ペットを飼っている皆さんは、大きい動物は寒さに強く、小さい動物は寒さに弱いと、なんとなく思ったことはありませんか?
動物に関わる法則はたくさんありますが、今回は身近なペットにも関わる興味深い4つの法則について解説してきます。少し難しい話題かもしれませんが、ペットや周りの動物のことを思い浮かべながら読んでみてください。
この記事の目次
ベルクマンの法則
「恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息する」
ドイツの生物学者クリスティアン・ベルクマンが発表した法則です。
北極に生息しているホッキョクグマは大きく、熱帯に生息するマレーグマは小さいなど、クマを例に挙げて説明されることが多いです。
なぜ?
恒温動物は体温を一定に保つために、体内で生産した熱を体表から放出しています。そして、熱の生産量は体重にほぼ比例し、熱の放出量は体表の面積にほぼ比例します。
例えば、体長が2倍になると、熱の生産量は8倍になりますが、熱の放出量は4倍にしかなりません。つまり、体が大きくなるにつれて熱を放出する割合が減るため、寒い地域の動物は体を大きくして体温を維持しているということです。
犬や猫にも当てはまる?
大型の犬や猫を思い浮かべてみてください。その犬や猫の多くは、寒い地域が原産であるはずです。一方で、体が小さいことで知られるチワワやシンガプーラはそれぞれ、メキシコとシンガポールという暑い地域原産の犬や猫です。
体の大きい犬や猫が暑さに弱いのは、体内の熱を放出しづらいという理由がありました。そのため、夏や冬は特に温度管理に注意してあげましょう。
注意
犬や猫の多くは人の手が加わって人工的に生まれたものであり、必ずしもこの法則に当てはまるわけではありません。特に、短頭犬種は体が小さくても別の理由で暑さに弱いことで知られています。
体が大きいから寒さに強い、体が小さいから寒さに弱いと安直に考えるのではなく、その犬種や猫種にあった生活環境を整えてあげてください。
アレンの法則
「恒温動物において、同じ種の個体、あるいは近縁のものでは、寒冷な地域に生息するものほど、耳、吻、首、足、尾などの突出部が短くなる」
1877年にジョエル・アサフ・アレンが発表した法則です。キツネ類などでよく見られ、砂漠地帯に生息するフェネックは耳が非常に大きく、ホッキョクギツネは耳が丸くて小さいことからもよくわかります。
なぜ?
こちらもベルクマンの法則と同様に体温維持に関係があります。
耳などの尖った部分は体表面積を大きくし、体内の熱の放熱量が増加します。そのため、寒い地域に生息する動物は放熱量を減らすために突出部が少なく、温かい地域に生息する動物は放熱量を増やすために突出部が大きくなると考えられます。
どんな動物に見られる?
ウサギの耳やサルの尻尾もアレンの法則の代表的な例として有名です。
犬や猫ではまだはっきりとわかっていないことが多く、また、人工的な手が加わっていることから一概には言えませんが、先ほどのベルクマンの法則のところでも紹介したチワワやシンガプーラはピンッと立った大きな耳が特徴であることから、アレンの法則が成り立つ場合もあるかもしれません。
なお、ベルクマンの法則とアレンの法則はほぼ同じ理由によるため、両方の特徴が同時に出現する動物も珍しくありません。
グロージャーの法則
「哺乳類・鳥類については、寒く乾燥した地域に住んでいる生き物の方が、温かく湿度の高い地域に住んでいる生き物よりもメラニン色素が少なく明るい色をしている傾向がある」
寒く乾燥した地域に住む動物は色が明るく、赤道に近い高湿度の熱帯地域では暗い色が多いという法則で、ドイツの動物学者グロージャーが、居住している地域と鳥類における羽色の関係を指摘したのが最初です。
なぜ?
これは日光を浴びる量が関係していると考えられています。暖かい地域では年間を通して日光をたくさん浴びますが、浴びすぎると体に悪影響を及ぼします。それを防ぐために、メラニンなどの色素が作られると、体表の色が濃くなるということです。
ヒトや鳥によく見られる
グロージャーの法則をもっとも身近に感じられるのが、ヒトの皮膚の色でしょう。暖かい地域出身の人は皮膚の色が濃く、寒い地域出身の人の皮膚の色は薄いです。
また、鳥にもよく見られ、日本に生息しているシジュウカラは、南に住むものほど黒い羽根の色をしており、北の方に住むシジュウカラと同種とは思えないほどの色の違いがあります。
フォスターの法則
「島嶼(とうしょ)部においては、大型動物は小さくなり、小型動物は大きくなる」
J・ブリストル・フォスターにより提唱された法則で、「島嶼(とうしょ)化」とも呼ばれます。
なぜ?
生物の流入が起こらない島の環境では、大型動物の場合、少ないエサで体を維持できるよう小さな個体が生き残ったと考えられます。一方で、小型動物の場合は、捕食者が少ないことから逃げるための小さな体は必要なく、一部の動物は巨大化したと考えられます。
どんな動物で見られる?
フォスターの法則の代表例としてよく挙げられるのが、コモド島に生息するコモドオオトカゲです。トカゲと聞くと手のひらサイズの小さな動物を思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、コモドオオトカゲは全長200〜300cm、体重約70kgもあります。
また、ロシアのウランゲル島という島で発見されたマンモスは、他の地域のマンモスが6トンほどなのに対し、2トン程度しかなかったと考えられています。
まとめ
今回は、動物に関係する生物学的な法則について解説しました。もちろん、例外はたくさんありますので、すべての動物に当てはまるわけではありません。
しかし、このような法則を知っておくことで、また違った視点で犬や猫、他のペットや動物を見ることができるかもしれません。ぜひ、一度考えてみてはいかがでしょうか?