猫は、私たち人間にとって大変身近なペットです。猫の祖先は「リビアヤマネコ」で、古代メソポタミアが起源だと言われています。はるか遠い国から、猫は一体いつ頃、どのようにして日本にやってきたのでしょうか?
この記事では、猫がいつ人と暮らすようになったのか、世界と日本の歴史について解説します。
この記事の目次
猫が人と暮らすようになった理由
人間が土地に定住して農耕を始めると、住居や倉庫に農作物や穀物を保存するようになりました。するとネズミが農作物や穀物を狙いにきます。そのネズミを追って、猫もやってきたのです。
猫は、人間の大切な農作物や穀物をネズミから守ってくれる存在になりました。ネズミを退治してくれるのに、農作物や穀物には手をださない猫は、人間にとってありがたかったでしょう。
猫の中には、人懐っこい子もいたはずです。人間の子どもたちにかわいがられていたのが想像できます。親猫を亡くした子猫を、人間が代わりに育てたケースもあったのではないでしょうか。ネズミ以外の御馳走をもらうときもあったでしょう。
世界で最も古い飼い猫は?
世界で最も古い猫の飼育は、今から約4000年前の古代エジプトだと考えられていました。ところが2004年、地中海キプロス島にある約9500年前の遺跡から子猫の墓が発見されたのです。子猫は30代の男性と一緒に埋葬されていました。
30代男性の足元に埋葬されていたので、何らかの絆や関係があったと予想できます。キプロスは海に囲まれた島であり、もともと猫はいなかったそうです。つまり、人間が船に乗せて猫を連れてきたのでしょう。
キプロスの発掘により、猫は古代エジプトよりも5000年近く前から人と暮らしていたと判明しました。
猫が日本に来たのは弥生時代?
キプロスと同じく海に囲まれた日本には、猫は船に乗らないとたどりつけません。猫が自主的に船に乗るとは考えにくいため、誰かが連れてきたと考えられます。では、猫はいつ日本に渡ってきたのでしょうか?
8世紀に中国から日本に来た説
猫は古代メソポタミアから古代エジプトに、そしてヨーロッパから中国へと長い時間をかけて伝わってきました。そして中国から日本にやってきたといわれています。
猫が日本に渡ってきた時期は、1200~1300年前の8世紀ごろの奈良時代あたりとされていました。中国の大切な経典をネズミから守るために、一緒に船に乗せられたと推測されていました。
ところが、2007年の土器の発掘でこの説が翻ってしまいます。
古墳時代の土器に猫の足跡
【あにまる×Zoom!】兵庫県姫路市で出土した古墳時代終末期の須恵器。「ネコ踏んじゃった文様」とでも言いましょうか、器が生乾き状態の時にネコが踏んだと考えられ、肉球の跡がくっきり残っています。須恵器工房にいたネコの仕業でしょうか。今と変わらない自由気ままなネコの姿が思い浮かびますね。 pic.twitter.com/fTH2Kcn44T
— 福島県立博物館【公式】 (@fukushimamuseum) October 19, 2019
2007年、兵庫県姫路市にある見野古墳の発掘調査で猫の足跡がついた須恵器が発見されました。須恵器とは、古墳時代の中期から平安時代に作られていた土器です。
足跡の付いた須恵器は、今からなんと1400年前の古墳時代後期(6~7世紀)のものと判明しました。足跡付きの土器の発掘により、猫は8世紀以前に日本にすでに来ていたとわかります。
猫の足跡つき土器は福井県にも
本日から第10回企画展「ネコ踏んじゃった!?」が始まりました 令和2年11月29日まで
今回の企画展では、原始古代から続く猫と人々の関わりの一端をご紹介します‼️ 今回の一押し展示品はネコ科と考えられる動物の足跡?がついた須恵器✨https://t.co/ja10fiOH6M#猫 #足跡 #考古学のおやつ pic.twitter.com/5HQMMlb1ij— 美浜町歴史文化館@miha_reki (@miha_reki) September 19, 2020
2018年には、福井県美浜町にある興道寺廃寺跡周辺の古墳周溝からも、猫らしい動物の足跡が付いた須恵器が発掘されました。見野古墳とほぼ同じ、古墳時代後期のものです。
古墳時代後期には、日本人の暮らしの中にすでに猫がいたと考えて間違いないでしょう。
「土器についた足跡の発見」というのがいかにも猫らしいですね。猫はいたずら心から、乾燥中の土器を踏んで歩いたのかもしれません。せっかく作った土器に足跡がついて、当時の人たちはどのような反応をしたのでしょうか。
弥生時代の遺跡から猫の骨?
原の辻遺跡と並ぶ弥生の大集落カラカミ遺跡。記事では製鉄関係の出土品を紹介しましたが、収蔵品展でひときわ目立ったのは「ネコの骨」。家畜のイエネコが日本に来たのは奈良時代と考えられていましたが、同遺跡でイエネコの骨が見つかりました。漁村でもあったカラカミで、何を食べていたのでしょう。 pic.twitter.com/fh62ztvc1L
— 今井邦彦 Kunihiko Imai (@imaikuni) May 27, 2020
2008年には、長崎県壱岐にある「カラカミ遺跡」の発掘調査で猫と思われる動物の骨が発掘されました。カラカミ遺跡は今から2000年前、弥生時代後半(紀元前3世紀ごろ)の遺跡です。
海に囲まれた壱岐は、魚が豊富に獲れます。漁で獲れた魚のおこぼれをもらいながら、穀物をネズミから守っていたのかもしれません。そもそもどこから、誰が壱岐に猫を連れてきたのでしょうか。
猫はどこから来た?
今から2000年前の弥生時代から猫がいたとなると、猫が中国からやってきた説も不確かなものになります。なぜなら、中国に猫が来たのは、およそ2000年前とされているからです。
つまり、中国に猫がやってくる前に日本に来ていた可能性も十分考えられるのです。または中国からとは別のルートがあったとも推測できます。
まとめ
猫がいつ、どうやって日本にたどりついたのか、まだ判明されていない史実もたくさんありそうです。神秘的な猫にふさわしいエピソードといえるでしょう。
もしかしたら、愛猫にも古代メソポタミアの猫の血が流れているかもしれないと思うと不思議な感じがします。
最近は、ネズミ捕りの仕事をする猫は少なくなりました。今は一緒にいてくれるだけで、飼い主さんを癒す仕事をしているともいえますね。