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いぬ健康

【獣医師監修】子犬・子猫を飼うなら知っておきたい9つの先天性疾患

相澤 啓介 獣医師

子犬や子猫を飼いたいと思っている方は、犬や猫が生まれつき持っている「先天性疾患」についてご存知でしょうか?

疾患の種類によっては、早期治療や日常生活での配慮が必要な場合があります。

今回は、犬や猫の先天性疾患について、具体例や対処法を獣医師が詳しく解説します。

先天性疾患とは


先天性疾患とは、その名の通り「生まれつきの疾患」の意味で、奇形や組織の構造異常などとも言います。

例えば、生命活動に大きな役割を果たしている心臓などに構造異常があると、わずかな異常であっても身体に大きな負担がかかります。

また、先天性疾患の中には遺伝するものもあり、親に何らかの疾患がないかどうかを確認することが非常に重要です。

注意したい先天性疾患

ペットショップやブリーダーから子犬や子猫を迎える時に、身体の一部分が欠損していればすぐにわかります。
しかし、内臓などの組織は外からは見ただけでは判断できないため、もしかしたら先天性の異常が潜んでいるかもしれません。

ここでは、動物病院でも見かける機会の多い先天性疾患を9つ紹介します。

①動脈管開存症

【正常】
通常、生後2〜3日で「動脈管(胎児期に肺動脈と大動脈を繋いでいる穴)」は閉鎖する。
そして、肺動脈には酸素の少ない「静脈血」が、大動脈には酸素が豊富な「動脈血」が流れる。

【動脈管開存症とは】
動脈管が開口した状態で、血圧の高い大動脈の血液が肺動脈に流れ込む。
そして、肺への血液量が増加し、結果として左心房への負担が増大する。

この状態が長く続くと、逆に肺動脈から大動脈への血液の流入が起こり、酸素の少ない血液が全身を巡るようになる。

②心室中隔欠損

【正常】
心臓は4つの部屋に分かれており、その中でも右心室は肺動脈へ、左心室は大動脈へ血液を送り出す役割を担う。
右心室と左心室は「中隔(ちゅうかく)」という壁で分けられている。

【心室中隔欠損とは】
生まれつき「中隔」が欠損、あるいは一部に穴が空いた状態。

通常は、全身に血液を送らなければならないため、右心室より左心室の方が血圧が高くなっている。
中隔の欠損により血液が左心室から右心室に流れ込んでしまうと、肺への血液量が増加し、左心房への負担が大きくなる。

③門脈体循環シャント

【正常】
身体の各組織に行き渡った血液は、静脈を通って心臓に戻ってくる。
その途中で、肝臓の中の血管「門脈」を通過して、身体の老廃物を解毒する

【門脈体循環シャントとは】
肝臓の手前から肝臓の出口に直接血管が繋がっている(シャント)状態
このため、身体の毒素は肝臓を経由せず、全身を循環する
また、肝臓は糖を貯蔵する働きもしているが、肝臓への血液が少なくなると、致命的な低血糖を引き起こすこともある。

④異所性尿管

【正常】
腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱に溜められる。

【異所性尿管とは】
尿管が膀胱以外の部位、例えば直接尿道や膣に開口している状態
すると、尿は膀胱を経由しないため、常に尿漏れが起こる。
尿が流れ続けている状態では、そこから細菌感染を起こすこともある。

⑤口蓋裂(こうがいれつ)

「硬口蓋(口の中の上顎の部分)」に穴が空き、口腔と鼻腔が繋がっている状態
食べたものが鼻腔を通り、肺に流れ込むと、誤嚥性肺炎に繋がることも。
食後に、未消化の食べ物のようなものが鼻から出てくることがあれば、口腔内を検査してみると良い。

⑥水頭症

【正常】
脳は、頭蓋骨の中で脳脊髄液に浮かんでいる。

【水頭症とは】
脳脊髄液が過剰に貯留している状態
脳室内の液体によって脳は圧迫され、神経症状や運動障害が引き起こされる。

⑦肘関節形成不全

【正常】
肘関節は、「上腕骨」と「前腕の骨(橈骨と尺骨)」からなる。

【肘関節形成不全とは】
この関節の咬み合わせが不十分な状態で、少しの刺激で肘関節脱臼が起こる可能性がある。
前肢を引きずる様子があれば、レントゲンを撮ってみると良い。

⑧股関節形成不全

【正常】
股関節は、骨盤を形成する「寛骨」と「大腿骨」からなる。

【股関節形成不全とは】
寛骨の溝が浅いなどによって、股関節の形成が不十分な状態で、頻繁に股関節脱臼を起こすようになる。
大型犬に多く見られ、成長期の検診ではレントゲンで股関節の状態をチェックすることも多い。

⑨膝蓋骨脱臼

【正常】
「膝蓋骨(膝の皿)」は、大腿骨の溝に沿って上下に移動することで、膝の滑らかな動きを実現している。

【膝蓋骨脱臼とは】
大腿骨の溝が生まれつき浅いなどによって、膝蓋骨が大腿骨から外れた状態
膝蓋骨の脱臼を繰り返すことによって関節炎が起きたり、前十字靭帯が断裂することもある。

寄生虫予防やワクチン接種の際にチェック

これら先天性疾患は、初めての動物病院受診の際にしっかりとチェックします。

動物病院受診のタイミングは様々ですが、ワクチン接種やフィラリア予防薬を開始する頃が多いです。
その際、気になる健康上の問題点があれば獣医師に伝えておきましょう。

レントゲンはある程度成長してから

骨は生後、徐々に軟骨から硬骨に置き換わっていきます
そのため、あまりにも若いうちにレントゲンを撮っても意味がありません。

成長するにつれて症状が出てこないか確認しながら、時期を見て検査をしていきます。

まとめ

犬や猫が生まれつき持っている異常は、飼い主さんの努力で予防することはできません。
しかし、できる限り早期に発見し、早めに処置をすることで、先天性疾患による様々なリスクを小さくすることはできます。

子犬や子猫の頃から、できるだけの健康管理をしてあげましょう。

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