【獣医師監修】犬も認知症になる?好発年齢や予防法を解説

2024.11.05
【獣医師監修】犬も認知症になる?好発年齢や予防法を解説

近年、獣医療技術の向上によって、犬や猫の寿命は飛躍的に延びています。

一方で、長寿になるとともに、腫瘍など高齢動物に多発する傾向のある疾患も目にする機会が増えているように思います。さらにヒトだけでなく犬でも、認知機能障害によるQOL低下の可能性については見過ごせない課題となっています。

本記事では、犬の認知症について解説していきます。

この記事の目次

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認知症とは

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認知症とは、「日常生活に支障が生じる程度になるまで認知機能が低下した状態」を指し、何か特定の疾患を指す言葉ではありません。犬は言葉を話すことができないため、日常の行動の変化を察知し、早めに対処してあげる必要があります。

原因

犬の認知症の原因は、はっきりとはわかっていません。しかし、人間のアルツハイマー型認知症と同様、認知症発症犬では脳実質や血管壁にアミロイドβの顕著な沈着が見られたというデータがあります。

また、認知症を発症している犬の血中DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の濃度が低いことが関与しているのではないかという研究もあります。

好発年齢

何歳で発症するという明確なデータはありませんが、10~13歳での発症が多いようです。また、11~12歳で約28%、15~16歳で約68%の発生率であるという報告もあります。

大型犬や日本犬ではもっと早くに発症することも多いです。

一般的に高齢犬と言われる、小型犬では11歳、大型犬では8歳くらいから、行動の変化がないか観察しておきましょう。

好発犬種

犬の認知症は日本犬に多く、特に柴犬で多く発生する傾向があります。この理由については、まだ解明されていません。しかし、どの犬種にも発生する可能性があるため日本犬でないから安心ということではありません。

症状

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犬の認知症では、以下のような症状が現れることが多いです。

  • 吠え続ける、夜鳴き
  • 昼夜逆転
  • 過眠
  • 同じ場所をグルグル回る
  • 狭い場所に入りたがる
  • 頭を壁や家具に押し付ける
  • トイレ以外での排泄、失禁

しかし、これらの症状は認知症に特異的なものではなく、他の疾患(内分泌疾患や骨関節疾患など)でも見られることがあるため、鑑別には注意が必要です。

診断

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犬の認知症の診断は、問診と他の疾患の除外によって行われます。鑑別に挙がる疾患としては、脳腫瘍、脳炎、甲状腺機能低下症、腎疾患、各種整形外科疾患、高血圧などがあります。

これらを除外するために血液検査、画像検査、神経学的検査、MRI検査などを行うことがあります。

問診

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いつから症状があるのか、今一番困っていることは何なのかなどを聞くことが多いです。認知症判定のチェックシートを用いる動物病院もあります。

ただし、これらは飼い主さんの主観であるため、100%認知症だと断定するものではなく、あくまで「認知症の可能性がある」という補助的な診断となります。

治療

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認知症を根本的に治療するような方法はありません。生活の上で困っていることに対して適切な環境を整えてあげることが大切です。

例えば、トイレ以外で排泄をしてしまう場合、トイレの数を増やす、トイレまでの道のりに段差があれば取り除く、愛犬の生活圏を狭くしてみるなどが挙げられます。昼夜逆転しているなら昼間に散歩に連れ出して生活リズムを整えるのも悪くありません。

「介護」という言葉を使うと重くなりますが、できる限り愛犬と一緒に、より良い生活が送れるようにお手伝いします。

内服薬の投与

例えば夜鳴きがひどい場合には、抗うつ薬や抗不安薬などの投与が行われる場合があります。これは夜間に興奮してしまう神経を落ち着かせることで、睡眠を促す目的です。一方で、日中も、ややボーっとしてしまうかもしれないというデメリットもあります。

また、これらの薬剤に対して、投与が不安だという方もいらっしゃいます。かかりつけの獣医師としっかりと相談し、何が最適かを探っていきましょう。

安楽死

愛犬が認知症になってしまい、生活環境が一変してしまうことで、飼い主もまた精神的にも肉体的にも参ってしまうケースがあります。その場合、安楽死の相談に来られる方もいらっしゃいます。

かかりつけの動物病院の方針にもよりますが、やれることはたくさんあるので、まずは獣医師にご相談ください。しっかりと話し合った上で、一番良い提案ができればと思います。

予防

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認知症を100%予防する方法はまだわかっていません。しかし、DHAやEPAといったω-3脂肪酸やビタミンEなどを摂取することで脳の老化を穏やかにすると言われています。

また、犬の認知症がヒトと同じようなものであると仮定した場合、適度な外気浴や知育玩具の導入などで脳に適度な刺激を与えることで、認知症の予防に繋がるかもしれません。

日常的に行動の変化がないかを確認し、疑わしい徴候が見つかったときに早めに対処することで、その後の症状の進行を緩やかにすることが期待できます。

まとめ

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認知症の症状はゆっくりと進行するため、毎日一緒にいると小さな変化に気づきにくいかもしれません。しかし、その変化に気づかないでいると認知症や他の疾患が進行してしまったりする場合があります。

気になることがあれば、抱え込まずに気軽に動物病院に相談してください。

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