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いぬお手入れ

獣医師が教える子犬のしつけ②〜デンタルケアで口から健康づくり

相澤 啓介 獣医師

動物は食べることでエネルギーを摂取しますが、口腔内の環境が悪くなると食欲の低下に繋がり、健康を損なってしまいます。

人間のデンタルケアが大事なように、犬についても健康を維持する上でデンタルケアは欠かせません。しかし、成犬になってから歯磨きを始めるのは少し大変。できれば子犬の頃から歯磨きに慣れさせておきたいものです。

本記事では、犬にデンタルケアの必要性と、具体的な方法について解説していきます。

意外と多い犬の歯周病


人間の歯周病対策の必要性はよく知られていますが、今や犬にとっても歯周病は一般的な疾患。現在、3歳以上の犬の約80%が歯周病にかかっているというデータもあるのです。

では、そもそも犬の歯周病はどんなものでしょうか。
原因や症状について見てみましょう。

犬の歯周病の原因

犬の歯周病は歯肉が腫れる歯肉炎と、歯を支えている歯周組織の炎症である歯周炎に分けられますが、どちらも歯垢や歯石中の細菌によって引き起こされます

犬は人間と比較して虫歯になりにくいと言われています。
これは犬の唾液が弱アルカリ性であるためですが、一方でこのアルカリ性の唾液によって速いスピードで歯垢が歯石に変化してしまいます

歯石は通常の歯磨きでは除去が難しいため、歯石の細かい隙間に細菌が繁殖しやすい環境ができます。その細菌が原因で歯周病が発生するのです。

歯石を除去する処置は麻酔下で行うことが望ましいため、犬にとって大変な負担になります。愛犬のためにも毎日しっかり歯の汚れを落としてあげることが大切です。

歯周病の症状

歯肉炎

まずは歯肉炎が起こります。
歯茎の炎症によって、口臭、食欲の低下、歯茎からの出血などが現れ、固いものを食べにくそうにします。

歯周炎

歯肉炎が進行すると歯周炎となり、歯が抜けたり顎の骨が折れたりします。
歯周炎まで進行するまでに動物病院を受診されることがほとんどですが、口腔内の異常になるべく早く気づけるよう、普段からデンタルケアの際に口の中の様子を確認しましょう。

歯周病と他疾患の原因にも

歯周病は口腔内の環境だけでなく、呼吸器や循環器などの全身の状態に影響を及ぼします。

口と鼻は解剖学的に近い位置にあるため、口腔内の炎症が鼻の中に波及することはよくあります。すると鼻炎の症状として、くしゃみ、鼻汁などが現れます。さらに進行すると根尖膿瘍(こんせんのうよう)となり、頬の皮膚に穴が空き、そこから膿が出ることもあります。

また、口腔内の細菌が血液を循環し、心臓や腎臓で繁殖することで心臓病や腎臓病を引き起こすこともあります。

歯周病を予防するためにもデンタルケアは重要!

これら歯周病の原因は、歯垢が歯石に変化すること、そこで細菌が異常繁殖することです。

つまり、日々のデンタルケアによって歯垢を除去していれば、歯周病は予防することが可能です。
大きな病気に進展する前に、デンタルケアの習慣をつけていきましょう。

子犬の時期に始めることが理想ですが、成犬でもゆっくりステップを踏めばできるようになりますので、これまでデンタルケアの習慣がなかった方もこれを機に始めてみることをおすすめします。

デンタルケア・歯磨きの仕方


歯周病がどんなものかわかったところで、具体的にデンタルケアの方法を紹介します。
お家でも簡単にできるので、試してみてください。

ステップ1. 口の周りを触ってみる

まずは顔周り、特に口の周りを触らせてくれるようにしていきます。

犬は鼻先や口の中を触られることを嫌がりますので、いきなり顔ではなく、頭を撫でて褒めることを繰り返していき、徐々に口に近づけていきます。その際に、犬を飼い主さんの膝の上に乗せてあげて安心感を与えてあげるといいかもしれません。

口の周りを触れるようになったら、唇をめくって全ての歯を見せてもらえるようにします
このステップが一番重要です。焦らずに、犬が嫌がらない程度に習慣づけていきましょう。

ステップ2. 指にガーゼを当ててみる

口の周りを触ることに慣れてきたら、指に市販のガーゼを巻いて歯に触ったり、歯茎をマッサージします。

この時、歯の内側も触れるといいですね。動物病院などにある歯みがきペーストを用いれば、これだけでも立派なデンタルケアとなります。

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ステップ3. 歯ブラシに慣れさせる

ガーゼだけでは歯の隙間の歯垢を除去することは困難なため、できれば歯ブラシを使用します。

まずは歯ブラシを好きになってもらいます。少しかじらせたりして、壊れてもよい歯ブラシをおもちゃ代わりに遊んであげましょう。
遊ぶ際は誤飲を防ぐために、絶対に目を離さないでください。

ステップ4. 歯磨きで歯を磨いてみる

歯ブラシに対する抵抗がなくなってきたら、実際に歯を磨いていきます。

力を入れすぎず、歯茎を傷つけないように歯ブラシで優しく歯を撫でてあげる感覚です。長時間我慢ができない子は、上の奥歯や犬歯といった歯垢が付着しやすい箇所を重点的に磨きます。

使用する歯ブラシは、毛先が固すぎないものが望ましいです。どうしても歯ブラシを嫌がってしまう場合は、無理をせずにガーゼを用いたデンタルケアに切り替えましょう。

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歯みがきガムは有効?


噛むことで歯垢を物理的に落とす効果が得られるガムがあります。

噛ませるだけで手軽なこともあり、利用する人も多いのではないかと思いますが、ガムでは一部分の偏った部位の歯垢しか除去できません。

あくまでもメインは歯みがきで、補助やストレス解消として歯みがきガムを使用することをおすすめします。

また、市販のガムより動物病院でのみ購入できるものが良いでしょう。こちらの歯みがきガムはおすすめできます。

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まとめ

デンタルケアは日常でとても大切な習慣ですが、一方で「たかが歯周病」と考える人がいることも事実です。人間でもそう考えている方は多いのですから。

しかし、その結果、苦しむのは愛犬だということを忘れてはいけません

現在、犬の寿命も延びてきています。健康に毎日を過ごすためにも、飼い主にできることをしてあげましょう。そして、愛犬の食べ物を食べる楽しみ、健康に生きる権利を守ってあげてください。

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