有名な赤川次郎作品「三毛猫ホームズ」の相棒役で出てきたり、地方駅で動物駅長を流行らせた先駆者である和歌山電鐵の貴志駅の「たま駅長」だったりと日本では猫の姿のスタンダードとも言える三毛猫。
そんな三毛猫ですが、実はその詳しい生態や情報はあまり知られていません。今回はそんな三毛猫について、みなさんがあまり知らないような情報まで詳しく紹介します!
監修:吉野聡(株式会社ANICAL代表取締役獣医師/夜間動物病院.com)
この記事の目次
三毛猫の基本情報

一般的に三毛猫は一つの猫の種類と勘違いされがちです。実は、三毛猫とは三色の毛が生えている猫の総称を指しています。つまり実際の猫種がシャム猫であろうがジャパニーズボブテイルであろうが、三種の毛色をしている限りそれは三毛猫と呼ばれるということです。
ですので、どの猫種の血を引いているかで、それぞれの猫の体型や顔立ち、耳や尻尾の形は多種多様なのです。
毛色と模様によってさまざまな呼び方がある

三毛猫といえば、白・黒・茶色の3色がはっきりと入った斑模様を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、実は三毛猫には毛色や柄の違いによっていくつかの種類があります。
一般的な三毛
最もよく知られているタイプで、白・黒・茶色(オレンジ)の3色がはっきりと入った三毛猫です。白地に黒と茶色の模様が入る、いわゆる「三毛猫」としてイメージされることが多い柄です。
キジ三毛
白をベースに、キジトラ柄(黒と茶色の縞模様)が入った三毛猫です。一般的な三毛よりも茶色や焦げ茶色が多く見え、野性的な印象があります。
縞三毛
黒や茶色の部分に縞模様が入っている三毛猫です。特に黒い部分がサバトラ柄になっているものは「サバ三毛」と呼ばれることもあります。通常の三毛よりも柄が細かく、個性的な見た目が特徴です。
パステル三毛
黒がグレー、茶色(オレンジ)がクリーム色へと薄まった、やさしい色合いの三毛猫です。淡い色合いから「パステル三毛」と呼ばれます。
三毛猫のオスはとても珍しい

三毛猫のオスが生まれる確率
三毛猫はメスばかりでオスは非常に珍しいと言われています。三毛猫が生まれてきた場合、それがオスである確率はとても低く、実に3万分の1と言われています。
その希少性から、三毛猫のオスはとても高く取引されることがあり、かつては名古屋のペットショップで3000万円で売られていたり、アメリカのオークションサイトでは2000万円で落札されたこともあるそうです。
なぜ三毛猫のオスが希少なのか

結論から述べると、三毛猫のオスは染色体の異常によってしか生まれ得ないからです。
オスとメスの性染色体
生物の遺伝子は、2つの遺伝子がくっついて1つの遺伝子型を作り、形質を特徴づけるとされています。人間と同じように、猫も性染色体であるX染色体とY染色体の組み合わせで雌雄が決まります。XYという組み合わせがオス、XXという組み合わせがメスになります。
猫の毛色を決める遺伝子
猫の毛色を決める遺伝子は、全部で9種類あります。しかも、優性(顕性)と劣性(潜性)の考え方があるため、基本的には、それぞれに2種類ずつあります。
本題から逸れますので詳しい説明は省略しますが、全部で9種類あるうちの、A遺伝子、O遺伝子、S遺伝子、W遺伝子が三毛猫が生まれるために大きく関係する遺伝子です。
○A(Agouti)遺伝子
A遺伝子は被毛をアグーチ、つまり1本の毛の根本と先端が黒で真ん中が褐色(茶色)にする遺伝子です。a遺伝子は毛色を均一にします。
○O(Orange)遺伝子
赤色を発現させる遺伝子です。一般的に三毛猫の「茶色」と表現される毛色は、この赤色遺伝子によって決まります。
※オレンジという名称がついていますが、遺伝学では「赤色を発現させる遺伝子」と説明されるのが一般的です。これは、かつて研究者が「見た目のままオレンジ」と命名したためです。その後、実は赤色色素(フェオメラニン)であることが判明しましたが、名前は当時の「O(オレンジ)遺伝子」のまま変わらずに使い続けられています。
他の遺伝子とは異なり、X染色体上にのみ存在し、Y染色体には存在しません。そのため、X染色体を1つしか持たないオスはO遺伝子かo遺伝子のどちらか片方しか持つことができませんので、O(茶になる)か、o(黒になる)の二択になります。
メスはX染色体を2つ持っていますので、OO(A遺伝子を抑制して茶になる)、oo(A遺伝子が発現して黒になる)、または、Oo(黒と茶)の3つの組み合わせが可能です。三毛猫が生まれるためには、この遺伝子が鍵となります。
○S(Spotting)遺伝子
S遺伝子は、白の斑模様を作ります。s遺伝子は、斑がなくなります。
○W(White)遺伝子
W遺伝子は、体全体を白一色にしますが、この遺伝子を1つでも持っていると、白猫になります。w遺伝子は、他の遺伝子によって、色が決定されます。
三毛猫(メス)の遺伝学
三毛猫の場合は、黒、白、茶の3種類の毛色が必要になるので、ww(白一色にならない)、SSまたはSs(白のまだら模様が入る)、Oo(黒色と茶色になる)の3つの遺伝子を持つことが条件になります。
さらに、三毛猫が生まれるためにはもうひとつの要素が必要です。それが、X染色体の不活性化です。Ooの遺伝子に対して、X染色体の不活性化が起こると、OoのOが抑制された部分では黒が発現し、Ooのoが抑制された部分では茶色が発現するので黒と茶色の斑模様になります。
このようにして、三毛猫が生まれるのです。
三毛猫(オス)の遺伝学
メスの場合でもこのように多くの条件を必要とする三毛猫の誕生ですが、どういう時にオスの三毛猫が生まれるのでしょうか。
それは、染色体に以下のような「突然変異」が起きたときです。
- クラインフェルター症候群:本来は「XY」であるオスの性染色体が、1本多く「XXY」になってしまう。
- モザイク:1匹の体の中に、遺伝子の違う細胞がパッチワークのように混ざり合ってしまう。
このように、染色体の異常や奇跡的な偶然が重なったときにしかオスの三毛猫は生まれません。そのため、誕生する確率は非常に低く、とても希少なのです。
三毛猫の魅力を知ろう!

三毛猫は、美しい毛色だけでなく、遺伝の仕組みが深く関わる不思議な猫です。ほとんどがメスである理由や、ごくまれにオスが生まれる理由を知ることで、その魅力をより身近に感じられるでしょう。
また、同じ三毛猫でも毛色や柄の入り方は一匹一匹異なり、まったく同じ模様の猫はほとんど存在しません。それぞれが世界に一匹だけの特別な存在といえるでしょう。
愛らしい見た目だけでなく、遺伝学の観点から見ても奥深い魅力を持つ三毛猫。この記事をきっかけに、三毛猫の不思議な世界にさらに興味を持っていただけたら幸いです。



































