宇宙開発の技術は進歩を続け、気軽に宇宙に行けるようになるのもそう遠くないかもしれません。ところで、宇宙開発には、さまざまな動物が関わっていたことはご存じでしたか?
実は、私たちが愛するペットの代表格である犬も宇宙に行っていました。
この記事では、宇宙飛行に大きく貢献した「宇宙飛行犬」について取り上げていきます。
この記事の目次
宇宙飛行犬とは
実は、宇宙飛行の成功は、犬の存在無しには語れません。
1961年、人類で初めて宇宙飛行を成功したとして有名になったユーリイ・ガガーリン。成功の要因のひとつに、犬の存在があったと言っても過言ではないでしょう。
初めて宇宙に行った生物は犬?!
みなさんは、旧ソ連が宇宙開発に力を入れていたことはご存じですよね。かつては、米ソ宇宙開発競争と呼ばれており、アメリカ合衆国とソ連は宇宙開発の進歩を巡って競い合っていました。
冷戦中の1957年から1975年の約18年間に渡って続き、世界中から注目を浴びた戦いです。
宇宙開発競争の最終目的は、人類を宇宙に送り出し帰還させること。その目標を掲げ、ソ連は国家をあげて宇宙開発に取り組んでいました。
宇宙飛行テストのために
アメリカでは、人に近い動物である猿を実験に用いました。しかし、猿はストレス耐性が低く、攻撃的になることがあるため、ソ連は「犬」に白羽の矢を立てました。なんと、地球上の生物で最初に宇宙に飛び立ったのは犬だったのです。
実際、ソ連は犬を使って、人類が宇宙に行く前の宇宙飛行テストをしています。現代では間違いなく、このような動物実験は行われないでしょう。しかし、当時は人類が安全に宇宙飛行をするために、生き物を使って実験せざるを得ない状況でした。
人類で初めて宇宙に旅立ち帰還した人は、ソ連の軍人「ユーリイ・ガガーリン」ですが、彼の成功の裏には犬がいたのです。実験に命をかけて参加した(させられた)犬のおかげで、今私たちは宇宙について知ることができています。
宇宙飛行犬、ライカ
初めて宇宙に飛び立ち、地球軌道を周回した犬はライカ(ロシア名:クドリャフカ)。
クドリャフカとはロシア語で「巻き毛ちゃん」という意味があります。とても小柄なメス犬で、もともと野良犬でした。しかし、彼女はとても賢く、おとなしかったため、宇宙訓練も難なくクリアしていきました。
また、とても健康な犬で、どんな訓練を受けても体調に異変は現れませんでした。そのような素晴らしい能力と体を持っていたので、ソ連の宇宙開発チームの間では期待の犬でした。
「星になった犬」
そして1957年に、ライカはついに宇宙へ旅立つこととなりました。
彼女が搭乗した宇宙船は、総重量約18kgの小型カプセル型宇宙船で、内室は身動きが取れないほどの狭い空間があるだけでした。その宇宙船には10日間分の食料と水が備わっており、自動供給式でした。
当時、片道宇宙飛行にかかる日数は約10日間。ということは…そうです。彼女には“帰還”という選択肢は初めからありませんでした。
当時のソ連の研究状況では、宇宙船発射はできても、大気圏突入ができるほどの宇宙船をつくる技術は無く、打ち上げから10日後に薬入りの餌を与えられて安楽死させられました。
なお、実際には高熱と酸素不足、ストレスのため、軌道に乗ってから5〜7時間後で生きている反応が送られてこなくなっていたことが2002年に明らかになっています。
ライカはこうして宇宙開発の犠牲となりましたが、この実験データを元に改善が行われ、その後の宇宙開発の進歩に大きく貢献しました。
初めて宇宙からの帰還に成功した生物も犬
ソ連の宇宙開発はさらに進歩を見せました。ライカを失ったことは、ソ連にとって心痛い出来事でしたが、彼女のおかげで宇宙開発への技術が進歩しました。
1960年、ソ連はとうとう生物の地球帰還に成功しました。世界で初めて成し遂げた偉業です。その1960年の宇宙飛行に抜擢されたのが、雑種犬のベルカとストレルカでした。
ベルカとストレルカ
ベルカとストレルカは雑種の野良犬でした。2匹はメス犬で、体重7kg以下の小型犬だったと言われています。
宇宙船には、彼女たちが宇宙に行って帰還できるほどの、十分な食料と水が備わっていました。つまり、今回の宇宙開発実験は地球帰還を目的とした実験でした。
2匹は約1日間宇宙に滞在し、無事体調不良もなく地球に帰還に成功しました。ソ連の宇宙開発は見事に成功したのです。
ベルカとストレルカが地球に帰ってきて約8ヶ月後、のちの人類初となる、ガガーリンの宇宙飛行が行われました。
最後に
「宇宙開発の成功は、犬の存在あっての出来事だった」ということができます。輝かしい成功の裏には、涙ぐましい犠牲があったことを、忘れてはなりません。
今では考えられないと思われるかもしれませんが、宇宙開発以外にも、私たち人間が豊かな暮らしをするために、犠牲になっている動物はたくさんいます。そして、現代でもそれは変わりません。しかし、動物実験の規制は年々厳しくなっており、最近の技術革新やAI技術の発達により、もうすぐ動物を犠牲にする時代は終わりを迎えるかもしれません。
それでも、私たちの暮らしはこうした動物たちの犠牲のおかげで成り立っていることは紛れもない事実です。このことを知り、そして忘れず、日々の暮らしに感謝しながら過ごしていきたいものですね。