【獣医師監修】デメリットはほとんどない?子猫の避妊・去勢手術

2023.06.28
【獣医師監修】デメリットはほとんどない?子猫の避妊・去勢手術

アメリカではシェルターから譲渡される子猫を中心に、生後8~16週での早期避妊/去勢手術が普及しています。これは譲渡後の繁殖を防止することで猫の殺処分数を減らす目的があり、実際に数字に表れています。

では、日本における猫の避妊/去勢時期はどうでしょう。推奨される年齢はあるのか、さらに早期に手術をする場合のメリットやデメリットはあるのでしょうか。

今回は猫の早期避妊/早期去勢手術について解説します。

この記事の目次

日本における猫の避妊/去勢時期

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日本の動物病院では、避妊/去勢手術は性成熟後の生後6~9カ月で行うことが多いように思います。

体が小さい、体重が少ない子は麻酔管理が難しく、ある程度成長してからの方が手術が容易となります。しかし、これは獣医師の技術的な部分によるもので、手術自体は生後2~3カ月からでも可能です。

避妊/去勢手術の推奨時期

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猫における避妊/去勢手術の推奨時期は特にありません

繁殖を考えていない場合、あるいは外に出したい場合には望まない妊娠を防ぐためにも子猫のうちに手術を受けさせるのが良いでしょう。

完全屋内飼育でも、万が一の脱走や災害などによる屋外への接触を考えると、子猫のうちの手術の検討はすべきかもしれません。

早期避妊/早期去勢のメリットとデメリット


生後8~16週での早期避妊/去勢を不安に感じるかもしれませんが、どんなメリットやデメリットが考えられるのでしょうか。

早期避妊/去勢手術のメリットは?

早期に手術を受けるメリットには以下の通りです。

  • 術後の回復が早い
  • 精神的なトラウマになりにくい

また、実施時期に関係なく、避妊/去勢手術を行うメリットには以下のものがあります。

  • 望まない妊娠を防ぐ
  • 外でのケンカの予防
  • 病気(特に生殖器疾患)の発生予防
  • 問題行動改善への期待

肥満傾向は避妊/去勢手術後で見られる

時期に関係なく、避妊/去勢手術を行うことで、ホルモンバランスの乱れや必要エネルギーの減少などによって体重が増えやすくなります。手術後は手術前以上にしっかりと運動する機会を作るなど、肥満にならないような対策が必要となります。

尿道閉塞を起こしやすくなる?

猫の場合、早期去勢手術により尿道の発達が未熟となり、将来的に尿道閉塞を起こしやすくなると言われていました。

しかし、現在ではこれは否定されており、去勢時期による尿道閉塞の発生頻度に差はないという研究結果が出ています。

長骨(橈骨や大腿骨など)成長板の閉鎖遅延が起こる?

卵巣や精巣から分泌されるホルモンには、骨の成長板を閉鎖させる作用があります。ヒトでも性ホルモンが分泌され始める思春期に骨の成長は止まります。

早期の避妊/去勢手術によって成長板の閉鎖が遅れ、成長に影響が出るのではないかという意見がありました。しかし、これも現在では問題ないという研究結果が出ています。

早期避妊/去勢手術のデメリットは?

これらのことから猫においては早期の避妊/去勢手術は、術後におけるデメリットはほとんど無いと言ってもいいかもしれません。太りやすいことぐらいでしょうか。

犬では早期に避妊/去勢手術を行うことで、犬種によっては特定の疾患の発生リスクが増大するという報告がありますが、猫ではそういった報告は今のところありません。しかし、麻酔や手術の難度が上がるため、早期避妊/去勢手術のに慣れている病院で行うことが推奨されます。

かかりつけの動物病院が早期の手術に対応しているかは、事前に確認しておくといいでしょう。

成猫/高齢猫での避妊/去勢のメリットとデメリット

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子猫の時期を過ぎてからの避妊/去勢手術についても触れておきましょう。

動物病院から避妊/去勢手術を勧められるのは子猫の時期ですが、成猫になってからでも手術を行うことは可能です。しかし、子猫の時期に比較してデメリットが目立つようになります。

  • 高齢になるにつれて麻酔のリスクが上昇する。
  • マーキングなどの問題行動が習慣化されている場合には改善が見られないこともある。

そのため、繁殖を考えていないのなら、早めの避妊/去勢が推奨されます。オスだから予想外の妊娠はしないし、去勢手術は考えていないという方も稀にいらっしゃいますが、猫の殺処分数を減らすためにはオスの去勢手術も重要です。

屋外に出る習慣のある子は、ケンカの抑制や望まない妊娠のリスクを減らすことができるので、早い段階での手術は考慮すべきでしょう。

まとめ

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猫における早期避妊/去勢手術は、日本ではあまり馴染みのないように思います。本来であれば、猫と一緒に暮らし始める前に、手術を受けさせるかを考えておくことが一番良いのですが、なかなか難しい部分もあるかもしれません。

この記事が、早い時期に手術を受けさせようか悩んでいる方の助けになれば幸いです。猫にとって一番良いのは何なのかをぜひ考えてあげてください。

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