母猫のいない生まれたての子猫が離乳食期頃まで育ってきたら、いよいよ社会化期に入ります。社会化期は、子猫がさまざまな経験を通して人や他の動物とのコミュニケーションを学び、環境に適応していく時期です。性格や性質を作り上げていく大切な時期だといえるでしょう。
子猫の社会化期は、飼い主さんとの関わり次第でフレンドリーな猫に育つ可能性が高まります。この記事では、具体的にどのように接していけばいいのかを解説します。
この記事の目次
離乳食期からが子猫の社会化期
離乳食を食べはじめる生後3週から9週目あたりは、子猫の社会化期です。生後2週頃からを社会化期と呼ぶケースもあります。
では、社会化期とは一体どんな時期なのでしょうか。
社会化期とは
社会化期は、人や他の動物とのコミュニケーションを学び、良好な関係を築く時期です。他者との触れ合い、走る、ジャンプするといった経験などを通して、性格や性質、運動の能力を築きあげていくのです。音やニオイなどの刺激にも慣れる時期だともいえます。
母猫やきょうだい猫たちと過ごして社会性を身に付けていくのが本来の姿です。子猫同士がじゃれ合うのも、お互い「どの程度までなら大丈夫?」と学んでいるのですね。追いかけっこをして、運動能力も高めています。母猫がいない子猫は、人が代わりにいろいろな状況に慣れさせる必要があるのです。
社会化期の猫育てが大事な理由
猫の社会化期が大切なのは、過ごし方によってどのような猫に成長するかが大きく左右されるためです。フレンドリーな猫になったり、少々の刺激にも動じない猫になったりするのも、社会化期の過ごし方にかかっているといえるでしょう。性格や性質を形成する大変重要な時期なのです。
この時期にいろいろな人間とポジティブな接し方をたくさん経験した猫は、人慣れした猫に成長すると期待できます。犬の鳴き声を聞いて育った猫は、慣れているため怖がりにくくなります。
大人になった猫を引き取ったらフレンドリーだったという場合は、社会化期に人と良好な触れ合いをしていたと推測できます。
どの猫もフレンドリーな子に成長するとはいえない
猫の生まれ持った性格もあるため、社会化期にいろいろな人と接してもフレンドリーにならない子もいます。知らない人がいると緊張する様子が続く場合は、「シャイな子」だと飼い主さんが理解することも大切です。無理強いはせずに、猫の個性に合わせて対応していきましょう。
具体的な社会化期の対応方法
母猫がいない子猫の社会化期への対応方法を解説します。子猫のペースに合わせ、飼い主さんは焦らないことが大切です。
いろいろな人と触れあう
フレンドリーな猫に成長させるためにも、いろいろな人に猫をやさしく触ってもらいましょう。飼い主さんに家族がいるなら、家族全員で触れ合います。飼い主さんが一人暮らしなら、友人に頼んで家に来てもらうといいでしょう。子猫用のおやつなどを使いながら触れ合ってみてください。
男性、女性、高齢の方、子どもなど、性別や年齢の幅を広くすると、さまざまなタイプの人に会っても驚かなくなります。小さなお子さんには、あらかじめ「猫をやさしく触る」「大声を出さない」などを教えておくといいでしょう。健康診断などに合わせ、動物病院で獣医師やスタッフの人にも触ってもらうのもおすすめです。
触れ合いタイムは1回10分程度とし、トータルで1日1時間を目安にしましょう。
いろいろなニオイを嗅がせる
タオルに飼い主さん以外の人や、よその犬、猫などのニオイを付けて、子猫に嗅がせます。友だちなどに協力してもらって、ニオイを付けさせてもらいましょう。動物病院の診察室や獣医師のニオイに慣れさせておくのもおすすめです。
いろいろな音を聞かせておく
水が蛇口から出る音やインターホンなどの生活音を聞かせます。猫は大きな音が苦手なので、小さな音からスタートしてください。スマホの着信音などにも慣れておくといいですね。
遊びで狩猟本能を満たす
子猫は生後7週目あたりから、動くものに飛びかかったり、じゃれついたりと、狩りをするような行動を見せるようになります。狩猟本能は自然なものなので、遊びで満たしてあげましょう。
ここで大切なのは、人にじゃれつかせるのではなく「おもちゃ」や「フード」で狩猟本能を満たすこと。中にフードを入れられるおもちゃは、「狩って食べた」気分を味わえるので特におすすめです。
ボールを転がすおもちゃも、ひとり遊びに向いています。
後ろ足で蹴りたがる猫には、蹴りぐるみがいいでしょう。
子猫の社会化期の注意点
社会化期の子猫の接し方には、しつこくしない、怖がらせないなどの注意点があります。特に人にじゃれさせない点はしっかり守りましょう。
しつこくしないことが大切
人に慣れさせようと、しつこく子猫を触るのはやめましょう。嫌がる素振りをしているのに、押さえつけて触ると、人に触れられるのが苦手になる恐れがあります。しっぽをパタパタさせたり、耳を倒したりするのは「イヤ」のサインです。
無理に近づかず、猫が自分から近づいてくるのを待つ方が、早く人に慣れてくれます。小さな子どもが触るときは、特によく言い聞かせておくといいですね。
いたずらしても叱るのはNG
子猫がいたずらをしても、絶対に叱ったり叩いたりしないでください。大声で怒鳴るのもよくありません。その人そのものを嫌いになるのはもちろん、人への不信感が植え付けられてしまいます。
好奇心旺盛な子猫は、いたずらもしますし、思い通りにもいかないことも多いでしょう。だからこそ、触られて困るものは片付けるなど、いたずらできない環境を作っておくことが大切です。経験上、カーテンはボロボロにされやすいので、子猫の時期だけ安価なものをつるしておくことをおすすめします。
人は狩りの対象にならないことが大事
子猫が人の手にじゃれてきたり、甘噛みしてきたりしても、相手にしてはいけません。子猫は人に甘えているのではなく、狩りの練習をしているのです。
物陰に隠れて足に飛びかかってくるのも「狩り」の行動の一つです。しぐさがかわいいのでつい許してしまいがちですが、手を隠す、立ち去るなどして中止させましょう。
そのまま相手にしていると、人は狩りの対象だと子猫は認識してしまいます。そして、大人の猫になると飛びかかってきたり、咬んできたりするようになり、人が大けがをする恐れがあります。
人ではなくおもちゃで遊ばせて、狩猟本能を満たすようにしましょう。
適切な飼育環境を作っておくことも大事
子猫の社会化期を安全に、そして順調に過ごすためには、飼育環境を整えておくことも大切です。
まずは子猫に合ったフードを与えます。トイレは猫の数プラス1を用意し、猫が食べやすい陶器製の食器を選びましょう。上下運動ができるキャットタワーや、猫用ケージなども必要です。
猫の飼育環境やグッズに関してはこちらの記事もぜひ参考にしてください。
まとめ
子猫の生後3週目から9週目あたりは、人や他の動物との触れ合いや環境に慣れていく「社会化期」です。この頃の過ごし方によって猫の性質が形作られるので、大変重要な時期だといえるでしょう。特に母猫がいない場合は、人が代わって社会化期の経験をさせる必要があります。
フレンドリーな猫に成長させるためにも、「さまざまなタイプの人に触れてもらう」「いろいろなニオイを嗅がせる」「音を聞かせる」といった経験で社会性を養ってあげましょう。しつこくしたり、叱ったりするのはNGです。
さらに子猫の狩猟本能を満たすためにも、おもちゃを使った遊びは欠かせません。その際は、人の手にじゃれつかせないように十分注意してください。飼育環境を整えて猫のペースに合わせながら、社会化期を上手に過ごしていきましょう。