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猫を飼っているだけで処刑⁉︎中世欧州の魔女狩りの歴史

2021.08.21
猫を飼っているだけで処刑⁉︎中世欧州の魔女狩りの歴史

みなさんは、「魔女」と聞くと、どんなことをイメージしますか?
カギ鼻の老婆を思い浮かべる人もいれば、魔女の宅急便のようなかわいらしい魔女を思い浮かべる人もいるでしょう。

そして、どんな魔女でも、なんとなく「黒猫」を飼っているイメージがあるのではないでしょうか。

イメージとは恐ろしいものです。中世ヨーロッパで行われた「魔女狩り」では、猫を飼っているだけで魔女認定され処刑の対象になったり、「猫は魔女の使い」というイメージから、猫も一緒に処刑されたりすることもありました。

今回の記事では、そんな魔女狩りの悲しい歴史の原因や、魔女狩りと猫たちの関係などについてご紹介します。

この記事の目次

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魔女狩りとは

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魔女狩りとは一般的に、13〜18世紀の中世ヨーロッパにおいて、国家とキリスト教会によって行われた異端迫害のことだとされています。
キリスト教以外の宗教を信仰する人々を中心に、「魔女」と認定された者が、裁判によって拷問され、処刑されました。

魔女は反逆者?

魔女は古くから、病気の治療をしたり、占いをしたりと、村の中でも重要な役割を担ってきました。しかし、キリスト教の布教がなかなか進まなかったことや、政治が安定しなかったことにより社会不安が増す中、力を持つ魔女たちは次第に「悪魔と契約し、キリストの神に反逆する罪人」というレッテルが貼られるようになり、迫害の対象となります。

「魔女狩りの手引き本」も存在した

15世紀に、異端審問官によって執筆された本『魔女に与える鉄槌』は、魔女狩りの手引書とも言える書物で、魔女の定義や、自白に効果的な拷問の方法、正当な処刑方法などが記されています。この本が魔女狩りの本格化に火をつけ、16〜17世紀に魔女狩りはピークを迎えます。

ヨーロッパの一連の異端審問によって、犠牲になった人の数は約10万人にもなると言われています。

猫を飼っているだけで魔女認定!?

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魔女の条件とは?

「魔女」と認定された人は、キリスト教以外の宗教を頑なに信仰していた人ばかりではありません。
なんと、「無学」「高齢」「孤独」といった信じがたい理由で、魔女だとみなされ、処刑された人がたくさんいたというのです。

例えば、未亡人や未婚者は、「孤独に生きる者」であり、家父長的家族に脅威を与える存在だとして迫害の対象になりやすい存在でした。また、貧困者は悪魔の誘惑に屈しやすいとの考えから、迫害の危険に晒されました。

猫を飼っている人=魔女

さらに、一人暮らしの女性が寂しさを紛らわすためによく猫を飼っていたことから、次第に「猫を飼っている」というだけで魔女だと疑われ、飼い猫も一緒に処刑されることも多かったといいます。

もはや誰でも魔女

魔女狩りが深刻化すると、人々は今度は自分が処刑されるのではないかと恐怖に怯えるようになり、隣人を次々に告発していくようになります。また、「魔女」と聞くと、女性のイメージがあるかと思いますが、魔女狩りの犠牲者には男性も多く含まれていました

しまいには、個人的な恨みのある人間や、社会的な嫌われ者などが魔女として告発されたようで、もはや異端迫害とは名ばかりで、収拾のつかない集団ヒステリーのような状態になっていきました。

なぜ、特に「黒猫」なのか

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そもそも、魔女が猫、特に黒猫を飼っているというイメージがあるのはなぜなのでしょう?
明確な理由は分かっていませんが、考えられている説を3つご紹介します。

1. 猫の特徴が「魔女の使い」らしい

猫が次のような特徴を持つことから、魔女の使い、魔女のペットだという印象が強くなったのではないかという説です。

  • 暗がりでも目が見える、目が光る
  • 物音を立てずに動ける
  • 特に黒猫は、闇に紛れられる

2. 古代エジプトで、神聖なものとして崇拝されていた

古代エジプトでは、「バステト」という猫の顔をした女神が崇拝されていました。
そのことから、猫は神聖なものとして扱われるようになり、超自然的な力を持つとされる魔女とリンクされるようになったと考えられています。

キリスト教会が猫の飼い主や猫自身を処刑の対象にしたのも、猫をキリスト以外の「神」的な存在として崇めている人がいたからだとも考えられます。

3. 魔女集会から生まれた迷信

ヨーロッパで行われていた魔女・悪魔崇拝のための集会「サバト」に、信者たちが猫などの仮装をして参加する、あるいは、猫やほうきに乗って森の洞窟に集まるという言い伝えから、猫が魔女の使い・化身という迷信が生まれた説です。

魔女狩りの時代には、サバトに参加した者は、魔女や魔女を崇拝する者として、処刑の対象になりました。

しかし、この「サバト」はヘブライ語の安息日を指す「シェバト」に語源を持つとされ、実際に魔女崇拝のような集会があったかは定かではありません。現代では、サバトが魔女の集会だというイメージは反ユダヤ教感情と結びついたもので、魔女狩りを正当化するためのでっちあげではないかとも考えられています。

魔女狩りとペスト

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猫の大量処刑がペスト大流行の原因?

一説には、魔女狩りの際に猫を大量に処刑してしまったため、ペストの媒介者であるネズミの捕食者がいなくなり、ペストが大流行したと言われています。

しかし、ヨーロッパでペストが流行したのは魔女狩りが最盛期を迎えるより数百年前だとされており、実際に魔女狩りがペスト大流行の引き金になった証拠はありません

ペストは「魔女のせい」という集団ヒステリー

ペストの治療方法や予防方法がまだ確立されていなかった中世ヨーロッパでは、致命率が30%〜60%にもなるペストはとてつもない脅威でした。先が見えない暗い世の中で、集団的なパニック状態を少しでも抑える方法として、ペストを「魔女のせい」にして魔女狩りが行われたと考えられています。

ペストのようなパンデミックの他にも、自然災害や家畜の疫病などの社会不安を魔女に起因し、魔女を処刑する動きがあったとされています。

ペスト後の人口回復のために魔女を排除?

ペストによって急速に減少した人口を回復させるため、古くから避妊や堕胎の知識を持ち、アドバイスを行ってきた産婆を、「魔女」として排除する動きがあったという説もあります。

今でも「黒猫」は不吉の象徴?

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「黒猫が横切ると不吉の兆候」と聞いたことがあるかもしれません。
黒猫が不吉の象徴だという考えは、やはり魔女狩りの暗い歴史や、「魔女の化身」というイメージによるものだと考えられています。

また、同じ「黒猫が横切る」でも、国によって「右から左へ横切ると不吉、左から右なら幸運」としたり、「黒猫が近寄ると幸運、離れると不吉」としたり、様々な迷信があるようです。

日本では幸運の象徴

なんとなく不吉なイメージが持たれがちな黒猫ですが、実は日本では黒猫は縁起の良い「福猫」とみなす風習があります。

例えば、京都の檀王法林寺(だんのうほうりんじ)では、盗難火災から守ってくれる「主夜神(しゅやじん)」という神様を祀っているのですが、いつからか、その使いが黒猫だと言われるようになりました。

また、江戸時代には厄除けや商売繁盛の象徴として大切にされるようになり、「黒猫を飼うと結核が治る」という噂も広まりました。「魔女と黒猫がペストの原因」という魔女狩り時代のヨーロッパの考え方とは真逆ですね。

現代の日本でも、「白猫は福を招き、黒猫は客を招く」と言われ、猫は縁起の良いものとして扱われています。

まとめ

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今回は、魔女狩りの歴史について、魔女と黒猫の関係などと結びつけながらご紹介しました。

異端迫害や、政治的不安定、感染症の流行など、様々な社会的要因によって過激化した魔女狩りでは、「猫を飼っている」というだけで処刑されてしまったり、飼い猫も一緒に処刑されてしまったりと、現代の日本では到底考えられないようなことが実際に行われていました。

「魔女といえばハロウィーンのヒロイン」「魔女はかわいい黒猫を飼っている」という明るいイメージの裏側に、このような悲劇的な歴史があったことは、意外と知られていないことかもしれません。

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