近年、犬の健康志向も高まっており、グレインフリーのドッグフードを愛犬に与えている飼い主さんも多いようです。
しかし、先日、アメリカ食品医薬品局がグレインフリーのフードが犬の心臓病を引き起こす可能性があることを発表しました。
https://news.cheriee.jp/articles/4403
愛犬のことを第一に考えている飼い主さんは気が気ではないことと思います。そんな飼い主さんに向け、グレインフリーとは何なのか、犬の心臓病について、そしてアメリカ食品医薬品局が報告したグレインフリーと心臓病の関連について、丁寧にご説明していきます。
この記事の目次
グレインフリーとは
グレインは英語で「穀物」を意味し、具体的には小麦、大麦、トウモロコシ、米、大豆、玄米などのことを指します。
犬はもともと肉食動物であり、穀物を消化する「アミラーゼ」という酵素を持っていません。そのため、穀物は消化しにくくアレルギーを引き起こす可能性があるとも言われており、近年では穀物を使っていないグレインフリーの餌が注目されています。
グレインフリーのフードには、小麦やトウモロコシの代わりに、エンドウ豆などの豆類やサツマイモやジャガイモなどの芋類が使われていることが多いようです。
犬の心臓病
犬にとって心臓病は珍しいものではなく、中年齢以降の犬にはよく見られる病気です。しかし、なぜ犬が心臓病にかかりやすいのかは未だ解明されていません。
犬がかかりやすい心臓病はフィラリア症、僧帽弁閉鎖不全症、拡張型心筋症が挙げられます。
フィラリア症
犬の飼い主さんにとっては聞きなじみのある「フィラリア」。寄生虫のフィラリアに感染している蚊に刺されることで起こるフィラリア症も心臓病の一種です。フィラリアの成虫が心臓の肺動脈に寄生することで血液の流れが悪くなり、散歩中に息が切れたり、腹水がたまったりするなどの症状が現れます。
フィラリアは、体内に侵入した幼虫を投薬により駆除することが可能です。しかし、感染そのものを防ぐわけではありませんので、蚊が活動している期間は定期的な投薬が必要です。
日本ではほとんどの飼い主さんが予防をしているため、近年はフィラリア症が重篤化する犬は少ないとされています。
僧帽弁閉鎖不全症
犬の心臓病の中で最も罹患率が高いのが僧帽弁閉鎖不全症です。キャバリア、マルチーズ、シーズーなどの犬種でよくみられますが、高齢の犬ではどんな犬種にも発症します。
僧帽弁とは心臓の左心房と左心室の間にある弁のことで、これが加齢などにより変性することで弁が完全に閉じなくなってしまいます。心臓の各部屋を仕切る弁が機能しなくなると血液の逆流が起こり、全身へ送り出す血液の量が減少し、心臓の拡大化を引き起こします。
急性の場合は、肺高血圧、肺うっ血による呼吸困難などを引き起こします。慢性的な場合は症状に気づかないことも多くありますが、心臓の機能が徐々に低下し、息切れや呼吸困難が現れます。
拡張型心筋症
拡張型心筋症も犬がかかりやすいとされている心臓病で、ドーベルマン、グレート・デーン、ボクサー、セント・バーナードなどの犬種や中年齢のオスによくみられます。
拡張型心筋症は、心筋が薄くなることで心臓が大きくなり、心臓の機能が低下して全身に血液を送れなくなってしまう病気です。疲れやすくなる、食欲がなくなる、運動中に失神するなどの症状が現れます。
犬の拡張型心筋症は遺伝的な要素が高いと言われていますが、詳しい原因はまだ分かっていません。また、生体内で重要な働きをするタウリンの欠乏も原因の一つであるという報告もあります。
グレインフリーと心臓病の関連について
アメリカ食品医薬品局(FDA)の調査により、拡張型心筋症を発症した犬の多くがグレインフリーのフードを食べていたことが分かり、両者に関連がある可能性が示唆されました。
以下、FDAが2014年1月1日から2019年4月30日までに拡張型心筋症を発症した犬560匹と猫9匹を対象にした、頻繁に与えているフードの調査結果をお伝えします。
ドッグフードの成分
このグラフは拡張型心筋症を発症した犬が食べていたドッグフードの成分をグラフにしたものです。グレインフリーのドッグフードは91%で、エンドウ豆かレンズ豆のいずれかを含んでいたドッグフードは93%でした。
調査対象はあくまで「拡張型心筋症を発症した犬が食べていたドッグフード」であり、「グレインフリーのドッグフードを食べていた犬の拡張型心筋症発生率」等は示されていないため、現段階で「グレインフリー=拡張型心筋症を発症しやすい」ということは難しいと言えるでしょう。
FDAは結果から「拡張型心筋症とグレインフリーやエンドウ豆、レンズ豆に関連性があるのではないか」と考えており、引き続き調査を続けるとのことです。
フードに含まれる動物性タンパク質の由来
このグラフは拡張型心筋症を発症した犬が食べていたドッグフードの動物性タンパク質の由来を分類したもので、ほとんどは複数のタンパク源が含まれていました。
最も多く含まれていたのが鶏肉の113件、ラム肉98件、サーモン72件、白身魚65件と続きます。カンガルー、バイソン、アヒルなどの特殊なものが含まれているフードもありました。
拡張型心筋症と犬種の関連
先ほども述べたように、拡張型心筋症は大型の犬種でよく発症すると認識されており、今回はゴールデンレトリバーが顕著に高い値を示しました。
なお、このアンケートでは犬種の比率が明らかになっておらず、たまたまゴールデンレトリバーを飼育している人が多かったため数値が高くなった可能性もあります。このことから、一概にゴールデンレトリバーが拡張型心筋症にかかりやすいとは言えません。
しかし、ゴールデンレトリバーが遺伝的にタウリン欠乏症にかかりやすいという報告はすでにされており、今後はゴールデンレトリバーと拡張型心筋症の相関についても調査していくとのことでした。
最後に
健康のために良かれと思いグレインフリーのフードを与えている飼い主さんは、この記事を読んで不安になってしまったかもしれません。
しかし、現段階ではグレインフリーのフードと拡張型心筋症の関連については完全には明らかになっておらず、今後も引き続き調査を行っていくとのことです。Cherieeでも引き続き、この調査を追っていきたいと思います。
どんな病気も予防と早期発見が大切です。もし不安に思うことがあれば、かかりつけの獣医さんに相談し、検査をしてもらうようにしましょう。