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【獣医師監修】猫の飼い主なら知っておきたい猫汎白血球減少症とは?

相澤 啓介
相澤 啓介 獣医師

猫汎白血球減少症(別名、猫パルボウイルス感染症)は、ワクチンで予防すべき猫のコアウイルス病に指定されている感染症です。各製薬会社の猫の混合ワクチンには、もれなくこの感染症が含まれています。

しかし、病名が漢字ばかりで、一目見ただけではなんだかよくわからない病気かもしれません。

猫汎白血球減少症は感染力が強く命に関わることもあるため、決して軽視してはいけない感染症です。本記事では猫汎白血球減少症について、獣医師が解説していきます。

猫汎白血球減少症って何?

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猫汎白血球減少症は、猫パルボウイルスの感染によって引き起こされる感染症で、出血性の下痢と白血球減少を特徴とします。
特に子猫は死亡率が極めて高く、感染しないように予防することが重要です。

日本でも、ペットショップなどでの集団発生が起こることが度々あります。

2018年には、都内の猫カフェで集団発生が起こり話題になりました。直近に当該の猫カフェに訪れている人は、他の猫カフェから入店を拒否される事例もあり、猫パルボウイルスがいかに恐ろしいウイルスなのかが分かります。

猫汎白血球減少症の症状

全身症状と消化器症状が主な症状です。

主な症状

  • 発熱
  • 突然の衰弱
  • 嘔吐
  • 出血性下痢
  • 脱水
  • 流死産(妊娠猫の場合)

胎生期・新生子期に感染すると・・・

妊娠猫のお腹の中、もしくは生後間もない時期に猫パルボウイルスに感染してしまうと、小脳の低形成が起こり、運動障害が見られるようになります。

さらに、眼の網膜形成異常による視力障害も見られることがあります。

猫パルボウイルスの感染経路

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猫パルボウイルスは、感染猫の排泄物(尿、糞便、吐物、眼分泌物など)や、それらによって汚染された食器などから経口感染します。

ワクチン接種前の多頭飼育環境では、1匹が感染していると他の猫にも感染してしまう可能性が高いので、十分に注意が必要です。

猫汎白血球減少症の診断

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確定診断は、糞便中のウイルスを分離することで行います。
犬用のパルボウイルス検出キットがありますが、猫の場合では検出率が高くなく、陰性であっても感染を除外することができません。

よって、確実な結果を得るためには、糞便を検査会社に送ることになります。
また、血清中の抗体測定も診断の補助に役立ちます。

血液検査

血液検査によって、白血球の減少が見られることが本症を疑うきっかけになります。

急性期では2,000個/µlまで白血球が減少します(猫では5,000~15,000個/µlが正常)。
白血球の減少によって免疫力が落ちるため、他の感染症を併発することが懸念されます。

猫汎白血球減少症の治療

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猫パルボウイルスを直接退治する特効薬はありませんので、対症療法を施します。
嘔吐や下痢による重度の脱水や栄養障害が見られる前に、適切な治療を行うことが重要です。

輸液療法

喪失した水分と電解質を補うために、十分な点滴を行います。
また、嘔吐が顕著な場合には制吐薬を併用し、これ以上の水分の喪失を防ぎます。

抗菌薬

白血球減少により他の感染症にかかりやすくなるため、抗菌薬を投与します。

特に子猫の場合は、細菌による敗血症が命に関わるため、抗菌薬の投与は重要です。
腸管粘膜の損傷部位からの感染が懸念されるので、抗菌薬の効果を発揮するために注射での投与を行う場合が多くあります。

インターフェロン療法

猫インターフェロンの投与がウイルス増殖を抑制した、という報告があります。
現在では、猫汎白血球減少症を始めとする種々のウイルス感染症で用いられている治療法です。

予後

生後3ヵ月以内の子猫では予後は非常に悪く、ほとんどが死亡します。その致死率は90%以上という報告もあります。
一方、成猫では、適切な治療を施せば1週間程で回復すると言われています。

もちろん早期発見と早期治療が行われた場合ですので、日常の観察で何か異常が見られたらすぐに動物病院を受診してください。

猫汎白血球減少症の予防

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猫の混合ワクチンの定期的な接種によって、猫汎白血球減少症の予防が可能です。
ワクチンには、ウイルスそのものを弱くして接種する「弱毒生ワクチン」と、ウイルスの病原性と感染性をなくした「不活化ワクチン」があります。

妊娠中の猫では、弱毒生ワクチンを用いると子猫の小脳低形成を引き起こすおそれがあるため、不活化ワクチンを用います。

愛猫に猫汎白血球減少症に対する防御が備わっているかは、血液中のワクチン抗体価を測定することでわかります。猫はワクチン接種後、「肉腫」という腫瘍のリスクがあるので、無駄なワクチン接種を行わないためにも利用してみるといいかもしれません。

猫舎の徹底した衛生管理

多頭飼育の場合には、排泄物などによって感染猫から他の猫に容易に感染が成立します。
感染が疑われるときには隔離し、食器や水飲み場、トイレを消毒します。

ウイルスは環境中で長期間の生存が可能で、通常の消毒薬にも抵抗性を示します。
よって、消毒の際には、希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用します。

また、人間が外からウイルスを持ち込む可能性もあるため、室内飼育だからと言って安心はできません。

まとめ

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猫汎白血球減少症は世界中で見られる感染症で、日本も例外ではありません。感染力や子猫の致死率の高さから、決して甘く見てはいけない感染症だということを分かっていただけましたか?

子猫は特に注意が必要ですが、成猫でももちろん油断はできません。
他の猫からもらう可能性があること、他の猫に感染させる可能性があること、人間がウイルスを持ち込んでしまう可能性があることを考えると、ワクチンの接種は必須ではないでしょうか?

猫汎白血球減少症がどんな病気なのか、少しでも理解し、予防に役立てていただけましたら幸いです。

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