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国内ペット業界も少しずつ変わっている?CSRに着目して見てみよう

2020.09.27
国内ペット業界も少しずつ変わっている?CSRに着目して見てみよう

動物関連の業界は動物愛護の観点から批判を受けることが多く、ペット業界もその例外ではありません。読者のなかには「ペット業界は問題だらけ」と思われている方も多いでしょう。

特に生体販売を行うペットショップなどは、動物という生き物を取り扱う性質上、それは間違ってはいないのかもしれません。

しかし、中にはそうした世論を受け止めて、少しでもペット産業の改善に向けて考え方をシフトさせようと努力している企業もあります。

今回は、そのような企業にフォーカスして、ペット業界のあり方を変えていこうと行っている新しい取り組みを紹介します。

この記事の目次

犬猫ペット用品の個人輸入代行「うさパラ」
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CSRとは

CSRとは企業の社会的責任

突然ですが、CSRという言葉を聞いたことはあるでしょうか?CSRは「Corporate Social Responsibility」の略称で、日本語では「企業の社会的責任」と訳されます。

欧州委員会はCSRを、「社会への影響に対する企業の責任であり、株主、広くはその他ステークホルダーと社会の間で、共通価値の創造を最大化すること、企業の潜在的悪影響を特定、防止、軽減することを目的として、ステークホルダーとの密接な協働により、社会、環境、倫理、人権、そして消費者の懸念を企業活動と経営戦略の中核に統合していくこと」と定義しています。

なお、ステークホルダーとは、企業と利害関係を持つ者のことで、消費者、従業員、株主、地域社会などを指します。
簡単に言うと、「企業は利潤を追い求めるだけではなく、法律を遵守して、社会や環境にも配慮し、関係する人たちの利益も考えながら、長期的な視野で経営しましょう」という提言がCSRです。

繁殖引退犬を譲渡する取り組み

ペット産業のCSR事例、繁殖引退犬の譲渡を促進

一般社団法人ペットパーク協会は、全国14ヶ所でペットオークション会場を運営している業界団体です。

ペットオークションは悪評が多く、世間では良い印象を持たれていません。しかし、その一方で、ペットパーク協会はCSRの取り組みに力を入れている法人でもあります。特に、ペットパーク協会では、繁殖引退犬や販売に適さない犬を譲渡する活動に力を入れています。

ペットオークションのデメリット
日本ではペットショップに流通するペットの多くが、ペットオークションを経由していると言われています。ここで「競り」にかけられたペットは、ペットショップを経由して飼い主のもとに行くわけですが、このペットオークションという形態があることで、生産者の実態がわかりにくくなるというデメリットがあります。これにより、悪質なブリーダーであっても商売を行いやすい環境ができあがってしまったと批判の対象になっています。

動物愛護法では、犬の終生飼養が義務付けられていますが、ブリーダーが売れない幼犬や繁殖できない母犬を飼い続けることは大きな負担となり、飼育環境の悪化や赤字化を招きかねません。

ペットパーク協会は、ブリーダーにとって負担となるこの問題を動物愛護の観点から解決しようと、動物愛護団体や動物取扱業者と協力してペットシェルターを運営して、それらの犬を引き取り、譲渡を促すことにしました。これに、加えて、繁殖引退犬が譲渡されやすくなるように、母犬を繁殖に使用する年齢を6才までにするよう会員ブリーダーに呼びかけています。

マイクロチップ装着の普及促進

ペット産業のCSR事例、マイクロチップ無償装着活動

ペットショップを訪れたことがある方であれば、一度は目にしたことがあるかもしれないペッツファースト株式会社は、CSR推進に積極的な大手ペットショップチェーンです。実は、ペッツファーストでは、全国82店舗中の25店舗で保護犬譲渡専門ブースを設置しています。加えて、聴導犬育成プロジェクト、有料老犬ホーム運営、マイクロチップ無償装着の活動も行っています。

2019年6月12日に改正された動物愛護法では、犬・猫のマイクロチップ装着を動物取り扱い業者に義務付けることが新たに定められました。ペッツファーストでは法令に先駆けて、2006年3月から販売する全ての犬・猫にマイクロチップを装着しているばかりか、飼い主とペットが集まるイベントにも積極的に参加し、マイクロチップの普及活動を進めています。イベント会場でも、獣医師とともにマイクロチップの有効性を説明し、マイクロチップ装着を実演しています。

遺伝性疾患・感染性疾患への対策

ペット産業のCSR事例、ワクチン接種と遺伝子検査

先にも触れたとおり、多くのペットショップは仕入れの大部分をペットオークションに頼っていますが、ペットショップのペットプラスを運営する株式会社AHBは、トレーサビリティ向上のために、契約ブリーダーからしか販売する犬・猫を仕入れていません

契約ブリーダーのもとには年に一回AHBの獣医師が訪問し、繁殖犬に混合ワクチンと狂犬病ワクチンの接種を行っています。飼い主として考えると至って普通のことのように感じますが、悪質なブリーダーの場合はこれらは普通のことではありません。

それに加えて、犬ブルセラ病の予防とコントロールの方法を開発して、その普及にも努めています。また、遺伝性疾患については、基礎知識を普及するためにブリーディングシンポジウムを開催すると同時に、遺伝子検査も提供しています。こういった取り組みは既に欧米では当たり前のことですが、日本では進んでいる方だと考えられてしまうのが日本という国の動物に対する環境作りの遅れを感じさせます。

なお、感染症と遺伝病を予防し、販売できない幼犬の数を減らすことは、繁殖環境の改善にとどまらず、ブリーダー自身の経営とAHBの両方の経営にも良い影響を与えています。

社会化・しつけをしてから販売

ペット産業のCSR事例、販売前に社会化・しつけ

有限会社ハッピーベルは、千葉県を中心に14店舗を展開するペットショップチェーンで、2015年から社会化と基礎的なしつけを行ってから犬を販売する「ハッピードッグ」という取り組みをはじめています。

同じ月齢の犬を集団飼育することで犬同士での社会化を促し、訪れたお客さんからフードをもらうことで人との社会化も促しています。加えて、おすわり、あまがみ、無駄吠え、トイレのトレーニングをスタッフが行っており、その進捗状況はお客さんが見えるように掲示してあります。

犬の問題行動は社会化不足にその一因があるとも言われています。問題行動が原因で、飼い主が保健所に持ち込むケースもあるため、このような持ち込みを販売時点で予防できる画期的な取り組みと言えます。

まとめ

ペット産業のCSRに注目

今回は問題視されがちな生体販売に関わる企業の取り組みをご紹介しましたが、皆さんはどのように感じましたか?

確かに生体販売がなくなり、全てのペットを迎えたいと考える人が、保護犬や国によって認可されたブリーダーからしか購入できない世の中になったとしたら、現在抱えている問題のいくつかは解決するかもしれません。

現在の日本でも、そのような理想を目指して少しずつ前進してはいますが、実際にこれが達成されるまでには、ものすごく時間がかかるでしょう。しかし、その間も、悪徳な業者によって劣悪な環境にさらされてしまう動物たちが多く生まれています。

そして、こういった状況にあることを既に一部のペットオークションを行う団体やペットショップを運営する企業自らも問題視しており、少しでも改善するために前向きな取り組みも行っています。このような取り組みで全ての問題が解決するわけではありませんが、様々な立場にある人たちが知恵を出し合って、少しでもスピーディーに根本的な問題を解決するための方策が見つかることを期待しています。

私たちも、企業のこのような取り組みを知り、できるだけ悪質な業者が事業を行いにくくなる環境を作っていきたいですね。

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