路上喫煙が禁止になり、喫煙所が減り、さらにはカフェも全席禁煙のところが増えてきました。喫煙者の方にとっては「風当たりが強い」と感じるかもしれませんが、禁煙するにはそれなりの理由があります。景観を乱す、受動喫煙による健康被害などなど。
この記事では、それらの理由のうち「タバコのペットに対する影響」という一点に絞って解説していきます。
この記事の目次
受動喫煙のペットへの影響
人間にとって受動喫煙は有害であり、胎児や赤ん坊に対してより大きな悪影響を及ぼすとされていることは、もう周知の事実かと思われます。しかし、受動喫煙がペットに及ぼす影響はまだあまり知られていません。
副流煙がどれだけ有害なのか
それを知るには、まず主流煙と副流煙の違いについて説明する必要があるでしょう。
主流煙とはタバコの吸い口から吸い込む煙のことで、副流煙とはタバコの先から出る煙のことを言います。吸い口には有害物質をカットするためのフィルターがついていますが、タバコの反対側にはついていません。このことから、副流煙のほうが主流煙よりも有害であるとされています。
それでは、主流煙と副流煙には具体的にどれほどの違いがあるのでしょうか。
厚生労働省によると、副流煙には主流煙と比べて2.8倍のニコチン、3.4倍のタール、4.7倍の一酸化炭素が含まれているとされています。また、副流煙のなかにはそれとは別にベンゾピレンやニトロソアミンといった発ガン性の物質も含まれています。
副流煙と動物
2010年、厚生労働省の研究班により、年間6800人ほどが受動喫煙の影響によって死亡していると発表されました。
この値はあくまでも対象を人に絞っての推計値です。一年にどれほどの数のペットが受動喫煙のせいで亡くなっているかの数値が政府から発表されたことはまだありません。しかし、人よりも体格の小さいペットのほうがタバコの副流煙の影響を強く受けることは想像に難くありません。
それに加えて、タバコの煙は空気よりも重いため、熱を帯びて上昇したとしても、最終的には下方に有害物質がたまります。床に近い位置で生活する犬や猫は、より大きな影響を受けてしまいますよね。
三次喫煙とは
下降した有害物質は最終的にモノに付着します。壁紙やカーペットにつくのは言うまでもありませんが、おもちゃや毛布、さらにはペットの被毛にも付着します。
そうすると、ペットがおもちゃを口にくわえたり、飼い主の顔をなめたり、グルーミングを行うことでタバコの有害物質が体内に入ってしまいます。これを三次喫煙と言います。
タバコによる健康被害
ここまでで、ペットがどのようにしてタバコの被害を受けるのかを理解できたかと思います。続いて、タバコに含まれる有害物質がどのような病気の原因となるのかを見ていきましょう。
犬への影響
受動喫煙により、犬の「肺ガン」「鼻腔ガン」「副鼻腔ガン」の発生率が上がることが報告されています。
ミニチュア・ダックスフントやボルゾイなどの鼻の長い種類の犬は鼻のガンにかかることが多く、フレンチブルドッグやパグ、ボストンテリアなどは肺ガンにかかることが多いと言われています。体内に取り込まれた発がん物質がどこまで到達するか、ということが関わっているようです。
また、ガンだけでなく、気管支炎やぜん息などの呼吸器疾患やリンパ腫になるリスクも高まることがわかっています。
猫への影響
もちろん、犬だけでなく猫も影響を受けます。特に、猫の場合は毛づくろいのためにグルーミングを行うので、被毛に付着していた発ガン性の物質が口腔内に入ります。これは猫の口腔ガンの発症要因のひとつとして考えられています。
また、リンパ腫の原因に関する研究では、除草剤に次いで二番目に大きな要因がタバコであると考えられています。喫煙家と5年以上同居していると、猫のリンパ腫の罹患率が2~3倍上がるという推定もあります。
さらに、タフツ大学の研究機関は、5年以上副流煙にさらされていた猫は猫白血病にかかる確率が2倍になると発表しています。
最後に
ここまで見てきたとおり、人間よりも体格の小さな犬や猫はタバコの悪影響をより強く受けるようです。ハムスターや文鳥、亀などのより小さなペットが家にいる場合は、さらに深く注意する必要があるでしょう。
「分煙すれば大丈夫」と考えている方もいるかもしれません。確かにペットがいる部屋で吸うよりは影響を多少抑えられるでしょう。しかし、それでも衣服や持ち物、あなた自身によって部屋の中に有害物質が持ち込まれてしまいます。
5/31は世界禁煙デー。ペットのことを思うのであれば、この機会に思い切って禁煙してみませんか?