愛犬がくしゃみを姿は、一時的なものであれば可愛らしいと感じるかもしません。
しかし、そのくしゃみが長く続くと心配になってしまいますよね。
ヒトもそうですが、くしゃみは意外と体力を使うものなので、頻発すると疲れてしまいます。
では、犬はどんな時にくしゃみをするのでしょうか。くしゃみが何らかの疾患のサインになることはあるのでしょうか。
本記事では、犬のくしゃみについて獣医師が詳しく解説していきます。
この記事の目次
そもそもくしゃみって何?
一般的にくしゃみとは、「激しい呼気とともに鼻腔の異物や分泌物を体外に排出しようとして起こる、呼吸器の反射的な反応」のことです。
一回から数回連続することもあり、間欠性や偶発性のくしゃみは正常ですが、持続性や反復性のくしゃみは異常とされます。
最近愛犬がよくくしゃみをしているな、と思ったら、かかりつけの獣医師さんに相談してみてください。
くしゃみが見られた時に動物病院で聞かれること
なぜ愛犬がくしゃみをしているのかを診断するためには、問診も重要です。
次のようなポイントを抑えておくと、動物病院での診断がスムーズになります。
- いつから: 経過の把握、急性か慢性かの判断など
- くしゃみのタイミング: 食後、散歩後、安静時など
- 鼻汁の有無: 鼻汁の性状(色、粘稠性など)
- 鼻出血の有無: 鼻腔内腫瘍かどうかの判断、真菌性鼻炎、外傷などの鑑別
犬のくしゃみで考えられる疾患
くしゃみは呼吸器、特に鼻腔に異常がある場合に見られる徴候です。
どんな疾患が原因となってくしゃみが起こるのかを理解しておくと、愛犬の健康異常を正確に判断できるかもしれません。
歯周病
くしゃみを主訴に動物病院に来院する犬のほとんどは、歯周病が原因です。特に上顎の歯肉に強い炎症が起きている場合、歯周組織から鼻腔へ炎症が波及します。
また、歯周病が進行すると、口腔と鼻腔が繋がってしまう「口鼻瘻管(こうびろうかん)」になります。食後にくしゃみが多い場合は、この口鼻瘻管を疑います。
上部気道炎
ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、異物などが原因でおこる上部気道の炎症の総称です。
症状として鼻汁を伴うことが多く、特に細菌感染によって鼻汁はドロッとした膿性の鼻水になります。
鼻腔内異物
草の種などを吸引することで鼻炎が起こり、くしゃみを頻発します。
食物が鼻腔に入り込む口鼻瘻管や、先天性の口蓋裂による鼻炎も、広い意味で鼻腔内異物によるものです。
また鼻腔内異物による鼻炎は難治性で再発性であり、通常の鼻炎の治療に反応しないようであれば小さな異物がないか、内視鏡による精密検査を行います。さらに、過度のくしゃみでは鼻出血を伴うこともあり、発見した時に驚く方も多くいます。
鼻腔内腫瘍
鼻腔内に発生する腫瘍の発生率は犬で約1%と低いですが、そのほとんどが悪性です。
犬での鼻腔内腫瘍の発生は、長頭種(マズルが長い)の方が短頭種(パグやペキニーズなど)よりも多い傾向にあります。
また、発生する腫瘍は腺癌が多いですが、他にも扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ腫などがあります。腫瘍の初期の症状は軽い鼻炎と似ているため、深刻さに気付けない場合も多いです。
進行すると腫瘍が骨組織を破壊し、顔面の変形や鼻出血が見られます。
犬に花粉症はあるのか
春になると飼い主さんからよく聞かれる質問が、「犬に花粉症はあるのか」です。
結論から言うと、犬にも花粉症はあります。ただし、症状もヒトの花粉症と似ていますが、ヒトとは反応する花粉の種類が異なる場合があるので、そこは検査をしてみないとわかりません。
また、春先にくしゃみをしているからと言って、すべてが花粉症という訳ではありません。
愛犬に異常が認められた際には、自己判断ではなく一度動物病院を受診してください。
犬にくしゃみが見られたら注意すること
判断が難しい徴候
くしゃみは、生理的で問題ないものなのか、病気による異常なのかの判断が難しい徴候の一つです。
腫瘍初期に見られるくしゃみなどは、検査を行っても正常であることも多いため、経過観察をしながら症状の悪化が見られた場合にすぐに対応することが必要です。
動画を撮影しておくと診察しやすい
どのくらいの時間くしゃみが続いているのか、どんな様子なのかを口頭で完璧に説明することは困難です。
そこで有効になるのは、動画の撮影です。
どんな症状であれ、愛犬に異常を感じたときにはとりあえず動画を撮影しておく癖をつけておくといいでしょう。
「逆くしゃみ」という症状もある
「くしゃみ」をインターネットなどで検索する際、「逆くしゃみ」という単語がヒットすることがあります。
逆くしゃみは、鼻咽頭の刺激によって起こる、苦しげな発作性の反応です。散歩中など、普段の生活の中で突然生じ、鼻をブーブー、ズーズーと鳴らすように呼気と吸気を繰り返すことが特徴です。すぐに正常に戻りますし、逆くしゃみには治療も必要ないので安心してください。
ただし、原因は完全には明らかになっていませんし、日常における確実な予防法も確立されていないため、最初に遭遇した時にはかなり驚かれると思います。
また、一見逆くしゃみのようでも、時間が経っても治まらない場合には獣医師に相談してください。
まとめ
くしゃみは、犬の日常生活の中でも遭遇しやすい症状の一つです。またヒトの場合、くしゃみという症状に注意が向けられることは少なく、愛犬がくしゃみをしていても静観してしまうケースも多くあります。
動物病院受診を見極めることも難しいとは思いますが、気になることがあれば気軽にご相談ください。