ことわざや慣用句には、その国や言語の文化が強く反映されています。同じ意味でも、使われる単語が異なることがあり、外国語のことわざなどは非常に興味深く感じられます。
また、外国の犬の歴史や文化は日本と異なるため、ことわざなどに登場する犬の扱いから、その国が犬をどのように見ているのか、理解ができるかもしれません。
今回は、犬が登場する外国語のことわざや慣用句を紹介いたします。
この記事の目次
英語のことわざ
犬と人との関わりが深いイギリスや犬の飼育頭数が世界一のアメリカ。そんな英語圏の犬に関することわざや慣用句を見ていきましょう。
①Let sleeping dogs lie.
和訳:寝ている犬は、寝かせておけ
意味は「余計なことをしてトラブルを起こすものではない」ということです。眠っている犬を起こすと、犬が怒ったり、吠えたりするかもしれないので、わざわざ起こす必要はありません。日本語では「寝た子を起こすな」と近い意味になります。
②Two dogs fight for a bone and the third runs away with it.
和訳:2頭の犬が1本の骨をめぐって戦っていると、第3の犬がそれを持ち逃げする
日本語でも「漁夫の利」という言葉があり、他人の争いごとに乗じて、何の苦もなく利益を得ることを表します。
③You can’t teach an old dog new tricks.
和訳:老犬に新しい技を教えることはできない
意味は「人が年をとってから新しいことを学ぶのが難しい」ことを表します。日本語にも「老い木は曲がらぬ」や「矯めるなら若木のうち」ということわざがあり、直すべきところは柔軟性のある若いうちに直さないと、年をとってからでは直らないという意味になります。
④Barking dogs seldom bite.
和訳:吠える犬はめったに噛まない
意味は「人を脅したり、むやみに威張ったりする者は、大して実力を持っておらず、たいていは何もできないこと」を表します。日本語にも「弱い犬ほどよく吠える」、「吠える犬は噛みつかぬ」など、似たようなことわざがあります。
⑤Bite the hands that feeds one.
和訳:食べ物を与えてくれる人の手を咬む
意味は「世話になった者が恩返しをせずに害を加えること」を表しています。日本語では「飼い犬に手を噛まれる」、「恩を仇で返す」などが当てはまります。
⑥Better be the head of a dog than the tail of a lion.
和訳:ライオンの尻尾になるより、犬の頭になった方がよい
意味は「大きな集団の末端にいるよりも、小さな集団でもリーダーである方が良い」ということを表しています。日本語にも「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」という言葉があり、動物は違いますが、同じ意味になります。
フランス語のことわざ
日本でも人気のある犬種のプードルやフレンチ・ブルドッグの原産国であるフランス。そんなフランスのことわざや慣用句で犬はどのように表現されているのでしょうか。
①Tel chien, tel maître.
和訳:この犬にして、この主人あり
“chien”は犬を表します。日本語にも「犬は飼い主に似る」、「この親にして、この子あり」などの言葉があり、非常に類似しています。
②S’entendre comme chien et chat
和訳:犬と猫のような仲
“chat”は猫を意味し、「仲の悪いもののたとえ」として使われます。日本語でいうところの「犬猿の仲」です。犬と猫が仲良く同居しているご家庭では、違和感があるかもしれませんね。
③Arriver comme un chien dans un jeu de quilles
和訳:ボーリングの最中に犬のようにやって来る
これは「間の悪い時にやって来る」という意味の言葉です。”jeu de quilles”は「ボーリング」を意味し、ボーリングをやっている時にボールを追いかけたがる犬が現れて、レーンの上を走り回りゲームを邪魔するという表現になります。
④Comme Saint-Roch et son chien
和訳:聖ロクスと彼の犬のように
意味は「切り離せない2人」を表します。「聖ロクス」は14世紀頃ペスト患者の看護に尽力したカトリック教会の聖人です。彼を描いた絵にはパンを加えた犬も一緒に描かれています。その犬が怪我をしたロクスに毎日パンを運び、傷を治したという伝説があり、いつも一緒にいるイメージから、この表現が使われています。
⑤Chien qui aboie ne mord pas.
和訳:吠える犬は噛まない
英語や日本語にも同じような表現がありましたが、こちらも意味は似ていて「何も実行せずに大きな口を叩く人のこと」を表します。
「吠える犬は噛まない」という言葉は多くの言語で使われており、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語などでも使われています。
中国語のことわざ
欧米とアジアでは犬との付き合い方の歴史が大きく異なります。アジアの大国である中国では、どのような言葉に犬が使われているのでしょうか。
①狗嘴吐不出象牙
和訳:犬の口から象牙は出てこない
中国語で犬は「狗」と書きます。このことわざは、「ろくでもない人が、立派なことを言えるはずがない」という意味を表します。
②狐朋狗友
和訳:キツネやイヌの友人
意味は「酒食遊楽にふける、品行の悪い友達や悪友」を表します。
③狗尾続貂(くびぞくちょう)
和訳:犬のしっぽが貂(テン)に続く
意味は「劣った者が優れた者のあとに続くこと」または「つまらない者が、権力で次々と高官になること」を表します。
「狗尾」は犬の尾、「貂」はイタチ科の動物であるテンのことで、かつての中国の高官は冠にテンの尾を付けて飾っていました。しかし、皇帝が一族の多くを高官に任命したため、テンの尾が足りなくなり、犬の尾で代用するようになったという話から、このことわざが生まれました。
まとめ
「吠える犬は噛まない」という言葉が多くの言語で、同じような意味で使われていることは、非常に興味深い結果です。
犬は人間との関係が非常に長く深い動物であるため、多くの国でことわざや慣用句に登場します。
今回紹介できたのはごく一部ですので、興味がある方はぜひご自身でも調べてみてください。