【2019年改正動物愛護法】マイクロチップ装着の義務化の目的と懸念に迫る

2019.08.02
【2019年改正動物愛護法】マイクロチップ装着の義務化の目的と懸念に迫る

2019年6月参院本会議にて、議員立法の改正動物愛護法が全会一致で可決、成立しました。

犬猫の販売を認める時期を、これまでの生後7週超えから生後8週超えに改定すること、犬猫へのマイクロチップの装着・登録の義務化、ペットの虐待に対する厳罰化などが改正法の主な柱として盛り込まれています。

今回はその中でも特に、マイクロチップ装着の義務化に関してお伝えしていきます。

この記事の目次

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マイクロチップって何?

マイクロチップ
マイクロチップは「動物の個体識別」を目的とした直径2mm、全長11~13mmの円筒形の電子機器で、15桁の番号が書き込まれたICが封入されています。この番号を読み取り機で読み取ることで、登録された動物の名前や生年月日、種類に加え、飼い主の名前や住所・連絡先を確認できます。

マイクロチップの埋め込みは、少し太い注射器のような専用の埋め込み器を使って行われ、犬猫であれば通常、首の背面の皮下に埋め込まれます。なお、マイクロチップの表面は生体適合ガラスで覆われており、埋め込みによる副作用はほとんどないようです。

今回の法改正で、ペット販売業者に対し、飼い主にペットを販売する前にマイクロチップを装着することが義務付けられることになりました。販売業者が装着したマイクロチップに、飼い主が後から情報をデータとして登録できるようになっています。

ちなみに、動物愛護団体等が犬猫を一般の飼い主に譲渡する場合や、すでに犬猫を飼っている場合には、義務ではなく「努力義務」になる見通しです。

マイクロチップ義務化の目的

迷子
これまでもマイクロチップは多くのペットの飼い主の間で普及していましたが、マイクロチップの装着を法律で義務化することにはどのような目的があるのでしょうか?

虐待・遺棄防止

マイクロチップが装着されていることで、飼い主は自分の情報が書き込まれていることを自覚するため、虐待や遺棄を抑制する効果が期待されています。

義務化される前からペットにマイクロチップを装着する飼い主はたくさんいましたが、「マイクロチップを自主的に装着するような人の中に虐待や遺棄をするような人は少なく感じられるため、そうした問題の防止にはなかなか繋がりにくいのではないか?」という意見もあり、今回の義務化には期待の声があがっています。

マイクロチップの装着による虐待・遺棄対策に加え、これまで動物の殺傷に対して課せられていた罰則は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」から「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」へ強化され、虐待についても1年以下の懲役が加えられることになりました。

迷子のペットの飼い主探し

災害等で迷子になってしまった犬猫を発見した際、マイクロチップが埋め込まれていればすぐに身元を確認でき、飼い主の元に届けられます。現時点では、飼い主が見つからない保護動物は最悪の場合、殺処分されてしまいます。マイクロチップの埋め込みにより、そのような災害時にはぐれてしまっても飼い主の元に戻ってくる可能性が高まることが期待されています。また、これにより迷子になってしまったペットの殺処分も減らせるかもしれません。

首輪の鑑札で身元を特定できる場合もありますが、室内犬の場合は散歩のときしか付けなかったり、何かの衝動で外れてしまう可能性もあります。マイクロチップであれば常に身体の中に埋め込まれており、外れる心配もありません。

ペットの盗難防止

首輪の鑑札等は簡単に偽装できてしまうため、ペットを盗まれたとき、証拠としての効力は比較的小さいと言えるでしょう。

一方で、マイクロチップは体内に埋め込まれており、取り外し・書き換えをすることができないので、決定的な身元証明として有効です。

マイクロチップ義務化への懸念

ハト
以上のように、さまざまな効果が期待されて義務化されることが決まったマイクロチップですが、問題点もいくつか指摘されています。

100%情報が読み取れるわけではない

動物が怯えたり暴れたりして上手く読み取り機をあてられなかった場合や、機械の不具合により情報の読み取りに失敗することがあります。

さらに、マイクロチップには種類が複数あり、マイクロチップと読み取り機が異なる規格であった場合、読み取りに失敗することもあり、今後、国全体として規格の統一を行っていく必要があるでしょう。

ペットと野良の差別化に繋がる?

販売される動物へのマイクロチップ装着を義務化することで、マイクロチップが埋め込まれている「ペット」と、埋め込まれていない「野良」の権利を差別化することにつながるのではないか、という意見もあります。

ペット同様、野良猫・野良犬への虐待は動物愛護法で禁止されていますが、マイクロチップの義務化により、マイクロチップが埋め込まれていない動物は飼い主がいないとみなされ、処分の対象になりやすくなるかもしれません。マイクロチップの義務化は、ペットの殺処分を減らせるかもしれませんが、ペットとして飼われている動物と、そうでない動物の権利に違いを生み出す原因となってしまう可能性もありそうです。

法律はどこまで動物を守れるか?

法律
今回は、2019年6月に可決された改正動物愛護法について、主にマイクロチップの装着義務化に焦点を当てて考えました。

マイクロチップの埋め込みには、ペットの虐待や迷子、盗難対策などの効果が期待されています。一方で、画期的なマイクロチップでも、不確実性や野良として生きる動物の権利の差別化といった懸念も寄せられています。

また、全ての人が法律を遵守するとは限らず、法律が全ての動物の権利を確実に守れるわけではありません。動物の権利を守るには、法律だけではなく、やはり個人個人の意識も重要でしょう。

そして、法律はそれがどのように運用されるかが最も重要になってきます。法律だけ制定されても、その運用と監視が機能しなければ、何の意味もありません。私たち、飼い主も自分たちのペットに関する重要な法律ですので、施行後、どのように運用されるのか注目していきたいですね。

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