猫はもともと砂漠で暮らしていたため、動いてもあまりエネルギーを消費しません。そのため、食事管理や運動管理を怠ると、すぐに肥満体型になってしまいます。
人間同様、猫の肥満も心臓や関節に大きな負担を与え、健康な生活を脅かします。また、夏季では体温調節に影響を及ぼし、熱中症のリスクにも繋がります。さらには一度太ると運動量が減り、さらにもっと太ってしまうという悪循環に陥ります。
この記事では、獣医師がそのような事態から脱却するための食事管理の方法を解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
この記事の目次
肥満のリスク
まずは、猫が肥満になるとどのような悪影響があるかを見ていきましょう。
糖尿病
肥満の猫の80~90%が糖尿病を患い、毎日インスリンの注射を必要としています。
これは、蓄積された脂肪によってインスリンへの反応が悪くなることによります。
ダイエットを行い、余分な脂肪を落とせれば、インスリンへの抵抗性を元に戻すことができます。
肝不全
肥満の猫が陥りやすいのが、脂肪肝である「肝リピドーシス」です。
これは、ちょっとした食欲不振でも体が栄養不足と感知し、エネルギーとして肝臓に脂肪を送り込むことで起こります。
強制給餌で治療しますが、これは猫にとって大変苦しいものになります。
循環器・呼吸器への影響
脂肪組織に栄養を供給するために、健康な猫よりも多くの血液量が必要と言われています。
高血圧を引き起こし、それによって眼底の血管が破れると、失明もあり得ます。
関節炎
猫には横の運動だけでなく、キャットタワーなどでの三次元的な運動も必要です。
高くジャンプするためには柔軟なバネと、しっかりした関節が不可欠です。
肥満によって関節に負担がかかることで炎症が起き、猫自身が運動をしたがらなくなるため、さらなる肥満を引き起こします。
食事管理によるダイエット
これまで見てきたように、肥満は「百害あって一利なし」。
とは言え、猫に無理矢理運動させようとしても、本人のやる気がなければ失敗に終わってしまいます。そのため、食事の管理によって肥満の解消を目指すのが、最も取り組みやすいと言えます。
給餌量を調整する
フードのパッケージには、体重での推奨給餌量が記載されています。
このとき、太っている現在の体重でフードをあげてしまうと全く意味がないので注意が必要です。
ただし、突然フードの供給を減らすと肝リピドーシスになることがあります。給餌量は、健康に害が出ないように、獣医師と相談しながら決めていきましょう。
オヤツは必要?
愛する家族ですから甘やかしたくなるのもわかりますが、生活する上で猫にオヤツは必要ありません。
とは言え、愛猫との関係をより良いものとするためにオヤツは有効なツールです。カロリーと塩分量をきちんと計算した上で与えるぶんには問題ないでしょう。
1日に与えるオヤツの量をしっかり決めた上で、1日分を前もって小分けにしておくと、オヤツのあげすぎを防ぐことができます。その際、家族の誰かがこっそり分量外のオヤツをあげてしまうと意味がないので、家族としっかりおやつのルールを確認しておくことが重要です。
オススメのダイエットフード
食事制限を行うにあたっては、量の管理だけでなく、ダイエットフードを適切に選ぶことも重要です。
特に、猫はグルメな子が多い傾向にありますので、食べた触感や味、粒の大きさ、ドライタイプかウエットタイプかなど、猫に合わせてフードを選択しましょう。
ここでは、市販のダイエットフードを2つご紹介します。
ロイヤルカナンのライトウエイトケア
ロイヤルカナンのライトウエイトケアは、脂肪分を抑え、タンパク質を配合したダイエットフードで、減量による栄養バランスの偏りをなくします。
また、食物繊維も多く含まれているため、満腹感を得られるのも特徴です。
尿路結石の形成にも配慮していますので、避妊・去勢後の猫にも安心して与えることができます。
ヒルズのメタボリックス
ヒルズのメタボリックスは、脂肪含有量ではなく、脂肪代謝に注目したフードです。つまり、脂肪を燃焼しやすい体質にすることを目的としています。
これによって、ダイエットによくある厳しい食事制限がなくなります。
また、メタボリックスはオヤツとしてビスケットもあり、食事と同時に体重のケアが可能です。
肥満にならないために
病気全般に言えることですが、肥満も予防が重要です。
猫の肥満は、飼い主による適切な健康管理で必ず防げるものです。たとえ、現在は猫が太っていないとしても、食事管理には常に気を使いましょう。
避妊・去勢用フード
動物病院で説明を受けたことがあるかもしれませんが、一般的に、避妊・去勢手術の後には、食欲が増します。
エネルギーの代謝も落ちる傾向にあるため、手術前と同じ感覚でフードを与えていると、あっという間に太ってしまうことがあります。
不妊、去勢手術の後は、カロリーを制限した「太りにくい食事」に変更しましょう。
ダイエット食にしないと痩せない
「太りにくい食事」では、いくら続けても体重は減りません。また、「痩せる食事」でも量を制限するだけでは栄養が偏ります。
肥満を解消するためには、太りにくい食事から適切なダイエット食への変更が必要不可欠です。
まとめ
「愛猫が肥満だと思うか」という質問に「いいえ」と答えたうち、5匹中1匹が標準体重を超えていたという報告があります。
これは人間でも同様のデータが示されており、毎日一緒にいると体型の変化に鈍感になるのです。
安易に「うちの猫は大丈夫」と思い込まず、改めて健康管理を見直してみましょう。もし愛猫が体型を指摘されたことがあるなら、今すぐダイエットを検討してみてください。