猫の体は、本当に柔らかいですよね。魅力的な柔らかい曲線のフォルムに、心を癒される方も多いのではないでしょうか。
実は、猫の柔らかさについて、あの有名な浮世絵師が描いた絵から学ぶことが出来ます。
この記事の目次
歌川国芳は無類の猫好きだった?
皆さんは、歌川国芳(うたがわ・くによし)という絵描きをご存知でしょうか。寛政9年11月15日(1798年1月1日)に生まれた、江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人です。
歌川国芳は無類の猫好きとしても知られているそうで、猫を描いたものが多く残されています。
歌川国芳が描いた「あるユニークな絵」から、猫特有の「体の柔軟性」の謎に迫ってみたいと思います。
猫好きの浮世絵師が描いた騙し絵《猫の当字》
“歌川国芳《猫の当字 なまず》 (1841〜1843年) 出典:Wikipedia”
猫を描いたなかでも、ユニークなアイデアで描かれているものが《猫の当字》シリーズ。
一見、無作為にぐにゃぐにゃと猫が連なっているだけのような絵ですが…。少し引いて見てみると、猫たちが「なまず」や「ふぐ」など文字の形になっています。
この《猫の当字》がおもしろいのは、「全体で文字に見えるだけでなく、一匹一匹の猫も結構ちゃんと猫っぽい!」というところ。
猫の描かれた絵としても他にあまり見ない構図で、一匹ずつ見ていくのも楽しく、見ていてなかなか飽きません。
猫の柔軟性を生かした表現?
《猫の当字》は、猫本来の魅力でもある「しなやかな動き」がとてもうまく生かされています。
こんなに思い切ったアイデアの中ですら、自由に振る舞える猫のポテンシャルには驚いてしまいます。
柔らかさの秘密は「猫の骨格」
猫の体はなぜこんなに柔らかいのでしょうか?
猫は、もともと短時間に集中して獲物を狩る動物のため、身体能力において持久力よりも瞬発力に特化してきたと言われています。
瞬発力に体の柔軟性は欠かせず、上下運動の際や、獲物に飛びつくときなどに存分に発揮されます。
俊敏な動きで獲物を狩ることや、天敵から身を守る生活に適応するため、柔軟な動きが可能な骨格に進化していったのですね。
猫の骨格には、大まかに次のような特徴があります。
鎖骨がない
猫の骨格の大きな特徴の一つは、鎖骨が小さく退化していることです。
前足は胴体の側面ではなく、お腹側についている状態で、正面から見ると極端な撫で肩のようになっています。
それに加え、肋骨が人間のように横に広がっておらず、縦に細長いつくりになっているため、獲物である小動物を狙って狭いところに入り込んだり、通り抜けたりすることができるのです。
人間の場合、鎖骨が肩幅までありますから、どうしても肩幅より小さく体を狭めることができませんよね。
背骨の柔らかさ
猫は人間と比べて、胸椎は1個、腰椎は2個多くあります。
数が多い分、関節も増えるため、ひねったり曲げたりするときの可動域が広がります。
猫が高いところから降りるときに、ドスン!とならずに軽々と着地できるのは、このよく曲がる背骨が衝撃を吸収してくれているからなのです。
筋肉・関節の柔らかさ
猫が眠っているときやリラックスしているときに、その体に触れると、少し心配になるくらいふにゃふにゃしていますよね。
猫は関節部分に加え、筋肉自体も柔らかいので、どんな狭いスペースでもその形に合わせて体を滑り込ませてしまうことができます。
猫らしい、柔らかい曲線のフォルムの秘密はここにもありました。
最後に
猫を飼っている人でも、普段の生活のなかでは意外とその詳しい仕組みまで知る機会があまりないかもしれません。
絵に描かれた猫は、ときに実物よりも猫らしく愛らしい姿を見せてくれます。
絵から猫を見ることで、見慣れた飼い猫のなにげない仕草が新鮮に見えてきたり、改めて疑問に思ったりすることもあるかもしれません。
この記事を読んだ飼い主さんの、飼い猫との生活がより豊かなものになってくれたら嬉しいです。