【獣医師監修】猫の貧血で考えられる疾患とは?

2025.04.26
【獣医師監修】猫の貧血で考えられる疾患とは?

あなたは貧血と聞いて何を思い浮かべますか?人間の場合はふらつきや立ちくらみなどが現れることが多いと思いますが、猫ではどうでしょう。

猫が貧血を起こすような疾患は意外に多く、症状としてはっきりとした変化が現れないことも珍しくありません。

今回は、猫の貧血で考えられる疾患について解説します。

この記事の目次

貧血とは

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貧血とは、酸素を運ぶはたらきのある赤血球が何らかの原因で減少している状態を指します。その結果、元気や食欲の低下、歯茎などの可視粘膜が白くなるといった徴候が現れます。

貧血があるかどうかは血液検査によって確認しますが、原因の特定までは困難なこともあります。その際には血液生化学検査や、場合によっては全身麻酔下での骨髄検査を行うこともあります。

赤血球産生の低下

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赤血球には寿命があり、新しい赤血球と古い赤血球は日常的に交換されます。赤血球は骨髄で作られており、骨髄に異常がある場合、新しい赤血球が供給されなくなるため、赤血球の数は減少します。

また、赤血球が減少してきた際に、腎臓からエリスロポエチンという物質が分泌され、骨髄に赤血球を作るように促します。さらに、赤血球を作るためには鉄が必要なため、鉄不足でも赤血球の産生は減少することになります。

腎不全

【症状】
多飲多尿、尿が薄くなる、食欲不振、体重減少など。慢性腎不全では進行するにつれ嘔吐、下痢、脱水、便秘、貧血、発作などの神経症状が現れる。急性腎不全ではショック状態となり命の危険がある。
【原因】
急性腎障害は尿路結石による閉塞や、腎毒性物質(ユリ、除草剤など)の摂取などによって引き起こされる。慢性腎不全は腎盂腎炎や糸球体腎炎などの腎疾患、高カルシウム血症、腎虚血、腫瘍などが原因となり、慢性的に腎実質の病変が進行して発症する。
【備考】
7歳齢以上のシニア期では、半年に一回の健康診断による病態の早期発見が重要となる。

猫白血病ウイルス感染症

【症状】
発熱、元気消失、食欲不振、体重減少、貧血、口内炎、下痢、嘔吐など。白血病やリンパ腫の発生に深く関与しており、それによって神経症状が見られることもある。
【原因】
猫白血病ウイルス(FeLV)の感染。ウイルスは感染猫の唾液や母乳に含まれ、ケンカの際の咬傷や母猫から伝播する。
【備考】
効果的な治療法はなく、一度感染すると生涯ウイルスと付き合い続けなくてはならなくなる。ワクチンがあるので、屋外に行く子には接種を検討する。

骨髄異形成症候群

【症状】
発熱、免疫不全、貧血、出血傾向など。
【原因】
現在報告されている症例のほとんどで猫白血病ウイルス(FeLV)感染が認められていることから、その病態発生に深く関与していると考えられる。
【備考】
治療期間中に急性骨髄性白血病への移行が認められる。

鉄欠乏性貧血

【症状】
貧血。
【原因】
組織壊死を伴う腫瘍、外傷、寄生虫(鉤虫、ノミなど)、血液凝固不全、消化管出血などによって鉄が不足する。
【備考】
成長期や妊娠期における鉄要求量の増加も要因となり得る。

リンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病

【症状】
元気消失、食欲不振、貧血、削痩、発熱など。原因によっては他にも免疫不全、出血傾向、消化器症状などが見られる。
【原因】
リンパ腫、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病などの骨髄において血球産生を減少させる腫瘍性疾患。
【備考】
血液検査や画像検査など、総合的な検査によって診断を行う。一般的に腫瘍疾患は中~高齢猫で見られる。

赤血球破壊の亢進

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既にある赤血球が次々と破壊されることによって、貧血が起こるパターンです。この中には診断に少し時間を要するものもあり、同時に、早急に手を打たないと命に関わるものもあります。

免疫介在性溶血性貧血

【症状】
食欲不振、沈うつ、可視粘膜の蒼白、運動不耐性。発熱や嘔吐も認められることがある。
【原因】
特発性と続発性に分類されるが、猫では特発性は少ない。猫白血病ウイルス(FeLV)感染に伴う続発性のものが多いという報告がある。
【備考】
治療は主に免疫抑制療法となるが、薬剤に対して効果が十分でない場合などには脾臓摘出が選択されることもある。

タマネギ中毒、アセトアミノフェン中毒

【症状】
赤血球の破壊による溶血性貧血。
【原因】
毒物の摂取。
【備考】
これらを摂取しても必ずしも症状が現れるわけではなく、無症状で経過することもある。しかし、当然重症となることもあるので、毒物を喫食した際には迷わず動物病院を受診してほしい。

ピルビン酸キナーゼ欠損症

【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など。
【原因】
常染色体劣性遺伝で、アビシニアンに認められる。
【備考】
年齢とともに骨髄線維症および骨硬化症が進行し、造血能は低下していく。

過剰な出血

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多量の出血が起こった際にも貧血は見られます。

事故などによる出血はもちろん、体内にある腫瘍からの出血も考えなくてはなりません。その際には超音波検査などで、体内に異常な液体の貯留がないかを確認していきます。

基本的に大量出血は命に関わる状態であることがほとんどです。グッタリしているなどの異常が見られた際には緊急外来を受診しましょう。

まとめ

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貧血の徴候に気付くことは非常に難しいことです。そのため、定期的な健康診断をおすすめします。

また、元気や食欲がない、粘膜が白い気がするなどがあれば、迷わずに動物病院を受診してください。

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