【獣医師監修】犬インフルエンザとは?症状や予防法を解説

2025.04.19
【獣医師監修】犬インフルエンザとは?症状や予防法を解説

毎年、寒くて乾燥する季節になると流行する感染症の一つにインフルエンザがあります。かかったことがある方もいるのではないでしょうか。

高熱や関節痛を引き起こすインフルエンザですが、ヒトだけではなく、動物にもインフルエンザがあります。ヒト以外の動物では、鳥インフルエンザや豚インフルエンザが有名です。では、犬インフルエンザという感染症があることはご存じでしょうか。

今回は犬インフルエンザについて解説していきます。

この記事の目次

犬インフルエンザとは

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犬インフルエンザは、2004年にアメリカで初めて報告された新しい感染症です。これはH3N8インフルエンザAウイルスによるものでしたが、このウイルスはもともと馬に感染するものでした。

基本的にインフルエンザウイルスは動物種間を越えての感染はしないか、感染しても発症しない、あるいは発症しても症状が非常に軽いことがほとんどです。しかしこの事例では、馬の体内でウイルスの変異が起こり、犬にも感染・発症するようになったと考えられています。

また、2018年には中国で豚に感染するタイプのインフルエンザウイルスが、2007年以降には中国や韓国で鳥に感染するタイプのインフルエンザウイルスが犬にも感染したという報告があります。これらはいずれも、他の動物に感染するインフルエンザウイルスが偶発的に犬に感染し、症状を引き起こした事例です。

現在、犬に特異的に感染するインフルエンザウイルスについての報告はありませんが、こうした他動物種に感染するインフルエンザウイルスが犬からも分離されたという論文がいくつか出ています。

日本における犬インフルエンザ

2025年3月現在、日本における犬インフルエンザ発症の報告はありません。しかし前述のように、インフルエンザウイルスは他の動物種から感染する可能性があります。

また、犬におけるインフルエンザAウイルスの感染についての論文はアジアから最も多く出版されているというデータもあるため、日本でもいつ犬インフルエンザが発生してもおかしくない状況ではあります。

犬パラインフルエンザ

犬インフルエンザとよく似た名前の感染症に、犬パラインフルエンザがあります。これはケンネルコフの原因となる代表的な疾病で、主に子犬に咳などの呼吸器症状を引き起こします。

名前は犬インフルエンザと似ていますが、原因となるウイルスが異なり、まったく別の病気です。接種している混合ワクチンの種類によっては、犬パラインフルエンザの予防が含まれているものもありますが、これによって犬インフルエンザが予防できるわけではないので注意しましょう。

感染経路

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犬インフルエンザウイルスの感染経路は、ヒトで流行するインフルエンザウイルスと同様に、飛沫感染と接触感染だと言われています。

ヒトから犬へのインフルエンザウイルスの伝播の可能性もゼロではないため、飼い主が手洗い・うがいをすることで、愛犬とウイルスの接触の機会を減らすことは感染予防に有効なのではないでしょうか。

また、野鳥や野良猫との接触にも注意した方がいいかもしれません。

症状

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犬インフルエンザは、人間の風邪と同じような症状を呈します。

  • 鼻汁
  • くしゃみ
  • 発熱(時に40℃以上)
  • 食欲不振

しかし、これらの症状は他の感染症でも見られるものであり、犬インフルエンザ特有の症状はありません。症状だけで犬インフルエンザを見分けることはできないでしょう。

治療

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犬インフルエンザに対する特効薬はないため、対症療法を行います。細菌の二次感染が起こると重症化してしまうため、抗菌薬を投与することもあります。

ヒト用の抗インフルエンザ薬は絶対に投与しない

ヒトの場合、インフルエンザの流行時期になると病院で検査を行い、インフルエンザ陽性であったなら抗インフルエンザ薬を服用します。しかし、犬ではこれらの薬の有効性は実証されておらず、安全性も試験されていません。

インターネットで検索すると、犬インフルエンザ検査キットなるものが売られていますが、この検査キットの結果を見て安易に抗インフルエンザ薬を投与することは非常に危険です。検査も治療も、絶対にかかりつけの動物病院で行いましょう。

犬インフルエンザの検査

現在、臨床的に有効とされるレベルの犬インフルエンザ検査キットはありません。馬や豚、鳥などのインフルエンザウイルスを検出するための研究用の試薬はありますが、一般的な動物病院では犬インフルエンザの検査は難しいかもしれません。

症状に合わせた治療を行い、後になってあれはインフルエンザだったかもしれないと判断されることが多いのではないでしょうか。

予防

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犬インフルエンザに対するワクチンはありません。そのため感染の予防としては、罹患動物との接触を避けることが第一となります。

これは他の感染症の予防にも当てはまりますが、他の犬と食器やおもちゃの共有を避ける、同居している他の犬や人間が咳や鼻汁などの症状を呈しているときは接触を避けるといった対策が挙げられます。

まとめ

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犬も人間と同じような病気にかかることがあります。犬は自分で手洗いやうがいなどができない分、病気になりにくい環境を飼い主が整えてあげる必要があります。

何か心配なことがあれば、お気軽に動物病院までご相談ください。

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