肥満は、糖尿病や関節疾患などに深く関わると同時に、夏季には熱中症のリスクにもなりかねません。
痩せるためには運動も大事ですが、忙しくてあまり外出できない、暑すぎて長いこと外にいられないなど、運動には様々な支障もあります。
そこで、今回は肥満対策に大切なもう1つのポイント、「食事」から犬の生活を見直してみましょう。本記事では、食事による犬のダイエットについて、獣医師が指南していきます。
この記事の目次
肥満と病気のリスク
一般に、理想体重から15%程増えた状態を肥満と評価します。ここでの理想体重とは、生後1歳齢の時の体重だといわれています。
では、肥満にはどのようなリスクがあるのでしょうか?
人間にとって肥満は万病の元ですが、それは犬にとっても同様です。肥満によって、膝や腰などの関節への負担、脂肪に内臓が押されることによる内臓への負担などが危惧されます。また、全身麻酔の際にも、標準体型の犬と比較して麻酔リスクが高くなるという傾向もあります。
いざという時のためにも、体型はしっかりと維持しておきたいですね。
ボディ・コンディション・スコア(BCS)で愛犬の体型を知る
適切な体型を知る目安として、「ボディ・コンディション・スコア(BCS)」があります。
これは、犬の体型を5段階もしくは10段階に分類し、体型を数値化することで客観的な体型の評価を可能にするものです。
理想の体型は、上から見たときに腰にくびれが見える、軽く肋骨が触れる程度であるBCS3(5段階)、またはBCS4〜5(10段階)です。
犬を太らせるのは人間
犬が太ってしまう原因は人間にあります。愛犬がかわいいのはわかりますし、そのかわいい愛犬に好かれたいという気持ちもよくわかります。
しかし、だからといって、食べ物をあげすぎてしまったり、身体に悪いものをあげてしまうのは愛犬のためになりません。
人間のオヤツは犬には危険?
クッキーやケーキ、アイスクリームなどの人間のオヤツを、愛犬にあげていませんか?
人間の食べ物の多く(特にスナック菓子など)は、犬にとって糖分や塩分などが多すぎます。
また、果物も意外と糖分が多いので、自然由来だからと油断して与えすぎると、肥満の原因となります。
オヤツは適切に活用しよう!
トイレや社会化のトレーニングなど、生活に必要なしつけを行う際にご褒美として与えることで、オヤツは最大限の効果を発揮します。
カロリーをきちんと計算し、塩分や糖分が少ない犬用の食べ物を適切に選び、与える量を間違えなければ愛犬との友好な関係を築くツールとなるでしょう。
その際には、家族の中でしっかりとオヤツのルールを決めておきましょう。
ただ単に「あげすぎないようにしようね」と言うのではなく、1日にあげていいオヤツの量を把握するようにしましょう。1日分をタッパーなどに入れておくことで、ついついあげすぎてしまうなどといったことが防げます。
適切な給餌量とは?
ダイエットのためには、ただエサの量を減らせばいいというわけではありません。1日にどのくらいのカロリーが必要なのか、今のフードがどのくらいのエネルギー量なのかを把握しましょう。
ダイエットしたい場合には目標体重を設定し、無理のない範囲で給餌量を決めます。体に負担をかけないよう、獣医師と相談しながら目標体重を設定しましょう。
また、途中でお腹が空いてしまい、食べ物をしつこくねだってくるようなら、1日の給餌量を変えずに食事回数を増やしてみましょう。
犬は少ない量でも、何回も貰えた方が満足度も高いと言われています。オヤツも食事も少ない量を何度も与えたほうが、満足感を与えることが可能です。
適切な給餌量を計算してみよう!
以下のサイトでは、犬の年齢と体重などを入力すると、1日に必要なカロリーの目安を計算してくれます。与えているドッグフードのカロリーを入力すれば、1日に何グラム与えれば良いかも教えてくれます。
給餌量を設定する際の参考にしてみてください。
給餌量計算ツール
https://www.ugpet.com/guide/dog/food/ingredient/calorie/calc
各社のダイエットフード
ペット用品の各会社からダイエット食が販売されています。
ドライフードなら粒の大きさ、缶詰タイプなら味などが各会社で微妙に異なるので、愛犬の好みに合わせて選んであげるといいでしょう。
ダイエット食にしないと痩せない!
中には、常食として「太りにくい」フードもありますが、これらは「痩せる」ための食事ではなく、あくまで「太りにくい」食事ですので、続けていても減量は難しいでしょう。
また、太りにくい食事に変えたのに加え、さらにダイエットだからといって単純に食事量を減らしてしまうと、栄養不足になる恐れがあります。減量を目指すには、適切なダイエット食を、適切な量、与える必要があります。
以下では、主なダイエット食を紹介します。
ロイヤルカナンの「満腹感サポート」
低脂質と高食物繊維により無理のない減量とリバウンドに配慮しています。高食物繊維が故に、腹持ちがいいのが特徴です。
また、蛋白質もしっかり配合されているので、減量しながら筋肉量の維持が可能です。
ヒルズの「メタボリックス」
メタボリックスの最大の特徴は、脂肪代謝のサポートです。
フード中の脂肪を制限するのではなく、脂肪が燃えやすい体を作る、というものです。
私は、「トクホのお茶と同じような感覚」と説明しています。粒が小さく、小型犬でも食べやすいのも特徴です。
かさ増しについて
減量の際に、キャベツやササミで食事量を増やすのも有効です。ここで忘れてはならないのが、キャベツやササミにもカロリーはあることです。
かさ増しし過ぎて、結局食べ過ぎということもよくあります。本末転倒にならないように注意をお願いします。
肥満にならないために
一昔前よりも、優秀なダイエット食が登場したことによって、肥満の改善は少し楽になりました。しかし、まずは肥満にさせないことが重要です。
そのためには日頃の生活習慣が大切といえるでしょう。適切なカロリー管理、適度な運動、ストレスのない生活などが健康を守るために必要です。
暑くて外に出られない日には、家の中でたくさん遊ぶなどして、できるだけ身体を動かすようにしましょう。
まとめ
愛犬を可愛がるあまりに、ついつい食べ物をあげてしまうこともあるかもしれません。しかしそれは、長い目で見れば愛犬のためにはなりません。
肥満は、飼い主さんの適切な健康管理によって予防・改善することができます。
動物病院で、肥満の犬を診ない日が来ることを願っています。