お腹のキュルキュルという音は「腹鳴(ふくめい)」と言います。人間でもお腹を壊したときなどに鳴ることがありますよね。
しかし、腹鳴があるからと言って必ずしも体調不良というわけではありません。それが正常か、そうでないかを見分けることは非常に重要です。
今回は犬の腹鳴について解説します。
この記事の目次
体調不良による腹鳴
まず紹介するのは、体に何らかの異常があるときの腹鳴です。
腸閉塞、胃捻転、異物など、すぐに対処しなければならないものが含まれています。腹鳴の他に何か徴候がないかを、しっかりと確認しなければなりません。愛犬の様子をよく観察しましょう。
膵炎
【症状】
連続した嘔吐、下痢、元気消失、食欲不振、腹痛、腹鳴など。
【原因】
高脂血症、肥満、脂肪の多い食事、内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症、糖尿病、甲状腺機能低下症)などが危険因子となる。
【備考】
急性膵炎は、胆嚢炎や胆管炎を引き起こすことも多く、黄疸が見られることもある。
腸閉塞
【症状】
元気消失、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛、口からの糞臭など。
【原因】
異物の誤飲(プラスチック片、布、ひも、植物の種、おもちゃなど)、腫瘍、ポリープ、腸重積、腸ヘルニア、重度の便秘など。
【備考】
原因として最も多いのは異物誤飲であるため、いたずらされそうなものには気をつける。
胃腸炎
【症状】
嘔吐、下痢、元気消失、食欲不振、腹痛、腹鳴など。
【原因】
細菌、ウイルス、寄生虫などの感染、食物アレルギー、中毒、薬剤など。
【備考】
正確な原因の解明には内視鏡検査が必要となることがあるが、動物の体に大きな負担となるため、まずは治療をして反応を見る診断的治療が行われることが多い。
消化管内寄生虫(犬回虫、瓜実条虫など)
【症状】
食欲低下、下痢、血便、腹鳴など。
【原因】
犬回虫、犬鉤虫、犬鞭虫、瓜実条虫などの寄生虫の感染による。
【備考】
多頭飼育の場合には集団感染に注意しなければならない。感染は主に感染犬の排泄物からの経口感染やノミを介しての感染となるため、予防に努める。
胃拡張・胃捻転症候群
【症状】
急激なショック症状(虚脱、循環不全など)、えずき、腹鳴、腹部膨満、流涎など。
【原因】
多量の飲水や食事摂取、食事直後の運動などが原因となる。
【備考】
緊急疾患であるため、迅速な処置が求められる。食後の発症が多いため注意。大食いや早食いの癖がある場合には、食事を数回に分けるなどの工夫が求められる。
消化管内異物
【症状】
嘔吐、吐血、元気消失、食欲不振、腹痛など。
【原因】
おもちゃ、大きい種、とうもろこしの芯、ビニール、プラスチック片、布などを誤飲することによる。
【備考】
小さいものであれば便として排泄されることもあるが、ある程度の大きさのものの場合は内視鏡や外科手術によって異物を摘出する必要がある。
生理的範囲内での腹鳴
病気ではないものの、生活習慣や環境によって腹鳴が現れることがあります。
また、これらの原因の他にも、ただの消化音も腹鳴に含まれます。何か思い当たることがないか確認し、もし原因があるなら取り除いてあげましょう。
空腹
お腹が空いている時にお腹が鳴るのは当たり前のことですよね。前回の食事の時間を確認し、もし時間が経っているようなら軽く食事を用意してあげましょう。あるいは1日2回の食事回数であるなら、1日3回に増やしてあげるのもいいでしょう。
空腹による腹鳴であれば、愛犬の元気や食欲は普段通りのはずです。
フードが合っていないことによる消化不良
消化不良が起こっていても腹鳴が現れることがあります。
特に、ライフステージ(シニア期への転換、避妊/去勢後など)の変化ではフードを切り替えることが多いでしょう。フードを切り替える場合は、いきなりではなく、今まで食べていたものに新しいフードを混ぜながら徐々に行いましょう。
また、フード切り替えにあたって、食物アレルギーにも注意しなければなりません。腹鳴の他に嘔吐や下痢といった消化器症状や、痒みなどの皮膚症状が発現しないかを十分に確認しましょう。
ストレス
引っ越しなどの環境の変化によって、愛犬が生活にストレスを感じると腹鳴が現れることがあります。これは自律神経が乱れるためで、散歩や一緒に遊ぶなどしてストレスを解消してあげましょう。
また、日頃から愛犬にストレスを与えないような環境を整えることも重要です。
早食いや大食い
食事と一緒に空気を大量に飲み込んでしまうことで、腹鳴が起こります。また、大量の食事による食物の異常発酵によって、体内でガスが産生されることでも腹鳴が起こります。おならやゲップが多いことで判断できることもあります。
空腹時間が長いことで早食いになっている可能性もあるので、食事回数を見直すのもいいかもしれません。
運動不足
運動不足は食欲低下や、胃腸機能の低下を引き起こします。腸が正常な働きをしない時には、お腹が鳴ることがあります。
ストレス解消も含めて、定期的な散歩によってしっかりと運動の習慣をつけましょう。
まとめ
腹鳴を始めとする消化器系の異常は、犬において最も一般的な動物病院受診理由です。また、愛犬と一緒に生活をしていて気づきやすい徴候でもあります。
しかし、それが正常かそうでないかを判断するのは困難なこともあります。放っておくと良くない疾患が隠れていることも少なくありません。
気になることがあれば、それがどんなに小さなことでも動物病院に相談しましょう。