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【獣医師監修】猫の体重減少は危険!早く気付けば病気の早期発見に

相澤 啓介
相澤 啓介 獣医師

猫を抱き上げたとき、「ちょっと軽くなった」と感じることはありませんか?もしくは、猫の体を撫でたときに、「骨が当たるようになった」なんてことありませんか?

猫も生物ですので、生きている中で多少の体重の増減はあります。しかし、体調不良の際には、体重が目に見えて減少することがあります。抱っこしてみて、軽くなったかなと思ったらそれは病気のサインかもしれません。

今回は猫の削痩について獣医師が詳しく解説していきます。

削痩(さくそう)とは?

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「削痩」とは読んで字のごとく、体重減少によって体型が痩せ細ることです。

個体差によりますが、季節の変わり目やその日の体調によって多少の体重の増減はあります。しかし、問題となるのは急激に体重が落ちる場合、もしくは徐々にではあるが確実に体重が落ちていく場合です。

削痩はエネルギーを勝手に大量消費するような腫瘍疾患や、食欲不振を引き起こす疾患、栄養の吸収が阻害される疾患などで主に見られます。たくさん食べるのに体重が落ちていく状態は明らかに異常であるため、精密な検査が必要です。

猫の体重減少で動物病院を受診する前にチェックしておくこと

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体重減少を引き起こす疾患は多岐にわたり、そのすべてに対して検査を行うことは現実的ではありません。

なぜ体重減少が起きているのか、問診によってある程度絞り込む必要があります。動物病院を受診する前に以下のことをチェックしておきましょう。

  • いつから: 何日でどのくらい体重減少があったのか
  • 生後1歳齢前後の体重: 標準体重からどの程度体重が少ないのか
  • 摂食態度: 食欲の有無、摂食量の確認
  • 同居動物の有無: 食事の横取りの可能性
  • 他の臨床徴候: 嘔吐、下痢、多飲多尿、頻尿など

同じ猫種であっても、骨格の大きさなどによって標準体重は異なります。
通常は体が出来上がった生後約1歳齢の体重をその子の標準として、体重の増減をチェックします。

猫の体重減少で考えられる疾患

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では体重が減った時にどんな疾患が考えられるのでしょうか。代表的な疾患を詳しくご紹介します。

腫瘍疾患

高齢猫で体重減少が見られた際に鑑別に入れるべき疾患の一つです。

特に消化器型リンパ腫の発生率が高い傾向にあり、検査として一般血液検査の他に腹部超音波検査を勧められることが多いです。この消化器型リンパ腫では、小腸における栄養吸収の低下や、食欲不振、嘔吐、下痢によって体重が減少します。

またリンパ腫に限らず、腫瘍性疾患の末期にはがん性悪液質(栄養失調により衰弱した状態)となることが多くあります。悪液質は、疾患によるカロリー消費の増加によって理想体重の10%以上の減少が起こり、筋委縮や眼窩の落ち込みなどが見られます。

慢性心疾患

慢性の心臓疾患においても心性悪液質となることがあります。

猫で多いのは肥大型心筋症です。肥大型心筋症は、心筋が厚くなることで心臓が拡張しにくくなる疾患です。時に血栓を形成し、大腿動脈に血栓が閉塞すると、激しい痛みや呼吸困難を引き起こし、高い確率で死亡します。

慢性腎疾患

猫での慢性腎不全の発生率は非常に高いことで知られます。
慢性腎不全では水分を過剰に排泄するため、脱水による体重減少や削痩が確認できます。

また他にも蛋白漏出性腎症では、尿中に蛋白質が出現します。通常では蛋白質は再吸収されますが、尿中に排泄されるために栄養が効率よく吸収できない状態となります。

慢性肝疾患

肝不全による胆汁酸性低下や蛋白代謝低下によって栄養障害が起こります。
猫の肝胆疾患は、肝リピドーシスや胆管肝炎が多いとされています。

嘔吐や下痢といった消化器症状が見られることがほとんどであるため、日常の健康観察および定期的な健康診断によって早期発見が可能です。

甲状腺機能亢進症

高齢猫では特に多い内分泌疾患です。甲状腺ホルモンの過剰分泌によって、多食なのに体重が減少していきます。
攻撃性も増すことがあるため、年齢とともに性格の変化が認められたら一度動物病院を受診してみましょう。

また7歳齢を超えたら、半年に一度は健康診断を受けることをおすすめします。

糖尿病

糖尿病の発病初期は体重増加を示しますが、末期では体重は減少します。また糖尿病は肥満猫での発生が多く、病的な体重減少を「ダイエット成功」と勘違いするケースもあります。

これまで紹介してきた他の疾患と同様、定期的な健康診断が求められます。

猫の体重減少で注意すること

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体重計に静かに乗ってくれない、抱っこが嫌いなど理由は様々ですが、猫の体重を管理することは難しいため、毎日ではなく週に1回、月に1回など定期的に測定しましょう。

もしどうしても測定が困難なようなら、撫でた時の筋肉や脂肪の付き具合を観察しましょう。動物病院で定期的に体重だけ測定してもよいです。

長毛の場合は削痩に気付きにくい

パッと見ただけで痩せているかどうかを主観的に判断することは間違いではないと思います。

しかし、特に長毛の子は、被毛の下に皮膚があるために削痩に気付きにくいことも事実です。
体を撫でる時に肋骨に触れられるか、肉付きはどうかなどを常に気にしてあげましょう。

まとめ

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猫は人間よりも体が小さい分、例えば体重が1kg減った時に人間よりも大きな体重変化になります。

体重減少は比較的わかりやすい体調不良のサインでもあり、いち早く気付いてあげることが、病気の早期発見と早期治療に直結します。

愛猫とスキンシップを取りながら、日常での健康チェックを徹底していきましょう。

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