普段愛犬と遊んでいる中で、「せっかくおもちゃを買ったのに遊んでくれない」、「遊びに誘っているのに犬が乗り気にならない」なんてこと、ありませんか?もしかしたら、その遊び方が愛犬の好みに合っていないのかもしれません。
太古の昔から、野生の犬は狩猟によってエサを獲得しています。家庭犬になった犬たちにもその本能が残っており、おもちゃ遊びなどで狩猟本能を満たしています。
犬種の歴史や犬の性格などから、強く出る本能とあまり残っていない本能があり、その傾向は犬によって様々です。今回はそんな狩猟本能を5つのタイプに分け、ご自身の愛犬はどんな遊び方が好きなのか探っていきましょう。
この記事の目次
犬の狩猟本能とは
まずは、野生の犬が狩りをする時の一連の行動を見ていきましょう。
探す → 追いかける → 捕まえる → 安全な場所へ運ぶ → 食べる
※狩猟本能の定義は諸説あります。ここではわかりやすくするために、一部割愛しています。
このように大まかに5つの行動パターンに分けることが出来ます。
愛犬はどのパターンが強く残っているか、またどういった遊びが向いているのかチェックしてみてください。
1. 「探す」タイプ
狩猟本能の「探す」が強く残っているタイプの犬で、嗅覚を使い、獲物を見つけることが大好きです。
「探す」タイプの特徴
- 散歩の間、よく匂いを嗅いでいる
- おもちゃやボールを投げてもあまり興味を示さない
「探す」タイプが向いている遊び方
- おやつ探しゲーム
紙コップの下におやつを隠して探す
タオルを山盛りにし、その中におやつを隠して探す - ノーズワーク
「探す」タイプにオススメの遊び方
かくれんぼ
- 犬に「マテ」をさせておいて、飼い主が隠れます。「マテ」が出来ない犬の場合は他の人に犬を預けて下さい。
- 犬の名前を呼んで飼い主を探させます。犬が飼い主を見つけたら「見つかったー!」と大喜びしてあげて下さい。ご褒美におやつをあげるのも良いでしょう。
名前を呼ばれて飼い主の元に行くという行動は、呼び戻しの練習(「オイデ」、「コイ」)の応用にもなります。
「探す」タイプの遊びの注意点
基本的におやつを使った遊びになるので、太り過ぎに注意が必要です。
普段食べているフードで遊べる子であれば、一日に食べるフードを量っておき、その中からおやつに使う分を取り出しましょう。
特別なおやつでないと遊ばない場合は、なるべく低カロリーなおやつを選んで下さい。
2. 「追いかける」タイプ
狩猟本能の「追いかける」が強く残っているタイプの犬です。
逃げる獲物を追いかけることに喜びを感じ、元々猟犬として活動していた犬種に多い傾向があります。
「追いかける」タイプの特徴
- おもちゃやボールを追いかけるのが好き
- おもちゃなどを追いかけるだけで持ってこないこともある
- 自転車やバイク、走っている人などを追いかけようとする
「追いかける」タイプの遊び方
- 引っ張りっこ遊び
- 犬じゃらし
- アジリティ
追いかけることが好きな子の場合、動くこと全般が大好きな傾向があります。
「追いかける」タイプのオススメの遊び方
おにごっこ
おにごっこの鬼役は毎回犬が担当します。
- 犬が飼い主を見ていないときに名前または「オイデ(コイ)」と呼び、犬と目が合ったら逃げます。
- 追いついてきたらおやつをあげるか、じゃれ合って遊びます。
- 慣れてきたら、犬が近づいて来た時に犬の進行方向とは逆に逃げます。これを何回か繰り返していきます。
飼い主の向かう方向へついて行くという行動は、「リーダーウォーク」の応用にもなります。庭やドッグランなど広いところでやると、飼い主自身の運動にもなりますね。
「追いかける」タイプの遊びの注意点
犬のテンションが上がりやすく、 興奮しすぎてしまう場合があります。
その場合、先程紹介した「ノーズワークマット」を使ったり、ガムなどの長く噛めるタイプのおやつを与えたりして、クールダウンしましょう。落ち着いてきたら、また遊びを再開しても良いです。興奮して飼い主の手や服を咬むようなことがあれば、遊びは終了し、犬を無視して下さい。
また、「追いかける」タイプの子は走るのが好きで夢中になり、膝や股関節を痛める恐れがあります。室内で遊ぶ場合は、床がカーペットやクッションフロアの場所にし、フローリングの部屋の場合は犬用の滑り防止ワックスを塗るなど対策をしましょう。
3. 「捕まえる」タイプ
狩猟本能の「捕まえる」が強く残っているタイプの犬です。
追いかけていた獲物を口に入れた瞬間に喜びを感じます。
「捕まえる」タイプの特徴
- ボールやおやつのキャッチが上手
- 引っ張りっこ遊びが好き
- もってこい遊びが好き
「捕まえる」タイプの遊び方
- ボール遊び
- 引っ張りっこ遊び
- フリスビー
「捕まえる」タイプのオススメの遊び方
遊びの途中にコマンドを入れる
- ボール遊びでボールを投げる前や、引っ張りっこ遊びで犬がおもちゃを離した時などに、「オスワリ」や「フセ」のコマンドを入れてみましょう。出来たらすぐに褒めながら遊びを再開します。
- 1が上手に出来るようになったら、今度はボールやおもちゃを背中に隠します。犬が飼い主の顔を見た瞬間(アイコンタクト)に、褒めながら遊びを再開しましょう。
「捕まえる」タイプの遊びの注意点
「追いかける」タイプの遊びの注意点と同じで、興奮しすぎること、膝や股関節を痛めることに注意しましょう。
また、キャッチが好きな子の場合はおもちゃが小さすぎるとキャッチした瞬間に飲み込んでしまう可能性があります。おもちゃのサイズ選びにも注意しましょう。
4. 「運ぶ」タイプ
狩猟本能の「安全な場所へ運ぶ」が強く残っているタイプの犬で、口に物をくわえて動くことに喜びを感じます。
レトリーバー系の犬種に多い傾向があります。
「運ぶ」タイプの特徴
- 家の中でスリッパや靴などをよく持ってくる
- 持ってくるが壊すことはあまりない
- 散歩中、木の枝や石など気に入った物を持って帰りたがる
「運ぶ」タイプの遊び方
- フリスビー
- もってこい遊び
「運ぶ」タイプのオススメの遊び方
○○を持ってきて
- 持ってきて欲しいおもちゃを2つ用意します。ここでは「ボール」と「ぬいぐるみ」とします。
- 犬に「マテ」をさせてから、少し離れた場所にボールとぬいぐるみを2つ並べて置きます。気が散らないように他のおもちゃは片付けて下さい。
- 「ボールを持ってきて」とコマンドを出します。
- 犬がもし「ぬいぐるみ」を持ってきてしまった場合は、無言で受け取り、再度「ボールを持ってきて」とコマンドを出します。
犬が正しく「ボール」を持ってきた場合は、大げさに褒めましょう。 - 「ボール」という名前をある程度理解出来たようであれば、今度は「ぬいぐるみを持ってきて」とコマンドを変えます。
徐々に持ってくる物を遠くに置いてみたり、持ってくる物の数を増やしてみましょう。動くことで体を使い、物を選ぶことで頭も使う方法です。
「運ぶ」タイプの遊びの注意点
「運ぶ」タイプの子は物を運ぶのが好きなため、手当たり次第になんでもかんでも持ってきてしまうことが多いです。
おもちゃは持ってきて良いもの、それ以外はダメ、ときっちり線引をしましょう。
5. 「食べる」タイプ
狩猟本能の「食べる」が強く残っているタイプの犬ですが、ほとんどの犬は食べることが大好きです。
その中でも、「うちの子はおもちゃで遊ばない」、「無趣味な犬なんです」とおっしゃる飼い主もいらっしゃいます。ここでは、先程までの「探す」「追いかける」「捕まえる」「運ぶ」に興味がない子を「食べる」タイプとします。
「食べる」タイプの特徴
- おもちゃにあまり関心がない
- 食欲旺盛
「食べる」タイプの遊び方
- ノーズワーク
- どっちの手におやつが入ってるかな?ゲーム
- 動かすとおやつが出てくるおもちゃ
「食べる」タイプのオススメの遊び方
おやつを投げる遊び
- 犬におやつを見せ、ポイッと投げてみましょう。
- 犬がおやつを食べたら名前を呼び、犬が近くに来たら再びおやつを投げます。
- 慣れてきたら「オスワリ」をさせ「アイコンタクト」が出来たら、おやつを投げましょう。
- さらに上級を目指すのであれば、「オスワリ」または「フセ」をさせてから「マテ」とコマンドを出し、おやつを投げてから「ヨシ」と合図を出します。「ヨシ」の合図は必ずアイコンタクトが出来ている時にしましょう。
「食べる」タイプの子は普段あまり動かない傾向があるので、軽い運動になります。また、おやつを追いかけることで「追いかける」本能が刺激され、「追いかける」タイプの遊びをするようになる可能性があります。
※おやつを投げる遊びは、拾い食いの癖を直したい犬や、「エサのお皿と人間の手以外からは食べ物をあげない」とルールを決めている飼い主にはオススメしていません。
「食べる」タイプの注意
「探す」タイプの犬と同様で、遊びにおやつを使うため太り過ぎには注意しましょう。
それぞれのタイプについて
ここまで5つの狩猟本能をタイプ別に解説してきましたが、複数のタイプに当てはまる子も多くいます。
該当するタイプの遊びをいろいろ試しても楽しめますが、「一番当てはまるタイプはどれだろう」という視点で見てあげると、愛犬の興味や関心、行動パターンなどが見えてくるので、今後のしつけやトレーニングに役立ちます。
また、普段はタイプに合った遊びをし、たまに違ったタイプの遊びをすることで、愛犬の新たな一面を見ることが出来るかもしれません。
オススメの遊び方の共通点
5つのタイプ全てにオススメの遊び方をご紹介しましたが、その共通点にお気づきでしょうか。それは「飼い主に注目しやすい遊び」です。
ボール投げをしている犬を見ていると、ボールにばかり集中してしまい飼い主の方に意識が行かず、人がまるで「自動ボール投げ機」のようになってしまっていることが多いように思います。
おやつをあげる場合も同様で、犬がおやつにばかり集中して、飼い主が「自動給餌器」のようになってしまっていることはありませんか。
「飼い主に注目しやすい遊び」 を取り入れてあげることで、飼い主に対する犬の意識を「自動〇〇機」から「おもしろい遊びを提供してくれる人」へ変更できれば、飼い主への注目度も上がり、しつけやトレーニングの質も向上します。
ぜひ、犬からワクワクされる飼い主を目指して下さいね。
まとめ
家庭犬は人間と生活することによって、犬らしさをある程度制限して生きています。例えば、「トイレを決まった場所でする」「散歩の時に飼い主について歩く」「無駄に吠えない」などが、それに当たります。
狩猟本能を刺激してあげる遊びをすることで、本来の犬らしさを取り戻し、ストレスを解消させてあげることが大切です。そして、「人間と暮らすため犬らしさを制限する」ことと「本来の犬らしさ」のバランスをうまく取り、家庭犬のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めてあげましょう。