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日本固有の猫?対馬と西表島に生息する2種類のヤマネコをご紹介!

2023.03.19
日本固有の猫?対馬と西表島に生息する2種類のヤマネコをご紹介!

「野生の猫」と聞くと、どんな猫を想像しますか?ライオンやトラのようなネコ科の大型動物を思い浮かべるでしょうか。もしかしたら野良猫のことを想像する人もいるかもしれません。

日本においては、ライオンなどのネコ科の大型動物は野生に生息しておらず、ネコ科の動物といえば私達の身近にいるイエネコが主流です。しかし、日本でも限られた場所には野生の猫が存在しています。

そこで今回は、日本に生息する野生の猫ヤマネコについて解説していきます。

この記事の目次

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イエネコとヤマネコは違う生き物

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イエネコもヤマネコも似たような見た目をしていますが、生物学的には異なる種として扱われます。これは、イエネコの祖先は砂漠に生息していたリビアヤマネコであるのに対し、ヤマネコはベンガルヤマネコなどを祖先にもつためです。

イエネコは人間の手によって本来の生息地から連れてこられた外来種であり、世界の「侵略的外来種ワースト100」にも選ばれています。一方で、日本にはツシマヤマネコイリオモテヤマネコの2種類のヤマネコが生息していますが、これらは日本の在来種として扱われています。

また、性格にも違いがあり、イエネコは人に懐き、スキンシップを取ったり甘えたりすることもありますが、ヤマネコは警戒心が強く、人に懐くことはほとんどありません

ツシマヤマネコとは

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ツシマヤマネコは、長崎県北部に位置する対馬(つしま)のみに生息する日本固有のヤマネコです。島の住民からは「トラヤマ」などと呼ばれています。

ツシマヤマネコの歴史

ツシマヤマネコの記載があるもっとも古い文献は江戸時代に書かれたものだと考えられ、「山ねこ」と記されていました。明治の末頃には生息数も多く、毛皮の取引や食用にしていたという話も残っていますが、乱獲や外から連れてこられた猟犬の影響で徐々に個体数が減っていきました。

1971年に国の天然記念物に、1994年には種の保存法に基づき国内希少野生動植物種に指定されました。また、環境省のレッドリストでは、もっとも絶滅の危険性が高い「絶滅危惧ⅠA類」に指定されています。

ツシマヤマネコの特徴

体重は3〜5kg、体長は70〜80cm程度と、イエネコと同じくらいです。
耳の後ろの白い斑点が特徴で、胴長短足で、太くて長い尻尾をもちます。

性格は個体差がありますが、警戒心が強く、凶暴な一面もあります。基本的には日没から明け方にかけて活動しますが、ひと気のない場所であれば日中でも顔を見せることもあります。

ツシマヤマネコの現状

1960年代に行われた調査では、推定生息数が250〜300頭と報告されていましたが、生息に適した環境の減少や交通事故、感染症、犬による咬傷などで生息数が減少しており、環境省によると現在は100頭弱と推定されています。

ツシマヤマネコに会いに行こう!

飼育下繁殖の実施や飼育分散を目的に、いくつかの動物園でツシマヤマネコが飼育されています。時期によっては非公開になっている場合もありますので、事前によく調べてから行くようにしましょう。

  • 那須どうぶつ王国(栃木県)
  • 井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)
  • よこはま動物園ズーラシア(神奈川県横浜市)
  • 富山市ファミリーパーク(富山県富山市)
  • 東山動植物園(愛知県名古屋市)
  • 京都市動物園(京都府京都市)
  • 福岡市動物園(福岡県福岡市)
  • 九十九島動植物園(長崎県佐世保市)
  • 対馬野生生物保護センター(長崎県対馬市)
  • ツシマヤマネコ野生順化ステーション(長崎県対馬市)

環境省ではツシマヤマネコの保護を目的に、飼育下による繁殖に取り組んでいます。

令和4年-5年ツシマヤマネコ飼育下繁殖計画の決定について
https://kyushu.env.go.jp/press_00018.html

イリオモテヤマネコとは

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イリオモテヤマネコは、沖縄県の八重山列島に位置する西表島(いりおもてじま)のみに生息する日本固有のヤマネコです。

イリオモテヤマネコの歴史

西表島には以前から野生のネコがいることが知られていましたが、飼い猫が野生化したものだと考えられていました。野生のネコの噂を聞きつけた動物作家が他の研究者らと協力して調査した結果、1965年にイエネコとは異なる種であることが判明し、その発見は全国的に知られるようになりました。

1972年に国の天然記念物に、1977年には特別天然記念物に指定されました。また、ツシマヤマネコと同様に環境省のレッドリストにおいて、もっとも絶滅の危険性が高い「絶滅危惧ⅠA類」に指定されています。

イリオモテヤマネコの特徴

体重は3〜5kg、体長は50〜60cm程度です。ツシマヤマネコと同じく耳の後ろに白い斑点があり、胴長短足で、太くて長い尻尾をもちます。また、目の周りには白い模様があります。

イリオモテヤマネコは木登りが得意で、水の中に潜ってエサを捕ることもあります。また、西表島にはイリオモテヤマネコと競合するような肉食哺乳類が生息しておらず、居住エリアやエサなどの棲み分けが必要ないため、カエルや昆虫、カニなどさまざまな動物を捕食します

イリオモテヤマネコの現状

1974年以降、10年おきを目処に生息数の調査が行われており、現在は100頭ほどが生息していると推測されています。生息数は減少傾向にあり、その要因としては、交通事故の増加や好適な生息環境の減少などが考えられます。そのため、西表野生生物保護センターのホームページでは、運転注意マップや連続無事故日数を掲示して注意喚起を行っています。

さらに、西表島は2021年に世界自然遺産に登録されました。観光客の増加も見込まれるため、どのように自然を守りつつ産業を発展させていくのかが課題となっています。

会いに行ける動物園

ツシマヤマネコとは異なり、イリオモテヤマネコの生態を展示している動物園はありません。西表島でも生体を展示している施設はなく、「運が良ければ道端で出会える可能性がある」程度です。

まとめ

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日本固有の野生猫であるツシマヤマネコとイリオモテヤマネコは、絶滅の危機に直面しています。

私たちの普段の生活にとってはあまり影響がないと考えるかもしれませんが、種の絶滅により他のたくさんの生態系に影響を与えることは間違いありません。

まずは、絶滅しかけている動物が身近にいること、それらを必死で守っている人たちがいることを知り、広めていくことから始めてみてはいかがでしょうか。

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