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動物密輸大国の日本。映画『アウトブレイク』も他人事じゃない!

2020.09.13
動物密輸大国の日本。映画『アウトブレイク』も他人事じゃない!

新型コロナウイルスが世界中に猛威を振るう今、1995年に制作された映画『アウトブレイク』を思い出した方も多いのではないでしょうか。

『アウトブレイク』は、密輸動物から感染症が蔓延したというフィクションですが、この話、現在の日本でも他人事ではありません。
その理由は、日本が「動物密輸大国」だから。

エキゾチックペットの人気沸騰に乗じて、特にアジア地域からの動物の密輸が後を絶ちません。空港等での検疫をすり抜けてしまう密輸動物は、人間に感染する感染症を持っている恐れがあり大変危険です。

今回は、動物の密輸がもたらす感染症の危険性について、映画『アウトブレイク』と、日本における動物の密輸の実態を通して考えていきましょう。

この記事の目次

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映画『アウトブレイク』が描いたもの

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『アウトブレイク』のあらすじ

『アウトブレイク』は、1995年にウォルフガング・ペーターゼン監督の元で制作されたアメリカ映画です。
物語は、米国陸軍伝染病医学研究所の研究チームが、アフリカの小さな村で、未知のウイルスによって村人たちが次々と命を落とす様子を目の当たりにするところから始まります。

その後、カリフォルニア州の町で同じ症状の感染症が発生。未知の感染症はエボラ出血熱に似たもので、致死率100%という凄まじい破壊力を持ち、瞬く間に町中を恐怖の渦に陥れました。

しかし、アフリカの感染者が移動をしなかったにも関わらず、なぜウイルスはアメリカで発生してしまったのでしょうか?
その引き金となったのは、アフリカから密輸された1匹のサルでした。

ウイルスの宿主だったサルは、営利目的でアフリカからこっそり連れ出され、検疫をすり抜けてアメリカ国内に持ち込まれたのです。

『アウトブレイク』の着想は、ノンフィクション

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映画『アウトブレイク』はフィクション映画ですが、その制作は、『ホット・ゾーン』(リチャード・プレストン著)というノンフィクション小説に着想を得ています。

『ホット・ゾーン』は、1989年にヴァージニア州レストンで実際に起きた、サルのエボラウイルス感染症事件を描いたものです。
フィリピンから輸入されたカニクイザルが、次々と出血熱を発症して死亡し、検査の結果、「レストン型」のエボラ出血熱であることがわかりました。

研究者など、サルと接触のあった人たちは死の恐怖に陥れられますが、このレストン型のエボラ・ウイルスはアフリカで人々を死に追いやってきたエボラ出血熱とは違い、幸い人間に対しては病原性がないことが分かりました。

しかし、これが仮に人間に対しても致死力のあるウイルスであったとしたら、大惨事になっていたことは間違いないでしょう。
他国からやってきた動物による病気の感染症拡大は、現実的にあり得る話なのです。

動物の輸出入に関するルール

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さて、『アウトブレイク』と『ホット・ゾーン』は、いずれもアメリカが舞台でしたが、これらの話は現実の日本でも決して他人事ではありません。

日本は「動物密輸大国」と言われています。

日本には次にご紹介するような、動物の輸出入に関するルールがあります。しかし、それらが確実に守られていない、つまり、「密輸」が横行しているために、海外の動物から感染症が広まるリスクが高まってしまうのです。

輸入禁止動物

日本では、感染症法によって次の7種の輸入が禁止されています。

輸入禁止動物 懸念される感染症
サル エボラ出血熱、マールブルグ病
プレーリードッグ ペスト
イタチアナグマ、タヌキ、ハクビシン 重症急性呼吸器症候群(SARS)
コウモリ ニパウイルス感染症、リッサウイルス感染症等
ヤワゲネズミ ラッサ熱

参照: 『感染症の予防及び動物検疫所 感染症の患者に対する医療に関する法律』の解説

ただし、試験研究用または展示用のサルは、特定地域からの輸入に限り、検疫を徹底することで輸入しても良いことになっています。

検疫対象動物

また、輸出入の際、動物検疫所で検疫を受けなければならない動物は、以下の5種です。

検疫対象動物 懸念される感染症
犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンク 狂犬病

参照: 動物検疫所 狂犬病予防法の解説

その他の動物は?

これらの動物以外の全ての陸生哺乳類、鳥類についても、海外から日本に持ち込むことは原則禁止とされていますが、輸出国政府発行の衛生証明書を入手した上で、動物検疫所に届出をした場合、持ち込めることもあります。

もし、衛生証明書がない動物を届け出を行わずに持ち込めば、動物からウェストナイル熱、オウム病、鳥インフルエンザなどの感染症が広がる可能性があります

「動物密輸大国」日本

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野生生物の取引を調査・モニターするNGO「TRAFFIC(https://www.trafficj.org/)」によると、2007年〜2018年の間に、日本の税関では1,161匹が、海外の税関では少なくとも1,207匹のエキゾチックペットが、日本への密輸動物として押収されました。日本の税関で差し止められた動物のほとんどは、東南アジアや東アジアからの密輸動物でした。

押収された動物は実際の密輸動物のほんの一握りに過ぎず、市場に出回ってしまった動物はもっとたくさんいると見られています。

そして、税関で押収された動物の中には、先ほどご紹介したような、人間に感染の危険性がある病気を持ち得る動物も多く含まれています。

密輸される動物の多くは、不衛生で過密な環境下で保管、輸送、販売されているため、感染症を持っている動物が一個体でもいれば、一気に広まってしまいかねません。これらの動物が、もしも監視をすり抜けて市場に出回ってしまえば、人間への感染症を広げてしまう可能性は十分にあります

まとめ

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今回は、映画『アウトブレイク』と共に、「動物密輸大国」日本で密輸動物から感染症が持ち込まれるリスクを考えました。

『アウトブレイク』は、海外から密輸されたサルが引き金となって、出血熱が人間に瞬く間に広まってしまったというお話。この映画はフィクションでしたが、着想を得た『ホット・ゾーン』はノンフィクションですし、科学的にも、似たようなことは今後十分にあり得る話だと言えるでしょう。

特に、検疫をすり抜け、申告もされることのない密輸動物が多く取引されている日本では、『アウトブレイク』の話も決して他人事ではありません。

「お金を儲けたい」「珍しいペットが欲しい」という、個々の自分勝手な気持ちが、日本中に「アウトブレイク」を引き起こしてしまう可能性があるということを忘れてはいけません。

動物の密輸の危険性を改めて知るためにも、映画『アウトブレイク』を今一度観てみるのも良いかもしれませんね。

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