突然、愛猫が痙攣を起こしたとしたら、あなたはどうしますか?初めて見たとしたら慌てるでしょう。
発作が起きてしまったときの対応は猫も犬も同様です。犬の発作の記事で解説していますので、よろしければこちらを参照してください。
【獣医師監修】犬が突然発作を起こした!あなたならどうする?
https://cheriee.jp/dogs/22882/
では、発作が見られた際には、どのような疾患が考えられるのでしょうか。予め把握しておけば、動物病院を受診した際の検査の意味や獣医師の説明もスムーズに理解できるかもしれません。
今回は猫の発作で考えられる疾患について解説します。
この記事の目次
発作とは
発作には、意識を失ってしまう全般発作と、意識はあるけど手足が痙攣しているなどの部分発作に分けられます。本記事で取り上げるのは全般発作についてです。
てんかん発作もこれに当たり、小動物臨床では比較的多く遭遇する徴候です。
これは炎症、毒物、腫瘍などによる脳へのダメージが原因となります。
また、検査をしても原因がわからない特発性てんかんというものもありますが、猫では犬よりも特発性は少ないと言われています。
脳神経疾患
猫で見られる脳に悪さをする疾患には、ウイルスによるものと腫瘍が代表的です。
特にウイルス感染症は他の猫からの咬傷などから感染するため、屋外に出る子で多く見られます。
猫伝染性腹膜炎
【症状】
発熱、元気消失、食欲低下、体重減少。滲出型では腹水や胸水貯留による腹部膨満、呼吸困難。非滲出型では黄疸、前ぶどう膜炎、脈絡網膜炎、発作、後肢麻痺など。
【原因】
猫伝染性腹膜炎ウイルスの感染。ウイルスは糞便や唾液を介した経口感染によって伝播される。
【備考】
現在、完全に治癒させるような治療法はない。感染力も強いので、多頭飼育の際には同居猫間の感染に注意が必要。ウイルスはクロルヘキシジンや家庭用漂白剤で不活化されるので環境の消毒はこまめに行う。
猫白血病ウイルス感染症
【症状】
発熱、元気消失、食欲不振、体重減少、貧血、口内炎、下痢、嘔吐など。白血病やリンパ腫の発生に深く関与しており、それによって神経症状が見られることもある。
【原因】
猫白血病ウイルス(FeLV)の感染。ウイルスは感染猫の唾液や母乳に含まれ、ケンカの際の咬傷や母猫から伝播する。
【備考】
効果的な治療法はなく、一度感染すると生涯ウイルスと付き合い続けなくてはならなくなる。ワクチンがあるので、屋外に行く子には接種を検討する。
猫免疫不全ウイルス感染症
【症状】
発熱、下痢、食欲不振から始まり、進行すると貧血、歯肉炎、口内炎、咳、鼻汁、結膜炎、易感染性(感染症などにかかりやすくなる)、体重減少、神経症状などを呈するようになる。
【原因】
猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染による。ウイルスは唾液中に含まれ、主に咬傷によって伝播する。交尾による感染や母子感染も報告されている。
【備考】
先住猫がいる状態で新しい子を迎えるときは、予めFIVを持っていないかしっかり検査する。できるだけ室内飼育にすれば感染を予防することができる。
脳腫瘍
【症状】
発作、痙攣、斜頚(ずっと首を傾けている状態)、眼振、旋回、性格の変化、トイレの失敗など。脳のどの部分に腫瘍が発生したかによって症状は異なる。
【原因】
髄膜腫が最も多いとされている。他にもリンパ腫、血管肉腫、乳腺癌、悪性黒色腫、移行上皮癌などの転移によっても脳腫瘍は発生する。
【備考】
初期症状では元気や食欲の低下、行動や鳴き声の変化程度しか認められない。早期発見には愛猫の行動パターンや性格の変化などをいち早く察知する必要がある。
代謝性疾患
内臓機能の異常によって体内に毒素が蓄積した結果、脳に障害を与えることもあります。猫で代表的なのは腎不全でしょう。
これらは血液検査で異常を検出することができるので、早期発見のためにも定期的な健康診断をオススメします。
腎不全/尿毒症
【症状】
多飲多尿、尿が薄くなる、食欲不振、体重減少など。慢性腎不全では進行するにつれ嘔吐、下痢、脱水、便秘、貧血、発作などの神経症状が現れる。これは体外へ排泄されるべき毒素が全身を循環することによる。
【原因】
急性腎障害は尿路結石による閉塞や、腎毒性物質(ユリ、除草剤など)の摂取などによって引き起こされる。慢性腎不全は、糸球体腎炎や腎盂腎炎などの腎疾患、高カルシウム血症、腫瘍、腎虚血などが原因となり、慢性的に腎実質の病変が進行して発症する。
【備考】
若いうちからの腎臓のケアや、シニア期には定期的な健康診断による病態の早期発見が重要となる。常に飲水できる環境を用意し、若い頃から腎臓への血流量を少なくしないなどの工夫が必要。
門脈体循環シャント
【症状】
嘔吐、下痢、子猫の発育不良など。肝性脳症による沈うつ、痙攣、発作、流涎、ふらつきなど。またアンモニアを成分とする尿路結石による血尿や頻尿。
【原因】
先天性の門脈の奇形。胆管炎などによって後天的に発症することもある。
【備考】
肝性脳症の症状は重症化しないと発現しない。若齢猫で中毒性物質の摂取などの病歴や口内炎がないにもかかわらず、間欠的な流涎が見られる際には注意。根本的な治療は外科手術となる。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、食欲増加、体重減少や肥満(インスリン依存性かによる)。尿中にケトン体が出現し、ケトアシドーシスとなると嘔吐、下痢、神経障害、昏睡など。
【原因】
膵炎やヒトのⅡ型糖尿病に相当する、いわゆるインスリン分泌能の低下によるものが多い。他にも悪性腫瘍、感染症、ストレスなどによってインスリン抵抗性となった結果、糖尿病となるケースもある。
【備考】
尿量の増加が認められた場合、まずは尿検査で比重やケトン体の有無を確認する。動物病院受診によるストレスで猫の血糖値は一時的に上昇しやすいため、フルクトサミンなどの血糖マーカーを測定することもある。
低血糖性発作
【症状】
ふらつき、震え、発作、元気消失、低体温、下痢など。
【原因】
重度の感染症、門脈体循環シャントなどの肝疾患、インスリノーマを含む悪性腫瘍など。3ヵ月齢未満の子猫では寒さや消化器疾患などで発生しやすい。
【備考】
仔猫で食欲がない場合には、砂糖水を飲ませると良い。室温が低くないかもチェックすること。
まとめ
発作は放置しても良くなることはまずありません。悪化すれば脳へのダメージは蓄積していきます。
場合によっては全身麻酔下での検査も必要となることがありますが、原因を究明して発作を抑える治療が不可欠です。
かかりつけの獣医師と連携して、しっかり治療していきましょう。