猫 ワクチン 予防接種
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ねこ健康

【獣医師監修】正しく理解できてる?猫のワクチンの種類と注意点

相澤 啓介 獣医師

猫の感染症を予防するために最も重要なもののひとつとして、ワクチン接種があります。

しかし、みなさんの中には、「家の中で飼っているから受けていない」という方もいらっしゃるかもしれません。また、予防接種を受けていても、「よくわからないけど何となく接種している」という方も多いのではないでしょうか。

この機会にぜひ、猫のワクチンに対する理解を深め、今一度、感染症予防に対する意識を改めてみませんか?

混合ワクチン

混合ワクチンは、一度の注射で複数の感染症を予防できるワクチンです。猫がどの病気のワクチンを接種しているのか、確認しておきましょう。

混合ワクチンで予防できる感染症

いずれも猫において重要な感染症ですが、特に猫白血病が予防できるかどうかは重要ですので、きちんと把握しておきましょう

猫ウイルス性鼻気管炎

猫ヘルペスウイルスによって鼻炎や結膜炎が現れます。猫風邪とも呼ばれることがあり、子猫で発症しやすい疾患です。一度感染すると潜伏感染によって、ストレスなどで容易に発症します。ワクチン接種によって症状を軽くすることができます。

猫カリシウイルス感染症

猫カリシウイルスによる感染症です。鼻炎や結膜炎といった猫ウイルス性鼻気管炎と類似した症状を呈しますが、重症化すると口内炎が現れます。
近年では全身症状を引き起こし、67%以上の高い致死率を呈する強毒株が問題となっています。

猫汎白血球減少症

猫ジステンパーとも呼ばれ、急性期には激しい消化器症状を引き起こします。子猫は下痢や嘔吐による脱水によって死亡することも多いです。
慢性期にはリンパ組織や骨髄が侵され、貧血や敗血症が現れます。

猫クラミジア感染症

結膜炎が見られます。
人獣共通感染症であり、ヒトへの感染も報告されています。

猫白血病

他の猫の唾液やケンカの傷、母子感染によってから感染します。症状は貧血、下痢、発熱、口内炎が現れます。
また、リンパ腫や再生不良性貧血のリスク因子となります。

混合ワクチンの種類

動物病院によって取り扱っている混合ワクチンの種類は異なります。

3種 4種 5種
猫ウイルス性鼻気管炎
猫カリシウイルス感染症
猫汎白血球減少症
猫クラミジア
猫白血病

混合ワクチンには、基本的に「コアウイルス」と呼ばれる猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症の3つは含まれています

混合ワクチン接種前に確かめたいこと

混合ワクチンの接種前に、猫白血病に感染していないかを確認する必要があります。

猫白血病は一度感染すると治療法がないため、屋外に出る猫はワクチン接種の前には血液検査を行い、万が一検査結果が陽性であった場合は、猫白血病の入っていないワクチンを選択します。

また、猫カリシウイルス感染症の強毒株に対応したワクチンかどうかも確かめましょう。
製薬会社によっては猫カリシウイルスの異なる3つの株に対応し、7種混合ワクチンとして販売していることもあります。

ワクチンプログラム

子猫では、移行抗体が減少し始める生後6〜8週で初回接種を行い、その後は約4週ごとに計2〜3回の接種を行います。以降は1〜3年に1回のペースで接種を続けていきます。

その間はしっかりと抗体による感染症の防御がなされているかを確認するために定期的にワクチン抗体価を測定します。抗体価測定によってワクチン接種の頻度をコントロールすることで、不要なワクチン接種を無くし、副作用のリスクを下げることができます。

移行抗体とは?
子猫は母猫から母乳を通じて移行抗体をもらいます。生まれてから6〜8週までは移行抗体によって外の異物から身を守ることができますが、以降は徐々に消失していきます。

単味ワクチン

混合ワクチンとは別に、1種類のみの感染症を予防できるものもあります。
以下の疾患は特に健康上重要な病気ですので、覚えておいてください。

猫免疫不全ウイルス感染症

猫同士のケンカやグルーミングによって容易に感染します。特に、屋外に生活環境がある猫では要注意で、国内の猫の10〜20%が抗体陽性というデータもあります。

この疾患は混合ワクチンには入っていないので屋外に出る猫、あるいは脱走時の保険のために屋内飼育の猫でも接種が推奨されます。

症状

急性期の症状は、発熱や食欲不振、口内炎などの軽いものが現れます。
ところが徐々に免疫細胞がダメージを受けていき、発症期となると貧血や各種腫瘍の発現、腎炎、発作、眼症状などを呈し死亡することもあります。

注意点

猫免疫不全ウイルスの厄介な所は、ウイルスのサブタイプによってワクチンが効かなくなることです。このサブタイプは地域ごとに流行している型が異なるので、自分の住んでいる地域に応じたワクチンを選択する必要があります。

接種前には獣医師にしっかり確認することが重要です。また、猫白血病と同様、接種前に血液検査で感染陰性を確認しましょう。

猫白血病ウイルス感染症

混合ワクチンにも含まれていますが、飼っている猫を屋外でも生活させたい場合や、猫白血病ウイルス陽性の猫を保護した場合に単体で接種が可能です。
万が一の脱走や、屋外の猫との予期せぬ接触に備えて、混合ワクチンでまとめて予防している方も多くいます。

ワクチンの副作用

病気の予防のためのワクチン接種ですが、一定の割合で、元気消失、嘔吐、発作、チアノーゼ(舌が青くなる)、顔の腫れなどの副作用が発現します。
副作用が起きる可能性を考慮した上で、どのようなことに注意をすべきか解説していきます。

ワクチン接種前の注意点

副作用が起きることを極力減らすような体調管理と、万が一副作用が起きたときに対応できるような時間に接種することが重要です。

  • 午前中にワクチン接種を行う。
  • 接種後半日以上は様子を見ていられる日程を組む。
  • 接種1週間前程の体調をしっかり確認しておく。
  • 前回、どの種類のワクチンを接種しているのか確認しておく。

ワクチン接種後の注意点

どんなに注意しても副作用が起きることはあります。
元気消失、嘔吐、発作、チアノーゼ(舌が青くなる)、顔の腫れなど、副作用とみられる症状が現れたらすぐに動物病院を受診してください。

また、猫はワクチン接種部位に腫瘍が発生することがあります
そのためワクチンは後肢に接種することが多いのですが、数日後にワクチン接種部位にしこりが認められた場合もすぐに動物病院を受診してください。

  • 接種後できれば30分は動物病院付近で様子を見る。
  • 接種後半日以上は屋外に出すことを避ける。
  • ノミやマダニの予防薬は接種日の投薬を避ける。

まとめ

ワクチンで予防できる感染症の中には、厄介で怖いものも含まれています。

猫の健康を守ることは飼い主の最低限の義務です。様々な理由をつけてワクチン接種を受けさせないのは、その義務を怠ることになりはしないでしょうか。

大切な愛猫が苦しい思いをしないためにも、予防できる病気は予防していきましょう。

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