「うちの猫は高齢でも、食欲もあるし、元気いっぱいだから健康」だと思っていませんか?
しかし、あまりに食欲旺盛なシニア猫は、もしかしたら「甲状腺機能亢進症」かもしれません。
食欲があると元気に見えるため、病気とは思わない飼い主さんも多いようです。
今回の記事では、猫の甲状腺機能亢進症について詳しく解説します。
少しでも心配な飼い主さんも、うちは大丈夫という飼い主さんも、一度動物病院を受診してくださいね。
この記事の目次
猫の甲状腺機能亢進症とは
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺の機能が何らかの原因で活発になり、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
甲状腺ホルモンとは
甲状腺ホルモンは、代謝を活発にする働きがあります。そのため、これが過剰に分泌されると、エネルギー消費が多くなりすぎてしまいます。
いつも体の中がフル回転しているような状況なので、全身の器官に影響が及びます。初期症状は元気に見えるため、病気だと気づきにくいのが特徴です。
多くの場合、「腺腫」という良性腫瘍によって甲状腺が肥大しますが、悪性腫瘍が原因になる場合も稀にあります。
甲状腺の場所
甲状腺は、猫の喉にある「甲状軟骨」の下に左右にひとつずつある小さな組織で、人でいう喉仏に該当します。
猫の甲状腺機能亢進症の原因
原因ははっきりとはわかっていません。食事、環境(化学物質など)、地域的な要因、遺伝などさまざまな説があります。
甲状腺機能亢進症を発症しやすいのは7歳以上のシニア猫で、性別は関係ありません。
シニアだけど元気いっぱいの猫は要注意!
猫が高齢と言われるのは、およそ7歳頃からです。
一般的に、高齢になれば活動量や食事量は少しずつ減ってきます。
しかし、中には食欲旺盛で活動的なシニア猫がいます。本当に元気ならいいのですが、中には甲状腺機能亢進症になっている可能性もあるのです。
甲状腺機能亢進症の症状
次のような症状があるシニア猫は、甲状腺機能亢進症かもしれません。動物病院を受診しましょう。
- たくさん食べているのに、体重が落ちる
- 食欲旺盛で、すぐにごはんを欲しがる
- 落ち着きがなくなり、じっとしていられない。攻撃的になる。
- 夜中でも大きな声で鳴きわめく
- 水をたくさん飲み、尿量も増加する
- 下痢や嘔吐など、消化器に症状が出る
- 被毛のパサつき、抜け毛が増える
- 心臓の活動が活発になり、鼓動が早くなる
ただし、甲状腺機能亢進症になれば、どのシニア猫も食欲旺盛で活発になるわけではありません。食欲低下や元気がない猫でも、診察を受けたら甲状腺機能亢進症だったという例も多く報告されています。
甲状腺機能亢進症を見逃してしまう原因
1. 年のせいだと思ってしまう
食欲は元気のバロメーターでもあるため、食べているから大丈夫と思いがちです。活動的になればなおさらでしょう。
そして活発に動けば、体重が減って当然と思うのも無理はありません。
また、落ち着きがない、攻撃的になるなど行動の変化や毛のパサツキなどは、「年齢によるもの」と思い込んでしまいます。
下痢や嘔吐も、「高齢だから消化能力が低下している」で済ませてしまうので注意が必要です。
2. 動物病院が苦手
動物病院が苦手な猫は多く、受診するだけでも大変です。
移動しただけで体調不良になってしまう子もいます。連れて行くのも一苦労というシニア猫もいるでしょう。
そのため、ちょっと変だなと思っても、「病院に行くほどではない。元気そうだからいいかな」と受診をためらってしまいます。
甲状腺機能亢進症を早期発見するために
甲状腺機能亢進症などの病気があるかを確認するためには、動物病院の受診が大切です。
また、7歳を過ぎて高齢になったら何も症状がなくても、半年に1度程度は健康診断をおすすめします。
病気の早期発見は非常に重要です。悪化してから行くと、治療に時間も費用も掛かってしまいます。
動物病院が苦手な猫には、次のような対策をしてあげましょう。
- キャリーバッグに猫用のフェロモン剤を付ける。
- 外が見えないようカバーをかける。
- 猫とほかの動物の待合室を別にしている動物病院や、猫専門の動物病院に連れて行く。
- どうしても連れて行くのがダメな場合は、往診専門の獣医さんにお願いする。
甲状腺機能亢進症の治療
甲状腺ホルモンの過剰な分泌をおだやかにするため、薬を飲みます。薬は一生涯飲む必要があります。
療法食が処方される場合も多いようです。
薬を飲んでもあまり改善しない場合、甲状腺の切除手術を行う場合もあります。切除した場合は、甲状腺ホルモンを補充する必要があります。
ただし、あまりに高齢な猫の場合、手術が困難なケースもあるようです。
まとめ
猫の甲状腺機能亢進症は、シニア猫に多い病気です。初期は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によって活動的になります。食欲が増し、落ち着きがなくなる猫が多いようです。
中には急に攻撃的になる子もいます。体重減少や毛のパサつき、嘔吐や下痢もありますが、「高齢だから仕方ない」と片付けがちです。
「高齢だから」の影には、甲状腺機能亢進症のような病気が隠れている可能性もあると考え、「以前と何かが違う」と思ったら動物病院を受診しましょう。
大切な愛猫が元気で長生きできるように、定期的な健康診断おすすめします。