【獣医師監修】シェットランド・シープドッグの好発疾患と予防

2024.07.30
【獣医師監修】シェットランド・シープドッグの好発疾患と予防

「シェルティ」という愛称でも呼ばれるシェットランド・シープドッグは、元々牧羊犬として活躍しており、賢い犬ランキングでも上位に入る人気犬種です。

フサフサとした長毛は美しく、筆者も大好きです。そんな魅力溢れるシェットランド・シープドッグですが、この犬種特有のかかりやすい病気があることをご存知でしょうか。

本記事ではシェットランド・シープドッグのかかりやすい病気と、予防・早期発見の方法ついて解説していきます。なお、以降は愛称である「シェルティ」と記載します。

この記事の目次

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シェルティの基本情報

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シェルティの歴史

シェルティは、イギリス最北端にあるシェットランド諸島が原産の牧羊犬です。シェットランド諸島の気候条件が非常に厳しく荒涼とした土地だったため、少ない飼料でも飼育できるようにと、小型化されていきました。

19世紀の終わり頃、シェットランド諸島を訪れた兵士が犬を持ち帰り、イギリス本土でも人気が高まります。

そして、1909年には、イギリスのケンネルクラブに「シェットランド・コリー」として登録されました。しかし、外見がよく似たラフ・コリーなどとの混同を避けるため、「シェットランド・シープドッグ」という名称に変更されました。

身体的特徴

見た目はラフ・コリーによく似ていますが、大きさはラフ・コリーよりもふた回りほど小さく、オスの体高は37cm、メスの体高は35.5cmが理想とされています。

被毛は、長毛でダブルコートのため、抜け毛はかなり多いです。換毛期だけでなく、普段からブラッシングをする習慣をつけましょう。

性格

基本的には、穏やかで優しい性格をしています。

飼い主に対しては忠実で甘えん坊ですが、警戒心が強く、飼い主以外の人や他の犬に吠えやすい犬種のため、社会化期にしっかりとしつけることが大切です。

シェルティの好発疾患

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シェルティで問題となるのは主に眼と皮膚の疾患です。
特に、眼の病気ではコリー種に特徴的なものもありますので、順番に見ていきましょう。

コリー眼異常

【症状】
多くは無症状。視覚障害、前眼房出血、網膜剥離(失明)が起こることもある。
【原因】
遺伝性の脈絡膜の異常。
【備考】
脈絡膜は眼球に栄養を送る血管が分布している。本疾患は4〜8週齢の眼底検査により診断される。また、現在では遺伝子検査も実施されており、本疾患のキャリアかどうかを調べることが可能。

進行性網膜萎縮

【症状】
昼盲~夜盲へ進行
【原因】
網膜色素上皮細胞にセロイドやリポフスチンが沈着する遺伝性の脂質代謝異常による。
【備考】
昼盲から夜盲への進行は遅いこともある。

甲状腺機能低下症

【症状】
元気消失、食欲不振、運動不耐性(疲れやすい)、便秘、脱毛、肥満、無関心、角膜潰瘍、運動失調、発情周期の障害など多岐にわたる。
【原因】
甲状腺の炎症や腫瘍の影響によると考えられている。
【備考】
甲状腺は代謝を司るホルモンを分泌する器官で、この機能が低下すると多くの組織が影響を受ける。

皮膚筋炎

【症状】
皮膚の痒み、脱毛などの皮膚症状が顔、耳、鼻端、四肢端に見られる。
【原因】
正確な病因は不明だが、遺伝が関与していると考えられている。
【備考】
通常は6カ月齢以内には発症するが稀に成犬でも発症する。

フォンウィルブランド病

【症状】
血が止まりにくい
【原因】
血小板が損傷部に粘着する際に必要なフォンウィルブランド因子の異常。
【備考】
乳歯の生え変わりの際に出血が止まらないことがないかを確認しておく。

脱毛症X

【症状】
脱毛、皮膚の色素沈着(皮膚が茶色や黒くなる)など
【原因】
不明
【備考】
3歳未満の未去勢雄に好発し、サマーカットなどをきっかけとして育毛障害が認知されやすい。脱毛はお尻の周り、首、腕や足に分布する。頭部や四肢端に発生することはない。

シェルティの病気予防

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愛犬に長生きしてもらうために、できる限りの対策をしましょう。そして、万が一病気になってしまった時には、早期発見がとても大切です。

では、シェルティで注意したい病気を予防するため、早く発見するためにはどんなことに気を付ければいいのでしょうか。

肥満に注意

シェルティは太りやすい犬種と言われています。

毛が長いため、パッと見で愛犬の体型の変化を察知することは難しいかもしれませんが、撫でたりするときに定期的に体型を確認しましょう。目安は肋骨が軽く触れ、腰に少しクビレがある程度です。

食事管理や運動によって健康的な体型を維持することが大切です。

日常的に目のチェックを

シェルティに特徴的なコリー眼異常や進行性網膜萎縮は、視覚に異常が見られる疾患です。

愛犬の視力はしっかりと把握しておく必要がありますが、犬の視力を測定することは難しいかもしれません。

普段の生活の中で、以下のような徴候がないかを確認しましょう。

  • よく物にぶつかる
  • 段差につまずく
  • 動こうとしなくなった
  • 目の前で落としたティッシュなどを目で追わない

定期的な健康診断が重要

病気の早期発見には定期的な健康診断が最も効果的です。内臓疾患や甲状腺機能、眼のチェックも含めて行います。
少なくとも年に1回、シニア期に差しかかる7歳以上の子は半年に1回の健診をオススメします。

ブラッシングも忘れないで

長毛のシェルティは、季節の変わり目にゴッソリ毛が抜けます。定期的にブラッシングを行い、無駄な毛を除去してあげましょう。

また、同時に皮膚の赤みやカサブタなどがないかもしっかりと確認していきます。
スリッカーなどの硬いブラシではなく、毛が柔らかいブラシを使ってあげるとブラッシングが好きになってくれるかもしれません。

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フィラリア予防薬にも注意

シェルティを始めとするコリー種には、イベルメクチンという成分に対して傾眠や運動失調といった神経毒性が現れることが報告されています。

イベルメクチンは主にフィラリア予防薬に含まれている成分です。この神経毒性は遺伝子の異常に起因し、検査によってイベルメクチンの副作用が発現するかしないかを確認することが可能です。

しかし、なるべくならイベルメクチンを含むフィラリア予防薬は避けた方が無難でしょう。

まとめ

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今回は、シェルティの好発疾患について解説しました。もちろん、これら以外の病気にもかかってしまう可能性はありますので、定期的に健康診断を受けてくださいね。

スキンシップと健康観察が、愛情表現と病気予防につながります。ぜひ、毎日欠かさずに行ってあげてください。

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