【獣医師監修】気になる猫の多飲多尿!もしかしたら病気かも?

2024.04.23
【獣医師監修】気になる猫の多飲多尿!もしかしたら病気かも?

猫との生活で把握しておきたいパラメーターに、「飲水量」と「尿量」があります。

普段あまり気にしないという飼い主さんも多いかもしれませんが、これらを把握しておくことが、猫の健康を把握することにも繋がります。

今回は猫の多飲多尿について、獣医師が詳しく解説していきます。

この記事の目次

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多飲多尿とは

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多飲多尿とは、飲水量および尿量が通常よりもかなり増加することです。

具体的には猫の場合、一日で体重1㎏当たり45~50ml以上の飲水があれば多飲と判定します。また、尿量に関しては、一日で体重1㎏当たり40ml以上の排尿があれば多尿と判定されますが、尿量を自宅で測定することは困難です。

よって飼い主が異常に気付きやすいのは、「最近よく水を飲む気がする」という行動の変化でしょう。飲水量が増えれば尿量も増えますし、逆に尿量が増えれば飲水量も自然と増えます。どちらが先かはわかりませんが、多飲と多尿は対になって現れることが多いです。

猫の多飲多尿で受診した聞かれること

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自宅での飲水や排尿の様子は、飼い主にしかわかりません。猫は自分で症状を訴えられない分、家での自然な行動から情報を読み取る必要があります。

動物病院を受診する際は、以下のことを確認しておきましょう。

  • 飼育環境:暑すぎないか、水はいつでも飲めるか、食事の種類(カリカリ、缶詰など)
  • 元気や食欲の有無
  • 体重減少の有無:急激な体重減少があるか
  • 嘔吐や下痢の有無
  • 排尿時の様子:尿意の回数、尿失禁、尿臭、色など
  • 投薬歴:ステロイドや利尿薬など

猫の多飲多尿で考えられる疾患

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多飲多尿が見られた時に、ただ喉が渇いているだけなのか、病気による症状の一環なのか、判断を誤ると大変なことになります。自分で判断せず、必ず獣医師に相談しましょう。

ここでは、猫の多飲多尿が見られた際にどのような疾患が考えられるか、詳しく解説していきます。

慢性腎不全

猫で飲水量や尿量が増えた際に、最初に疑うべき病態です。
特に6歳齢を超えると腎臓病の罹患率が急激に上昇するというデータもあり、10歳以上の猫の30〜40%が腎不全にかかっているとも言われています。

「慢性」と名のつく通り、慢性腎不全は徐々に進行していく病気です。そのため、若い時期からの食事管理や定期的な健康診断などの腎臓に対するケアを行うことで予防しましょう。

甲状腺機能亢進症

甲状腺は、体内の活動を活発にするホルモンを分泌する臓器です。
甲状腺の機能が亢進(こうしん)すると代謝が異常に活性化され、食べても体重が落ち続けていく、攻撃性が増すなどの症状が見られるようになります。

また甲状腺機能の亢進によって、腎臓への血流が増加している可能性があります。このことから、甲状腺機能亢進症の治療を行った結果、隠れていた腎不全が現れてくることもあります。

糖尿病

猫の糖尿病はインスリンの作用不足による、いわゆる2型糖尿病が主と言われています。
また猫の糖尿病では、雄は雌の1.5倍発症しやすく、その危険因子として肥満、老齢、感染症、腫瘍、膵炎などが挙げられます。

尿検査や血中グルコース濃度の測定によって診断が可能であるため、高齢になってきたら健康診断を受けることをおすすめします。

尿崩症

動物の尿は、水よりも重く(濃く)作られており、それはバソプレシンというホルモンが関係しています。バソプレシンは腎尿細管における水の再吸収を促進し、尿を濃いものにします。

尿崩症はバソプレシンの分泌不足、あるいは作用不足によって尿が薄く大量に排泄される疾患です。水に近い尿を多量に排泄するために大量の水を飲みますが、それでも足りずに脱水することもある怖い病気です。

心因性多渇

運動不足やストレス環境下では自律神経の機能が低下し、多飲多尿を示すことがあります。

獣医療において「ストレス」と診断するのは非常に難しいことです。今一度飼育環境を見直し、猫にとって暮らしやすい環境を作ってあげてください。

医原性

利尿薬やステロイドなど、服用することで多飲多尿を示す薬剤があります。
もちろん、それらは他の疾患の治療のために服用しているのですが、十分な説明がないとびっくりすることも多いです。

投薬する際にはあらかじめ、その薬の作用について理解しておくことが重要です。

猫の多飲多尿で注意すること

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ただ漫然と生活していては、愛猫の異変に素早く気付くことはできません。

とは言っても全てに気を付けることは不可能ですので、ポイントを押さえて健康チェックをしていきましょう。

飲水量の把握

愛猫が高齢になってきたら、食事量などと同様に飲水量を把握しておきましょう。

外飼いであったり、複数の猫を飼育している場合には飲水量の把握は難しいかと思いますが、猫の多飲多尿を確認する上で一番有効な方法でもあります。

飲水用の器にどのくらい水を入れたのか、一日の最後にどのくらい水が残っているのかを確認すれば、おおよその飲水量が見えるはずです。内側にメモリのついた容器を使えば確認の際に便利です。

定期的な健康診断

やはり病気の早期発見には健康診断は欠かせません。猫の場合は、血液検査の他に尿検査も同時に行うといいでしょう。

自宅での飲水量および尿量の把握が困難でも、尿に異常が見られた場合には多飲多尿が見えてくることもあります。6歳齢を超えたら、少なくとも半年に一回は健康診断を受けましょう

まとめ

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腎不全や甲状腺機能亢進症など、猫で注意したい疾患では多飲多尿が見られることが多くあります。「たまたま喉が乾いているだけかな?」と思うこともあるかもしれませんが、愛猫に違和感を覚えたら、すぐに動物病院へ連れて行くようにしましょう。

一緒に生活する中で異変を見落とさない目を養うことが、愛猫の長生きの秘訣かもしれません。

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