グレーのきれいな毛並みとエメラルドグリーンの瞳が特徴の、ロシアンブルー。
筆者の動物病院にも連れて来られることが多い猫種で、きちんと手入れがされているロシアンブルーは、「カッコイイ」、「上品」という印象が強いです。
そんなロシアンブルーですが、猫種特有のかかりやすい病気はあるのでしょうか?
今回は、ロシアンブルーの好発疾患と、飼育環境の注意点を、獣医師が詳しく解説します。
この記事の目次
ロシアンブルーの好発疾患?
猫には、その品種によって遺伝的にかかりやすい病気があります。それは、人間がその猫種を作出する際に近親交配を続けたことによります。
しかし、ロシアンブルーには、猫種で特徴的な遺伝性疾患が存在しません。その意味で、ロシアンブルーは非常に優秀な猫種だと言えます。
ロシアンブルーは病気に強い?
ロシアンブルーには遺伝的に発生しやすい疾患はありませんが、生き物である以上、病気にならないというわけではありません。
他の猫種と比較して特別に免疫力が強いわけでもなければ、内臓が際立って丈夫なわけでもないのです。
他の猫達と同様に、病気の基礎知識を理解しておくことで、早期発見・早期治療につなげましょう。
ロシアンブルーの飼い主さんが知っておきたい病気
慢性膵炎(すいえん)
【症状】
元気消失、食欲不振、間欠的な嘔吐、体重減少など。
時に下痢、脱水、黄疸などが見られることも。
【原因】
急性膵炎の反復、または膵臓が長期にわたり糖尿病や他の疾患の影響を受け続けることによる。
【備考】
猫の膵炎は、胆管炎、胆管肝炎、肝リピドーシス、炎症性腸疾患との併発が多い。
また、トキソプラズマ感染症やヘルペスウイルス感染症によっても膵炎が誘発される。
糖尿病
【症状】
多飲多尿、体重減少、削痩、嘔吐、脱水、下痢、便秘、低体温など。
【原因】
猫は元々インスリンの分泌が少なく、アミノ酸からグルコースを作り出す代謝系が活発。
肥満、ストレス、感染症など、血糖値が上昇する因子、血糖値を下げられない因子が関わると糖尿病になりやすい。
【備考】
猫では糖尿病による神経障害が起こることが知られており、末期には腎不全が発症する。
慢性腎不全
【症状】
多飲多尿、尿色が薄くなる、食欲減少、体重減少、嘔吐、下痢、口内炎など。
【原因】
慢性的に加えられた腎臓への負担(傷害)を修復する過程で線維化が進行することで発症する。
【備考】
慢性腎不全は貧血や尿毒症を引き起こす。
骨折
【症状】
患肢の痛み、挙上など。
【原因】
外からの物理的な衝撃。
【備考】
家具の隙間に足を挟む、ドアに尻尾を挟むなどには注意。
甲状腺機能亢進症
【症状】
体重減少、脱毛、多食、嘔吐、多飲多尿、活動の亢進、攻撃性の増加など。
【原因】
ホルモン分泌能を有した甲状腺の片側性または両側性の過形成または腺腫。
【備考】
甲状腺癌によるものは全体の1~2%と少ない。
ロシアンブルーを飼う際のポイント
生き物ですから、気をつけていても病気が発生してしまうのは仕方のないことです。
しかし、病気によっては、日常生活を見直すことで発生のリスクを低下させられるものもあります。
1. 尿量の把握
ロシアンブルーに限らず、猫で最も注意したいのが腎臓病です。
猫は、人間や他の動物と比較して濃い尿を排泄します。
その濃い尿を作るために、腎臓には大きな負担がかかっている状態で、腎臓に対するケアを怠ると、加齢とともに腎臓病の症状が現れます。
腎臓の異変は外見では分かりませんが、尿量が増えた、尿が薄くなった、水をたくさん飲むようになったなどは、腎臓病のサインかもしれません。
毎日の排泄物を処理する際に、少しだけ気をつけてみてください。
2. 飲水量の把握
愛猫が一日にどのくらいの量の水を飲むのかは、腎臓病や甲状腺機能亢進症を発見する上で非常に重要です。
しかし、蒸発や、水飲み皿をひっくり返すなどによって正確な飲水量を計測するのは本当に難しいことです。
それでも、皿にどのくらい水を入れて、何時にどのくらい減っていたかを記録していくことによって、飲水量の増減のおおよその判断はつくと思います。
毎日の記録は大変ですが、できる範囲で構いませんので、日常の健康チェックを行いましょう。メモリ付きの容器を使うと便利です。
3. 若い頃の運動量は多め
ロシアンブルーは筋肉質で、他の猫種と比べると少しだけ必要な運動量が多い猫種です。
特に若いうちは、運動不足によるストレスから病気になることもあるため、注意が必要です。
遊んであげる時間を作る、猫が一人でも遊べる工夫をする、キャットタワーを設置するなど、考えてあげましょう。
もちろんその際に、小さなオモチャを飲み込んでしまう、高いところから落ちてケガをするなどがないように気をつけてあげましょう。
4. 定期的な健康診断を
例え病気を疑うような明らかな症状がなくても、安心ではありません。
猫は本能的に、自分が弱っている姿を隠す傾向にあります。つまり、食欲不振などの症状が現れた時には、すでに病気は進行してしまっていることが多いのです。
そこで、若いうちは1年に1度、シニア(7歳以上)では半年に1度の健康診断をオススメします。
「何もないから病院には行かない」のではなく、「何かあるかもしれないから行く」という意識を持てば、病気の早期発見に繋がります。
ただし、動物病院が極度に嫌いな子もいますので、その子の性格に合わせた健康管理プログラムを獣医師と相談することが重要です。
まとめ
ロシアンブルーは、性格の穏やかな子が多く、猫種特有の好発疾患もないため、飼いやすい猫種です。
大切な家族の一員であるという意識を忘れずに、病気にしない生活や、万が一病気になってしまった時にすぐに適切な対処ができる心構えを持っておきましょう。