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かわいいけど飼うのは違法!シカをペットにできない理由とは

2020.07.15
かわいいけど飼うのは違法!シカをペットにできない理由とは

6月上旬、東京都の足立区で、野生のシカが捕獲されました。
捕獲されたシカが区の施設で保護されることがメディアで報じられると、区には「かわいそうだから引き取って飼育したい」という問い合わせが寄せられました。

しかし、野生鳥獣であるシカを飼うことは法律で禁止されており、原則として飼うことはできません。一方、シカは害獣として扱われているため、野生に返すことも難しく、殺処分の可能性も十分にあるといいます。

そもそも、なぜシカを飼ってはいけないという法律ができたのでしょうか?
また、シカが害獣として捕獲・駆除されるようになったのには、どのような原因があるのでしょうか?

この記事の目次

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なぜシカを飼ってはいけないのか?

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シカの飼育は、鳥獣保護管理法(正式名称:鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)によって原則禁止されています。

では、この鳥獣保護管理法とはどのようなものなのでしょうか?

鳥獣保護管理法の目的

そもそも、鳥獣保護法(鳥獣保護管理法)はどのような目的で制定されたのでしょうか?

まずは第一章第一条を見てみましょう。

第一条 この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。

条文から、鳥獣の保護、管理、狩猟の適正化によって、「生物多様性」と「人間の生活環境、農林水産業」の2つを守っていくことを主な目的にしていることがわかります。

鳥獣保護法の歴史

鳥獣保護法の歴史は、1896年に成立した「狩猟法」まで遡ります。狩猟法は、狩猟の際の安全・秩序の確保を目的としていましたが、何度か法改正を重ねる中で、狩猟して良い鳥獣と、それ以外の鳥獣が分けられるようになり、鳥獣保護の意味合いを持つようになります。

また、生態系保護や、生活や農林水産業の保護の意味合いも含むようになり、2002年の鳥獣保護法全部改正にて、現在の鳥獣保護法の基盤が作られました。

2014年の改正で「管理」が色濃くなった

2014年に鳥獣保護法が改正されると、今まで以上に鳥獣個体数の「管理」の意味合いが強くなりました。

この背景には、1980年頃からの30年余りで、ニホンジカやイノシシの数が爆発的に増え、それに伴う鳥獣被害が増えたことが原因だとされています。

これに関して、環境保全団体からは、「生態系保全の意味合いが薄れ、増えすぎた鳥獣の管理に偏ることで、減りすぎた鳥獣の保護への考慮が不十分である」との非難も寄せられました。

シカの数は爆発的に増えた?

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環境省によると、1978年から2014年までの36年間で、ニホンジカが約2.5倍まで増えたとされています。

では、ニホンジカはなぜこんなにも増えたのでしょうか?また、ニホンジカの増加でどのような影響が出ているのでしょうか?まずは、一般的に言われている説をご紹介します。

なぜ増えたのか?

ニホンジカが増えた理由として、一般的に言われているのは、「人口の変化」「オオカミの絶滅」「温暖化」の3点です。

人口の変化

明治以降、中山間地域に人口がたくさん流れ込み、耕作地を開拓していったことで、野生生物が一気に減少しました。やがて、都市部に人口が流出したため、中山間地域では野生生物が再び数を増やした、と考えられています。また、人口減少と少子高齢化によって、狩猟人口が減ったことも原因の1つだとされています。

オオカミの絶滅

ニホンジカの天敵である、ニホンオオカミの絶滅も、大きな原因だと言われています。かといって、海外からオオカミを導入すれば、生態系に悪影響を及ぼす可能性があるため、無闇に天敵を放てば良いというわけではありません。

温暖化

気候変動によって、積雪が少なくなり、ニホンジカが生息できる地域が増えたことも、ニホンジカの増加に繋がったとされています。

なぜ「害獣」なのか?

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ニホンジカはとてもかわいらしい見た目をしていますが、鳥獣保護法では「害獣」として取り扱われています。その理由は、ニホンジカが数を増やしたことで、人間と自然環境に被害が及ぶようになったからです。

人間に与える被害

人間への被害は主にニホンジカが農作物を食べてしまうという被害です。そのため、電気柵を用いる、銃声を発する、罠を仕掛けるなどして、農家の人たちは様々なシカ対策を試行錯誤しています。

自然環境に与える被害

シカが増えすぎてしまえば、当然のことながら全体の食べる量も増えます。すると、山の中の植物が減ってしまったり、樹皮をはいで食べてしまったりします。全ての生き物は生態系のなかでつながりを持っていますから、ひとつバランスが崩れれば全てに影響が及ぶことになるのです。

「シカは異常に増えているわけではない」と考える専門家もいる

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一般的に「シカは異常に増えている」と考えられている一方で、「確かに1970年頃と比較すると個体数は増えているが、今の状況が異常と考えるのは早計である」とする考え方もあります。

北海道大学の揚妻准教授によると、1970年よりもっと前の自然環境を考えると、オオカミが健在していた時期でもシカの数は今と同じくらいいたと推測することができ、1970年頃のシカの数が異常に少なかったという方がむしろ妥当だというのです。

つまり、人間の介入が少なかった本来の自然環境的には、シカの数を一生懸命減らそうとするよりむしろ、シカがたくさんいる状態を維持できる環境が望ましい可能性もあるということです。

シカと人間生活

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シカが増えていると考えるにしろ、現在が正常であると考えるにしろ、いずれにしても人間の営みがシカの生態に影響を与えてきたことには変わりありません。

シカに限らず、「かわいいから」といってすぐにペットにしてしまったり、飼えなくなってしまって野生に返すなどといった行為も、少なからず生態系に影響を与えてしまいます。

飼ってはいけないとされる動物は飼わないこと、また、飼い始めたペットは最後までしっかり面倒をみることを、ひとりひとりがしっかり守っていくことは、地球上の生態系や私たち自身の生活を守る上で欠かせないことなのです。

足立区で捕獲されたシカのその後

今回足立区で捕獲されたシカは、区からの依頼に応じた千葉県の市原ぞうの国が引き取りました。「エスケープしてきた」ことにちなんで「ケープくん」と命名され、検疫後、体調などを見ながら一般公開時期を決めるそうです。

ツイッターやフェイスブックなどでもケープくんの様子が定期的に報告されていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

市原ぞうの国
HP:http://www.zounokuni.com/
ツイッター:https://twitter.com/IEK_SW_official
フェイスブック:https://www.facebook.com/zounokuni/

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