癒した犬がいないか
  • 混合ワクチンの接種歴

画像検査

胸部単純X線検査によって気管支壁が白く見えることがあります。これは気管支炎が起きている証拠です。
肺炎まで進行している場合は、肺が白く見えます。

いずれの場合も症状がある程度進行していないと検出できないことが多く、犬の年齢や症状、問診の結果などから診断することも少なくありません。

ケンネルコフの治療

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ケンネルコフが疑われた場合、速やかに治療を行います。

特に子犬では咳による体力の消耗が激しいので、早く症状を緩和してあげたいですね。

鎮咳薬

咳がひどい場合に使用します。
しかし、痰が絡んでいる場合は、咳を抑制することで細菌を含む分泌物の気道内停滞を助長することになるため、鎮咳薬は使用しません。

気管支拡張薬

炎症が起こると気管支は腫れて狭くなります。
薬剤によって気管支を広げることで呼吸を楽にし、咳刺激を抑制します。
また薬剤によっては横隔膜の収縮増強による呼吸筋疲労の軽減作用もあります。

ネブライザー

吸入療法のことです。
気管支拡張薬や抗菌薬などの薬剤を含む霧をケージ内に充満させ、吸引させます。
注射や内服よりも即効性があることが特徴ですが、少し時間がかかる治療法です。

抗菌薬

ケンネルコフの発生に細菌が関与していることもあります。
あるいは、傷害された気管や気管支などへの細菌の二次感染防止を目的として使用されます。

ヒトの薬は絶対にダメ!

ここで注意したいのは、犬にヒトの風邪薬を与えてはならないということです。
風邪薬には抗炎症成分が入っているので、自己判断で投与してしまう方がいます。

確かにケンネルコフは「犬の風邪」と言っても良いかもしれませんし、症状も改善するかもしれません。

しかし、風邪薬に含まれるイブプロフェンやアセチルサリチル酸、アセトアミノフェンなどの成分は、犬が服用すると重篤な中毒症状を引き起こすことがあります

症状がヒトの風邪と似ていても、風邪薬の投与は絶対に避けてください。

ケンネルコフは予防が大事

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複数の病原微生物が関係している疾患の性質上、完全な予防は難しいと言えます。

しかし、その中でも予防できるものもあるので、しっかり押さえておきましょう。

混合ワクチンの接種

犬アデノウイルス2型と犬パラインフルエンザウイルスに関しては、混合ワクチンの定期接種によって予防が可能です。

これらウイルスを予防することで、ケンネルコフにおいて危険な状態である混合感染を防止することができます。つまり重症化を免れる可能性が高まり、これは非常に大きなメリットです。

飼育環境の清浄化

多頭飼育の場合には、咳などの呼吸器症状を呈した犬が現れた場合に速やかに隔離することが大切です。

他にも部屋や食器などをこまめに消毒することも感染の予防に繋がります。

まとめ

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子犬の時期に咳の症状が出たら、獣医師に電話で確認の上、すぐに動物病院を受診しましょう。

ヒトの風邪と同様に、ケンネルコフもこじらせては大変だということです。

同時に、ワクチン接種による感染の予防も非常に重要です。
咳に苦しむ愛犬の姿を見ないためにも今一度、病気の予防について考えてみてください。

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