ペットだけじゃない!家畜の動物福祉に世界が大注目

ペットだけじゃない!家畜の動物福祉に世界が大注目

犬や猫などのペットの動物福祉は日本でも関心が高まっていますが、今、欧米を中心に家畜の動物福祉も大きな注目を集めています。みなさんが普段口にしている食肉の裏には、どのような現実が隠されているのでしょうか。

世界に遅れをとっている日本は、何を考え直さなければならないのでしょうか。

今回は、家畜の動物福祉をテーマに世界と日本の今を一緒に考えていきましょう。

この記事の目次

日本の畜産業の動物福祉は遅れている?

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国産のお肉と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。なんとなく、美味しく安全で清潔なイメージが浮かぶかもしれません。

では、家畜の動物福祉についてはどうでしょうか。

イメージが湧きにくいかもしれませんが、実は家畜の動物福祉に関して、日本は残念ながら「後進国」と言われています。

国際基準では・・・

2004年、WOAH(世界動物保健機関)の陸生動物衛生規約(Terrestrial Animal Health Code)において、動物福祉の基本原則として「5つの自由」が国際的な指針として位置づけられました。

WOAH(世界動物衛生機関)による動物福祉の「5つの自由」

① 飢え、乾き及び栄養不良からの自由
② 恐怖及び苦痛からの自由
③ 物理的及び寒暖の不快からの自由
④ 痛み、損傷及び疾病からの自由
⑤ 通常の行動様式を発現する自由

参考:Animal Welfare – WOAH – World Organisation for Animal Health

WOAHは、これらの原則をもとに、動物の福祉を確保するための具体的な考え方を示しています。例えば、動物が十分に動き回れるスペースや清潔な環境を保つことや、動物が感じる痛みや恐怖を最小限にまで抑えた方法で飼育や屠殺を行うことが必要とされます。

欧米で進む畜産業の改善

主に欧米先進諸国では、家畜の動物福祉を推進する飼育・屠殺方法にシフトする動きが見られます。

例えば、鶏をケージにぎゅうぎゅう詰めにすることなく、自由に地面を歩き、羽を広げられるように放し飼いをする「ケージフリー」方式をとることが、多くの企業、地域、さらには国レベルで宣言されています。

牛や豚などのほかの家畜動物に関しても、WOAHの指針に基づいて飼育・屠殺するよう、各国で法律の整備や監視の強化がなされています。

日本は動物福祉の後進国

各国で畜産業の動物福祉への取り組みが加速する中、日本は他国に遅れをとっています

実際、動物愛護団体の国際NGO「ワールド・アニマル・プロテクション(WAP)」による日本の畜産業の評価は、最低ランクを付けられています。

参考:Japan | World Animal Protection

2025年に改正された動物愛護法では、家畜に対するアニマルウェルフェア基準の新設や強化などが盛り込まれましたが、決して十分とは言えないのが現状です。

動物福祉に一歩前進した企業たち

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家畜の動物福祉に配慮している企業は、日本ではまだごく一部ですが、ここでは、NPO法人アニマルライツセンターが公表した「アニマルウェルフェアアワード2025」に選ばれた企業をご紹介します。

鶏賞:キユーピー株式会社

欧米において使用するすべての卵をケージフリーへ切り替える方針を打ち出しています。さらにグローバル全体では、2027年までにマヨネーズに使用する卵の20%をケージフリーにする目標を設定しました。

日本国内においても、2030年までにマヨネーズに使用する卵のうち20%相当をケージフリーで調達する方針を明らかにしています。あわせて、ケージフリー卵の市場そのものを広げていくことも目指すとしています。

鶏賞:株式会社シャトレーゼ

自社で放牧養鶏をスタートさせ、2024年にはその卵を使用したプリンを『YATSUDOKI』ブランドから発売しました。

平飼い卵の安定調達を目指すとともに、中長期的な企業価値の向上も視野に入れた取り組みです。大手製菓企業が自社で養鶏まで手がけるケースはまだ珍しく、それだけでも注目に値しますが、さらに「放牧」という世界水準を上回るアニマルウェルフェアに挑戦しています。

放牧規模は約4万羽と、日本の卵業界や製菓業界にとってもインパクトのある動きといえそうです。

豚賞:株式会社七星食品

七星食品は、香川県と徳島県に養豚場を構える生産者です。いち早く国際基準のアニマルウェルフェアを取り入れ、妊娠ストールフリーに取り組んできました。

そして2025年、残る母豚の妊娠ストール豚舎もストールフリーへ建て替えることを決定。すでに次のステップへと動き出しています。1棟目の運用で得た知見や手応えは、ほかの養豚業者にも共有しているといいます。

大手企業がストールフリー化を進める一方で、国内の中小養豚場が対応に悩む現状もあります。そうした中での七星食品の挑戦は、業界内でも存在感を放つ取り組みといえそうです。

世界で広がるヴィーガニズム

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ヴィーガンとは?

ヴィーガンとは、宗教や体質以外にも、動物福祉、環境保全、健康維持などさまざまな理由から、動物性の食べ物(肉、魚、卵、牛乳、蜂蜜など)を一切食べず、植物性の食べ物(野菜、果物、穀物、豆類など)から栄養を摂る人たちのことを言います。

なぜ今、ヴィーガンか?

今、世界のヴィーガン人口が爆発的に拡大しています。
Instagramでも、「#vegan」のタグを付けた投稿は非常に多く、ヴィーガンが大きな注目を浴びていることがわかります。

1.動物愛護

近年、ペットの動物福祉については欧米を中心に関心が高まっていましたが、今度は家畜についても動物福祉を見直す動きが広まっています。

中でも多くの人に食肉について考え直すきっかけとなったのが、畜産業の裏側を映し出したいくつかのドキュメンタリー映画です。

ほとんど動き回れないほど狭い飼育場で育てられ、生きたまま痛めつけられて泣き叫ぶ悲惨な動物の姿を見て大きなショックを受け、「少なくとも自分はこの動物虐待に加担したくない」と思った人たちも多いようです。

2.環境保全

畜産業では、家畜がエサを消化する過程で発生するメタンや、家畜の排せつ物、飼料生産などによって温室効果ガスが排出されます。国連食糧農業機関(FAO)の推計では、畜産業は世界の温室効果ガス排出量の約14.5%を占めるとされています。

とりわけ牛は大量の飼料や水を必要とするほか、反すう動物の消化過程でメタンが発生するため、畜産由来の温室効果ガスの中でも大きな割合を占めています。FAOによると、肉牛と乳牛を合わせた牛は畜産分野の温室効果ガス排出の約3分の2を占めるとされています。

環境保全が世界中で緊急かつ重大なトピックとなっている今、特に環境意識の高い欧米を中心に、食生活や畜産業のあり方を見直す議論が進んでいます。

3.健康維持

ヴィーガンは不健康だと思う方もいるかもしれませんが、実はヴィーガンにはダイエットや腸内環境改善効果のほか、ガンや糖尿病、心臓病などの疾患のリスクが下がるという研究も次々と発表されています。

ただし、ヴィーガンとひとくちに言っても、豆や穀物を摂らない偏った食事をしたり、砂糖などを多く含む加工食品を食べ過ぎれば、健康に悪影響を及ぼします。一方で、偏った食生活が体に良くないのは肉食の場合でも同様であり、「ヴィーガンだから不健康」と単純に結論づけることはできません。

あの有名人もヴィーガン

ヴィーガンの有名人として、シンガーソングライターのアリアナ・グランデビリー・アイリッシュ、テニス選手のノバク・ジョコビッチ、F1ドライバーのルイス・ハミルトン、タイタニックでヒロインを演じたケイト・ウィンスレットなどが知られています。

少し前までは、欧米においてもヴィーガンに対しては偏見が多かったようですが、有名人が次々にヴィーガンを宣言することで、ヴィーガンに関心を持つ人が増えたとも考えられます。

日本でも大人気のアリアナ・グランデは、記者に対し、「私、人間よりも動物の方が好きなの。冗談じゃないわ、本当よ。」と答えたそうです。そんな彼女は、日本の枝豆や豆腐、ひじきなどがお気に入りの食材だと明かしています。

動物福祉について知ろう!

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普段食事をするとき、「いただきます」「ごちそうさまでした」と、命をいただいていることに感謝している方も多いのではないでしょうか。

しかし、その食卓に並ぶ肉や卵、牛乳がどのような過程を経て私たちのもとへ届いているのか、あらためて考える機会は意外と少ないかもしれません。

本書では、畜産や動物福祉、実験動物、ペット産業、ヴィーガンなど、身近でありながら複雑なテーマを幅広く取り上げています。どれも簡単に白黒つけられる問題ではありません。だからこそ、「知ること」そして「自分の頭で考えること」の大切さに気づかされます。

難しいテーマではあるものの、クイズや用語解説が随所に盛り込まれており、専門的な知識がなくても理解しやすい内容です。思っている以上に読みやすく、動物や社会問題にあまり詳しくない方でも無理なく読み進められるでしょう。

私たちと動物たちの関係を、あらためて見つめ直すきっかけとなる一冊です。興味を持った方は、ぜひ手に取ってみてください。

まとめ

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今回は、ペットから少し離れ、家畜の動物福祉について、世界と日本の今を考えました。

家畜動物の境遇の改善だけにとどまらず、環境保全や健康への関心の高まりも相まって、世界中でヴィーガン人口が増えています。アメリカでもヴィーガン人口が増加傾向にあるとされ、欧米のレストランではヴィーガンメニューが当たり前のように提供されるようになっています。

ペットの飼育に関しても遅れを取る日本ですが、家畜に関してもそれは同様です。食肉の裏側に目を背け続けてきた日本は、まだまだ畜産業について海外諸国の事例から学ぶべきことが多いのではないでしょうか。

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