サイベリアンとは、「シベリア」のことで、ロシア原産の猫種です。寒い地方に適応した長い被毛が特徴です。
日本でも飼育頭数が増えてきている人気の猫種ですが、かかりやすい病気がいくつかあることをご存知でしょうか?
今回の記事では、サイベリアンでが好発疾患と、日常生活で心がけたいお手入れや健康管理についてご紹介します。
この記事の目次
サイベリアンの基本情報
歴史
サイベリアンは、なんと1,000年もの歴史を持つとされる猫種です。ロシアが原産で、長い間ロシアでのみ繁殖されてきました。
19世紀後半にイギリスで行われたショーに登場しましたが、当時は冷戦の最中だったため、西側諸国への猫の流通は難しかったのです。
1990年代に入ると、冷戦が終結に向かい、ようやくサイベリアンもアメリカに渡りました。
その後、世界各地でサイベリアンは人気のある猫種となっていきました。
身体的特徴
極寒の地、シベリア出身だけあって、寒さに強く、とても頑丈な体をしています。全体的に丸くてどっしりとした体格ですが、太っているわけではありません。
雪の上でも歩けるように、足裏には「房毛」と呼ばれるふさふさの被毛があります。
成長の速度が遅く、成猫になりきるまでに約5年もかかると言われています。
性格
基本的にはおとなしく、飼い主に対しては従順で甘えん坊ですが、知らない相手に対してはそっけない一面があります。
また、猫には珍しく水を嫌がらない子が多く、獲物を追いかけて水の中に飛び込むこともあるようです。
サイベリアンの好発疾患
サイベリアンには、発生しやすい遺伝疾患がいくつかあります。これらはサイベリアンという猫種を作るため、あるいは存続させるために生まれてしまったものです。
また、毛が長いなどの身体的特徴も、健康維持のためには注意したい点です。
肥大型心筋症
【症状】
胸水貯留や腹水貯留による呼吸困難、運動不耐性(疲れやすい)、元気消失、食欲低下、嘔吐など。
【原因】
心筋が厚く硬くなることで心臓の拡張能が低下し、一度にたくさんの血液を拍出できなくなることで循環不全を呈する。
【備考】
左心房に血栓が形成されやすくなり、それが血流に乗って細い血管に詰まる血栓塞栓症を併発することが多い。塞栓しやすい部位は腹大動脈遠位(太ももの付け根辺り)や腎動脈付近で、それぞれ後肢の麻痺や尿産生停止を引き起こす。肥大型心筋症と診断された後は血栓形成予防の処置も同時に行っていく必要がある。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
【症状】
貧血、頻脈、運動不耐性(疲れやすい)、元気消失など。
【原因】
酵素であるピルビン酸キナーゼが先天的に欠損することで溶血性貧血が起こる。これは常染色体劣性遺伝によって伝達されることが知られている。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症や骨硬化症が進行し、造血能が低下する。また赤血球の寿命が短くなることで肝機能障害が現れることもある。
毛球症
【症状】
便秘、嘔吐、食欲不振、腹痛、腸閉塞など。
【原因】
グルーミング(毛づくろい)によって口から入った被毛が腸に詰まることによる。
【備考】
腸閉塞から腸穿孔、腹膜炎に進行することもあるため油断はできない。毛玉を溶解するフードやサプリメントを利用するのも良い。
多発性嚢胞腎
【症状】
元気消失、食欲不振、多飲多尿、嘔吐、貧血といった腎不全症状。進行すると無尿や乏尿となり意識障害、発作、重度の脱水が見られる。
【原因】
腎臓に多数の嚢胞が形成されることで腎機能が低下する。これには遺伝性が示唆されている。
【備考】
猫では年齢とともに腎不全を呈することが多いが、多発性嚢胞腎では比較的若い年齢でも腎不全を発症することがある。健康診断によって腎臓に嚢胞が無いか、腎機能が低下していないかはチェックすべきであろう。
サイベリアンの健康管理
サイベリアンの好発疾患には、遺伝子の異常によるものも少なくありません。
遺伝疾患は発生予防が困難だと思われますが、毎日の生活の中でしっかりと観察をすれば、取り返しのつかない事態は避けられるかもしれません。
ここでは、サイベリアンの好発疾患に基づき、日常生活でできる健康管理を見ていきましょう。
1. 毛玉を作らないように注意する
長毛のサイベリアンは、皮膚に毛玉ができやすいです。
猫はグルーミング(毛づくろい)によって被毛や皮膚の健康を守っています。
しかし、年齢を重ねるとグルーミングの頻度も減りますし、体型によっては口が届かない部位もあるかもしれません。
定期的にブラッシングを行い、毛玉を作らないようにすることが重要です。もし毛玉ができてしまっても、小さいうちに解いてあげましょう。
2. 余分な毛は取り除く
ブラッシングには、抜けた毛を取り除くという役割もあります。
グルーミングによって口から入った被毛が、消化管に詰まることもあります。飲み込んだ毛玉を上手に吐き出せる子も多いのですが、毛球症発生のリスクを下げるに越したことはありません。
柔らかめのブラシを用い、愛猫のストレスにならないような頻度でブラッシングをしてあげましょう。
3. 熱中症に注意
猫はもともと暑さに強い動物ですが、毛が長いサイベリアンは暑さに弱い猫種です。特に日本の夏の高温多湿は、猫にとって危険です。
エアコンなどを使用し、できるだけ過ごしやすい環境にしてあげましょう。
熱中症の症状としては以下のようなものがあります。異変に気づいたらすぐに動物病院に連絡しましょう。
- ぐったりしている
- 意識がはっきりしない
- 体が異常に熱い
- 歯茎などの粘膜が赤い
- 発作や嘔吐といった症状
4. 十分な運動量の確保
健康的な体型維持やストレス発散のためには、適度な運動が必要です。
毎日食べて寝てを繰り返すだけでは、不健康であることは明らかです。
水平方向だけでなく、上下の三次元的な動きができるよう、キャットタワーなどを設置してあげるといいでしょう。また、時間がある時には遊んであげたり、少しでも運動させることを意識してください。
まとめ
愛猫も生き物である以上、いつ病気をしてもおかしくありません。
万が一の時に迅速に対処できるよう、健康に関する情報は常に集めていきたいですね。
また、日頃から健康管理を徹底することで、愛猫との生活がより良いものになるように願っています。