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コラム

驚くべき犬のコミュニケーション能力!3つの実験を紹介

千葉 綾
千葉 綾 シェリー編集部

犬が非常に優れたコミュニケーション能力を持つ動物であることは、広く知られています。実際に犬を飼っている人なら、その能力の高さに驚かされることも少なくありません。

犬が持つさまざまな能力は、数多くの実験で実証されています。今回は、犬のコミュニケーションに関する3つの実験を紹介します。犬の驚くべき能力の研究について見ていきましょう。

犬は教えなくても人間とのコミュニケーションがとれる!?

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アリゾナ大学の研究チームは、平均8.5週齢の子犬375頭を対象にした実験により、「犬は学習せずとも人間との社会的なコミュニケーションが可能である」という結論を導きました。

実験内容

2つのカップを用意し、片方のカップに犬から見えないようにエサを隠します。その後、ジェスチャーによるヒントを与えた場合と与えなかった場合の正解率を検証します。


(参照:https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(21)00602-3

A.エサの入った方のカップを指さす
B.エサの入ったカップの横に黄色い目印を置く
C.指さしも目印の設置も行わない

実験結果

A.「エサの入った方のカップを指さす」の場合は正解率67.4%、B.「エサの入ったカップの横に黄色い目印を置く」の場合は72.4%の確率でエサが入ったカップを選択しています。一方で、C.「指さしも目印の設置も行わない」場合は48.9%と正解率が大幅に低下します。

この結果から、研究チームは「犬は人間のジェスチャーに対して学習に頼らず、幅広い社会化の前や発達初期から強い感受性を示す」と結論付けています。つまり、犬は生まれながらにして、学ばずとも人間とのコミュニケーションをとる能力を持っていると言えます。

野良犬でも人間の指示を理解できる!?

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人間の元で飼われている犬たちは、「オスワリ」や「マテ」などの指示に従うことができます。このような人間の指示を理解する能力は、生まれつき備わっているものなのか、それとも人間と共に暮らしていく上で学習したものなのかを明らかにするため、野良犬による実験が行われました。

インドの動物行動学者、アニディンタ・バドラ氏らの研究グループは、野良犬の生態について調査するため、野良犬160頭が人間のジェスチャーを理解できるかを調べる実験を行いました。

実験内容

  1. 鶏肉をボウルに入れて、野良犬に与える。
  2. 犬や実験担当者が見ていない場所で、「鶏肉を1切れ入れたボウル」と「鶏肉の匂いだけをつけた空のボウル」を用意し、段ボールでフタをして担当者に渡す。なお、実験担当者の心理が実験結果に影響しないよう、実験担当者にも鶏肉入りのボウルが分からないようにした。
  3. 実験担当者は地面に置いたボウルの中から、ランダムに片方を指で示すジェスチャーを行う。
  4. 1頭の犬に対して、実験を3回繰り返し、「犬がボウルに近づいたかどうか」と「犬が近づいたボウルが、人間が指さしたボウルかどうか」を確認する。

実験結果

残念ながら、野良犬のほぼ半数がどちらのボウルにも近づくことができませんでした。バドラ氏は、この理由としてインドにおける狂犬病の危険性や衛生上の問題から、野良犬が人々に叩かれたり追い払われたり、毒入りのエサを与えられたりすることへの警戒心からくるものではないかと述べています。

しかし、ボウルに近づくことができた野良犬の80%は「人間が指さしたボウル」を選びました。こちらは、実験の結果として有意なものとなりました。

この結果からは、犬が訓練を受けずとも、生まれながらにして人間のジェスチャーを理解する能力を持つ可能性が示唆されます。ただし、内気な犬や不安傾向の高い犬は実験ができなかったため、個々の犬の性格が人間の合図を理解する能力にどのような影響を与えるかなど、今後の研究で新たな発見が期待されます。

犬はウソつきを見破れる!?

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ウィーン大学の研究チームが発表した論文により、犬は単に人間の指示に従うだけでなく、「人のウソを見破って指示を無視する」ことが明らかになりました。この研究では、260頭の犬に対して、「人間が誤った指示を出している、またはウソをついている」状況下で、犬がどのように行動するのかを調査しました。

実験内容

AとBの2つのバケツを用意し、「エサを隠す人(ハイダー)」がエサをバケツに入れたり、他のバケツに移し替えたりする様子を、犬が目撃できるようにします。「エサの場所を指示する人(コミュニケーター)」は、犬にエサが入ったバケツを教え、中のエサを取るよう指示することを繰り返し、あらかじめ犬がコミュニケーターを信頼できるような工夫を行います。


(参照:https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2021.0906

  • グループ1(誤った指示をするコミュニケーター)
    ハイダーがAのバケツにエサを入れ、コミュニケーターが不在にしている間にBのバケツにエサを移す。その後、部屋に戻ったコミュニケーターは「Aのバケツにエサがある」と誤った指示を出す。

  • グループ2(ウソをついているコミュニケーター)
    ハイダーがエサをAのバケツからBのバケツへ移し替える様子を、コミュニケーターが犬と一緒に目撃した後、犬に対して「Aのバケツにエサがある」とウソの指示を出す。

実験結果

過去には同様の実験が5歳未満の子供やニホンザル、チンパンジーを対象に行われていました。その結果、グループ1の「誤った指示をする人」を無視する傾向が観察された一方で、グループ2のような「ウソをついている人」には従う傾向が見られました。
同研究チームは、犬を対象にした実験においても、同様の行動が観察されると予想していました。

しかし、実際の実験結果では、犬がグループ2のような「ウソをついている人」を信頼する割合は、グループ1の「誤った指示をする人」を信頼する割合よりも低いことが明らかになりました。

グループ1の「誤った指示をする人」の場合、約半数の犬が指示に従わなかった一方、グループ2の「ウソをついている人」の場合は、その割合が約3分の2とより高くなりました。
グループ1の実験において、約半数の犬が誤った指示に従った理由については、犬が人間の指示を無視するのが困難な点も影響しているのではないかと指摘されています。

これにより、犬は人間を注意深く観察しており、正式なトレーニングの場以外でも常に人間から学んでいる可能性があると考えられます。

まとめ

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今回ご紹介した実験から、犬は生まれながらにして人間とコミュニケーションを取る能力を持ち、ウソですら見破る可能性があることがわかりました。

このような犬の能力に関する研究の進展により、私たちは犬の本質をより深く理解し、愛犬との関わり方をより良くできると期待しています。

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