日本全国には、猫が親しまれ祀られている神社や仏閣が数多く存在します。これらは、猫が日本の文化と歴史において特別な存在として扱われてきたことを意味し、多くの人々にとって猫は幸運や畏怖の象徴となっています。
この記事では、猫好きであれば訪れてみたくなる、西日本の猫にまつわる神社や仏閣についてご紹介します。
この記事の目次
①京都府「丹後 金刀比羅神社」
金刀比羅神社(ことひらじんじゃ)は、峰山藩7代藩主である京極高備によって建立された神社で、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)を祀っています。境内は約6,000坪もの広さがあり、本殿に向かうまでには約180の石段があります。そして、その中腹には非常に珍しい「狛猫」が鎮座する木島神社があります。
金刀比羅神社がある京丹後市峰山町は、丹後ちりめん発祥の地です。江戸時代頃から峰山の町には、ちりめん問屋や糸屋が軒を連ね、農家では絹を生産するための養蚕が盛んに行われていました。
養蚕の大敵は繭や蚕を食べてしまう「ねずみ」でした。ねずみを追い払う猫は、織物業で栄えた峰山地域にとって欠かせない存在として大切にされていました。そして、地元の糸商人や養蚕家たちによって、この狛猫が織物業の守護神として木島神社に奉納されました。
ちなみに、丹後の金刀比羅神社には数百匹もの亀が住む「亀の池」もあります。亀好きな方はこちらにも立ち寄られてはいかがでしょうか。
丹後 金刀比羅神社
京都府京丹後市峰山町泉1165-2(Googleマップ)
https://konpirasan.com/
②山口県「雲林寺」
雲林寺(うんりんじ)は、萩藩の藩祖である毛利輝元や、その家臣の長井元房らの墓がある天樹院の末寺です。なお、天樹院は廃寺になり、現在は墓所だけが残っています。
長井元房は猫を飼っており非常に可愛がっていましたが、主君である毛利輝元が亡くなると元房も殉死してしまいました。元房の飼い猫は主人の死を悲しみ、墓のそばから離れませんでした。そして、元房の墓前で四十九日間寄り添った後、舌を噛み切って亡き主人の後を追ったという悲しい伝説が伝えられています。
現在の雲林寺は、猫のおみくじや絵馬、そして数え切れないほどの可愛らしい猫の置物などが溢れる「猫寺」として親しまれています。
雲林寺
山口県萩市大字吉部上2489(Googleマップ)
https://www.facebook.com/neco.dera/
③徳島県「お松大権現」
お松大権現(おまつだいごんげん)は、通称「猫神さん」と呼ばれる神社です。ここには、福岡の有馬、佐賀の鍋島と共に日本三大怪猫伝の一つである「阿波の化け猫騒動」が伝わっています。
江戸時代の前期、庄屋の妻であったお松は、金の貸し借りの問題における奉行の非道な裁きに対し、死を覚悟して直訴しましたが、最終的に処刑されてしまいました。彼女は死の直前に飼い猫にその憎しみを伝えており、彼女の死後には村に怪猫が現れ、奉行の家などを祟り、仇討ちしたという伝説が伝わっています。
この悪人を倒したという伝説から、お松大権現は合格祈願を求める受験生にとって勝負必勝の神様として知られており、受験シーズンには多くの参詣者が訪れます。また、境内には約1万体の招き猫が奉納されており、その迫力に圧倒されることでしょう。
お松大権現
徳島県阿南市加茂町不ケ63(Googleマップ)
https://nekogami.jp/index.html
※「招き猫」については、こちらの記事もご覧ください。
9月29日は「招き猫」の日!縁起物になった理由とおすすめスポット
https://cheriee.jp/entertainments/37671/
④大分県「福良天満宮」
福良天満宮(ふくらてんまんぐう)は、学問厄除の神である菅原道真を祀っている神社です。こちらの境内には「赤猫社」こと「招霊赤猫社(おがたまあかねこしゃ)」が祀られています。
明治時代、臼杵では熱心に商売するあまり、地区同士の対立騒動が勃発し、この対立からケチに近い意味の「あかねこ」という言葉が生まれました。その後、この「あかねこ」という言葉に着想を得て赤い招き猫の置物を制作したところ、不思議なことにそれを持つ人々には良いことが続いたという話が広まりました。
そして、福を呼び込んでくれた「あかねこ」の魂を氏神様である福良天満宮に祀るため、1999年に赤猫社が建立されました。赤猫社の周りには「福猫たまりの井戸」があり、29体の赤猫石が祀られています。
福良天満宮
大分県臼杵市福良211(Googleマップ)
http://www.fukuragu.jp/
⑤長崎県「尾曲がり猫神社」
尾曲がり猫神社(おまがりねこじんじゃ)は、長崎の「尾曲がり猫」を調査・研究している長崎ネコ学会が運営しています。長崎は猫が多く住む地域で、その中でも「かぎしっぽ」とも呼ばれる、折れたように曲がったしっぽを持つ猫が多く暮らしています。
長崎ネコ学会によると、尾曲がり猫は鎖国時代にインドネシアに生息していた尾曲がり猫の祖先が、船のねずみ捕りの役割をしながら、日本で唯一海外と貿易していた長崎にやって来て、ここから日本全国に広がったのだそうです。
尾曲がり猫神社では、可愛らしい尾曲がり猫をモチーフにしたおみくじや絵馬、猫の健康長寿お守りなどがあり、店内の巫女さんにお願いすると、尾曲がり猫のご朱印もいただけるそうです。バラエティ豊かな尾曲がり猫グッズはオンラインでも購入できます。
建物内には、本物の神社と同じように賽銭箱や吊るされた鈴が備えられ、参拝ができるようになっています。なお、お賽銭はすべて全国の猫保護団体に寄付されるそうなので、チャリティー活動の一環として訪れてみてはいかがでしょうか。
尾曲がり猫神社
長崎県長崎市銀屋町2-15 古川町共同ビル1F(Googleマップ)
https://omagarinekoz.thebase.in/
※「かぎしっぽ」の猫については、こちらの記事もご覧ください。
日本猫に多い「かぎしっぽ」って?猫のしっぽの役割を解説
https://cheriee.jp/cats/28594/
まとめ
今回は、ねずみ捕りで人々を手助けした猫や飼い主に忠実だった猫、恐ろしい化け猫など、さまざまな猫にまつわる伝説が伝わる神社やお寺を紹介しました。これらの場所には猫の置物や可愛らしいグッズが販売されているところもありますので、猫好きの方にとっては楽しく参拝できるのではないでしょうか。
もし興味を持たれたら、ぜひ足を運んでみてください。