猫が毛布や絨毯を噛んだり吸ったりしている様子を見たことはあるでしょうか。一見、じゃれているようで非常に可愛らしいこの行動ですが、もしかするとそれは「ウールサッキング」と呼ばれる問題行動の一つかもしれません。
今回は、このウールサッキングについて解説します。
この記事の目次
猫のウールサッキングとは
ウールは「羊毛」、サッキングは「吸うこと」を意味します。つまり、猫のウールサッキングとは、羊毛を吸ったり、噛んだり、時には食べてしまう行動を指します。
ウールとはいうものの、決して羊毛に限らず、ビニールや紙、段ボール、ゴムなどを口にすることもウールサッキングといいます。
猫が何かを吸ったり噛んだりする行為は比較的よく見られるものですが、それが過度になると「常同障害」の一つとして捉えられる場合があります。
常同障害とは・・・
不安や欲求不満などのストレスが原因で、病的なまでに一つの行動を繰り返す状態を指します。猫の場合、ウールサッキングの他にも、毛繕いし続けたり、尻尾を追いかけ続けるなどの症状がみられます。
誤食とは違うの?
猫が異物を食べてしまうことをよく「誤食」といいますが、ウールサッキングと異物の誤食は別のものです。誤食は、対象物を食べ物だと思い込んで誤って食べてしまうことを指します。
一方、ウールサッキングは食べ物とは関係なく異物を口にするという点が特徴です。自らの意思で食べてしまう以上、ウールサッキングをやめさせるには、原因を取り除く必要があります。
ウールサッキングの原因とは
猫がウールサッキングをする明確な原因はわかっていませんが、遺伝的な要因やストレスを抱えている猫はウールサッキングを起こしやすいと考えられています。
猫は繊細でストレスを感じやすい動物です。ストレスの原因はさまざまですが、主な原因として以下が挙げられます。
- 環境の変化
- 運動不足
- スキンシップ不足
- 騒音
- 多頭飼育
また、離乳が早かったり、母猫と過ごす時間が短かった猫も、ウールサッキングすることが多いとされています。
どんな猫に起こりやすい?
ウールサッキングは一般的に、年齢や品種に関係なく、どんな猫にも起こりうる行動です。
その中でも特に、生後8ヶ月以内の子猫はウールサッキングをしてしまう傾向にあるといわれています。また、以下の品種に起こりやすいと考えられています。
- シャム
- バーマン
- バーミーズ
- これらのミックス
子猫を飼っていたり、上記の猫種を飼っている飼い主さんは、猫の行動に注意してあげるようにしてください。
ウールサッキングが引き起こす危険性
ウールサッキングを頻繁に行い、毛糸などの繊維を食べてしまうと、胃や腸に詰まり、腸閉塞を引き起こす恐れがあります。腸閉塞は食欲不振や便秘、嘔吐などの症状を引き起こし、最悪の場合、命に関わることも。
また、ビニールなどを摂食すると、喉に詰まって呼吸困難に陥ることがあり、摂取した物が排泄されずに胃や腸に残ると、場合によっては外科的手術が必要となることもあります。
ウールサッキングは自発的な行動であるため、原因を取り除かない限り、何度も摂食を繰り返してしまう点も危険性の一つといえます。
ウールサッキングを防ぐための対策
ウールサッキングをやめさせるには、原因を突き止めることが最も重要な解決策です。具体的な対策を見ていきましょう。
適度なスキンシップをとる
家を留守にする時間が長いなど、飼い主さんとのスキンシップ不足は猫を不安にさせてしまいます。ふれあう時間を作ってあげることで、ストレスを緩和させてあげましょう。
ただし、過度なスキンシップがストレスとなる場合もあります。猫の性格に合わせて様子を見ながら、適切な距離感で接してあげてください。
居住環境を見直す
居住環境自体がストレスの原因の可能性もあります。食事の種類や量は適切か、トイレは常に清潔か、同居猫との相性が悪くないかなど、改めて環境を見直してみましょう。
また、運動不足の場合は、キャットタワーやキャットウォークなどを設置して、好きな時に運動できるようにしてあげましょう。
布団や服を隠す
根本的な解決には上記のようなストレスの軽減が重要です。しかし、猫が噛んでしまう布団やビニールなどを手の届かない場所へ隠すことでも、物理的なウールサッキング対策をすることができます。
ゴムやビニール、段ボールなど、噛む対象になりやすい物を部屋に出しっぱなしにしておくのではなく、猫の手が届かないところにしまいましょう。
叱らない
ウールサッキングは、猫がストレスや不安を抱えているときに起こりやすい行動とされています。そのため、叱ったり罰を与えたりすることは、かえってストレスを増大させ、症状を悪化させる恐れがあります。
もし食べてしまったら動物病院へ
飼い主さんがウールサッキングに気づくときは、布団や服が猫に噛まれてボロボロになってしまったり、うんちにビニール類を確認した時ではないでしょうか。
猫が異物を食べている可能性がある時は、体調の変化を注意深く観察しましょう。
もし、猫が食欲不振であったり、お腹が膨らんできていたり、うんちに異常が見られた場合、すでに何度も摂食している可能性が高いため、早急に動物病院を受診することをおすすめします。
ウールサッキングは一生の付き合い
ウールサッキングには速やかに治せる薬や治療法がありません。ストレスを極力取り除くなどして、少しずつ行動が改善するように対策してあげましょう。また、一時的に改善されたとしても、再発する可能性が高い行動でもあります。
引っ越しや新しい動物を迎えるなど、事前に猫にストレスを与えてしまう可能性があることがわかる場合は、猫のストレスが最小限になるよう工夫してあげてください。併せて、あらかじめ布団やビニール類などウールサッキングの対象になりやすい物は隠しておきましょう。
まとめ
今回は、猫のウールサッキングについてご紹介しました。
常同障害の一つであるウールサッキングの原因は、環境の変化や運動不足、飼い主とのスキンシップ不足など、環境や心の状態に起因することがしばしばあります。猫のストレスや欲求不満を解消することで、予防や改善が期待できる可能性があります。
常日頃から猫の様子を観察し、変わった様子がないか、環境の変化などでストレスを感じていないかなどに注目しましょう。