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いぬ健康

【獣医師監修】犬が突然発作を起こした!あなたならどうする?

相澤 啓介
相澤 啓介 獣医師

もしも愛犬が突然意識を失い、痙攣(けいれん)を始めたら、あなたはどうしますか?

痙攣などの発作は、脳の炎症や中毒性物質などによって引き起こされます。しかし、発作に対する正しい知識がないと、いざという時にパニックになってしまい、適切な対応ができないかもしれません。

本記事では、犬における発作の際に注意すべきことをまとめていきます。

そもそも発作って何?

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発作は、「脳灰白質神経細胞の異常な電気的放電の結果として起こる突発性の定型的な運動性、感覚性、行動、情動、記憶あるいは意識の変化を伴う一過性の脳機能障害」と定義されます。

難しく書きましたが、要するに脳の神経異常によって引き起こされる種々の神経症状のことです。

発作の分類

一般的に「発作」というと、意識を失う「てんかん発作」を思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、発作には感覚性の変化や記憶の変化も含まれます。
発作は以下の4つに分類されます。

1.単純部分発作

意識は正常ですが、筋肉の痙攣や感覚異常、幻聴、視覚障害が含まれます。

2.複雑部分発作

意識障害を伴う部分発作のことです。

つまり、発作中の犬の意識は正常ではなく、飼い主の呼びかけや外からの刺激に反応しません。
一般的に見られるのは顔面痙攣、瞳孔散大、流涎(りゅうぜん;よだれ過多)、ハエ咬み行動(何もないところを噛むような行動)です。

3.全般発作

意識障害を伴う全身の筋肉における強直間代性痙攣で、通常1~3分程度で終息します。

まずは、強直性痙攣(筋肉が突っ張るように伸びる)から始まり、間代性痙攣(筋肉の収縮と弛緩を繰り返す痙攣)へと移行しますが、どちらか一方のこともあります。
てんかん発作はこれに当たります。

4.重積発作

部分発作あるいは全般発作が30分以上続く、もしくは痙攣が停止することなく2回以上の発作が続いて起こる状態です。

重積発作は脳へ大きなダメージを与えるため、できるだけ早く発作を止めなくてはなりません。

発作の裏に考えられる疾患

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発作は主に脳への障害の結果として引き起こされます。

しかし、他にも各内臓疾患や中毒性物質が原因の神経障害によっても起こります。
ここでは、発作が見られた場合に考えられる疾患をいくつか紹介します。

特発性てんかん

犬で最も一般的に見られるてんかんの型で、検査をしても発作を引き起こす原因が見つかりません。
遺伝性の可能性も考えられますが、いわゆる「原因不明」のてんかんです。

症候性てんかん

頭蓋内にてんかんを引き起こす原因が明らかにあるものです。
原因としては脳腫瘍、脳炎、血管障害、脳奇形などが挙げられます。

潜在性てんかん

症候性てんかんが疑われるが、検査を行っても明らかな異常が認められず、特発性てんかんに見えるものです。
例えば、頭部外傷や麻酔後の低酸素血症などが原因と思われる場合などがこれに当たります。

水頭症

頭蓋内に脳脊髄液が貯留する疾患で、多くは先天性です。脳は通常、頭蓋内で脳脊髄液に浮かんでいる状態ですが、この脳脊髄液が過多になると脳圧が上昇し、脳が圧迫されて神経障害を引き起こします。
チワワやトイ・プードルなど、日本でも人気の犬種によく起こるといわれています。

脳炎

ウイルス、細菌、寄生虫、真菌など種々の要因で脳炎は引き起こされます。
また、免疫介在性や遺伝性の脳炎もあります。

低カルシウム血症

血液中のカルシウム濃度が低下すると、神経線維が興奮しやすくなります。
これによって神経過敏、筋痙攣などが見られます。

低血糖

肝機能障害やインスリノーマ(インスリンを分泌する膵臓に腫瘍ができ、インスリンが分泌されすぎてしまう病気)、新生子における食欲不振などによって低血糖状態に陥った時も、発作は起こります。
糖液の投与や、給餌によって低血糖状態は解除されますが、原因を取り除く治療が必要です。

肝性脳症

門脈体循環シャントや肝不全によって、毒素であるアンモニアの解毒が行われなくなると、発作が引き起こされます。

腎不全

毒素は体外に尿素として排泄されますが、腎機能の低下によって血液中の尿毒素が高濃度になることを「尿毒症」と言います。
尿毒素は発作などの中枢神経症状や嘔吐、消化管潰瘍を誘発します。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症では元気消失や肥満の他に、痙攣発作や顔面神経麻痺といった神経症状が見られる場合があります。

各種中毒

エチレングリコールや有機リンといった物質の摂取によって、発作が誘引されます。

愛犬が発作を起こしたら飼い主はどうすれば良い?

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愛犬の突然の発作には驚かれる方も多いでしょう。

しかし、適切な診断や治療のためには落ち着いて原因を解明することが必要です。
家での習慣や発作の前の状況など、診断に有用な情報はたくさんあります。

動物病院で聞かれること

発作の原因は様々で、原因精査のために検査を行うのはもちろんですが、問診も重要となります。
以下のようなことを把握しておくと診察がスムーズに進みます。

  • 年齢、既往歴:先天性か後天性疾患かの判断、腎臓や肝臓疾患の有無
  • 発作前の行動:不安、食欲亢進または食欲減退、異常行動など
  • 前兆:発作の前の手足の痙攣、流涎(よだれ)、興奮などの有無
  • 発作中:意識の有無、筋肉の収縮/弛緩、流涎、失禁、ハエ咬み行動などの有無
  • 発作後:異常行動が見られるか
  • 発作の変化:初回以降で発作の様子に変化があるか

動画の撮影も有効

状態を把握して伝えるのが大事だとはいっても、発作中の様子などを詳細に口で説明するのは困難かもしれません。
そんな時は動画の撮影を推奨します。愛犬の苦しむ姿を撮影するのは心苦しいと思いますが、病院に情報を持っていき、早期の診断を行うためには非常に大切です。

発作中に注意すること

意識のない動物に触れることは危険です
反射的に咬みつく、引っ掻くなどの行動を取ることがあるからです。

発作中は愛犬が頭をぶつけないように角のある家具をどかす、名前などを呼びかける、動画を撮影するなどの冷静な行動が必要です。

まとめ

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突然愛犬が意識を失って発作を起こし始めたら、本当にびっくりします。

しかし、飼い主さんが発作について前もってある程度知識を持っていれば、少しは落ち着いて行動できるのではないでしょうか。
愛犬のもしもの時に備えて、正しい知識と対処方法を復習しておきましょう。

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